インタビュー

Lillies and Remains 『Romanticism』

【Revelation In Black 黒い波の誘惑】Part.1

Revelation In Black
[ 緊急ワイド ]黒い波の誘惑

新しい波の洗礼を受けた音楽のなかでも、とりわけ妖しい翳りで人を惹き付けるもの。美しい黒に覆われたサウンドスケープを透かしてみると、そこに見い出せるのは……

 


 

Lillies and Remains

誰にも作れない80sサウンドをひたすらにめざしながら、新体制で再出発した2人。
その周りには、同じ視点を持つさまざまな世代の才能が集まってきていて……

 

 今年6月にベースのNARA MINORUが脱退し、2人体制となったLillies and Remainsが、フル・アルバムとしては実に3年半ぶりとなる新作『Romanticism』を完成させた。本作のプロデュースを務めたのは、元SOFT BALLET、現minus(-)睡蓮藤井麻輝。現在KENT(ヴォーカル/ギター)はL'Arc~en~Cielyukihiroのソロ・プロジェクト、acid androidのギタリストも務めているが、80年代から日本のニューウェイヴを牽引してきた世代と、2000年代後半に登場した世代とが徐々に融合しつつある。

Lillies and Remains Romanticism Fifty One(2014)

 「今回のプロデュースの話は、藤井さんのほうから連絡をいただいたんです。音楽活動をお休みされていて、復帰のタイミングで何をしようかっていう話のなかで、『音楽と人』の金光編集長経由で僕らに興味を持ってくれたみたいで。去年〈BODY〉っていうイヴェント(PLASTICZOOMSTHE NOVEMBERSとの合同企画)を始めたばっかりだったので、そのタイミングで“BODY TO BODY”(SOFT BALLETの89年のデビュー曲)の人から連絡が来て(笑)、しかもその日に僕“BODY”って曲を作ってメンバーに聴かせてたので、〈すげえな、このタイミング〉って思いました」(KENT)。

 Lillies and Remainsというバンドは、これまでもメンバーの増減を繰り返してきたのだが、それはPLASTICZOOMSにおけるSho Asakawaと同様、まずKENTが楽曲のデモを一人で作り込み、それをメンバーが再現するスタイルだったからこそ成立するものであった。しかし、藤井の参加によって、KENTは今回初めて曲を第三者に委ねている。

 「自意識過剰だとは思うんですけど、他人は自分にプラスになることは言ってくれへんから、自分で答えを出さなきゃいけないって思ってたんです。でも、藤井さんとは共通言語が多かったし、曲のなかで見てるところも同じだってわかったので、無理矢理自分で答えを出さなくても、〈何かあれば音を入れてもらえますか?〉って、投げることができて。そうすると、自分では気がつかなかったような答えをパッと返してくれて、しかもそのスピードがものすごく速いんですよ。〈本物のアーティストだな〉って感じがしました」(KENT)。

 「僕から見ると、2人(KENTと藤井)は同じ匂いがするっていうか、似てるんですよね。曲に対する姿勢とか、作り込み方とか、そういうところは通じるものがあると思います」(KAZUYA、ギター)。

 藤井のエンジニアリングの手腕にも圧倒されたというが、なかでも理想的なシンセの音色を作るにあたっては、そのサポートがとても大きな助けになったようだ。

 「僕、ティコがいまいちばん好きで、一音だけで溶けるような、広がりのある音を作るのが上手いなって思うんで、ああいう音作りを藤井さんと一緒にやりました。もともとアンビエントが好きで、ブライアン・イーノはゴッドだし、学生のときはネイサン・フェイク、最近だとビビオも好きで、そういう影響は出てると思います」(KENT)。

 シンセ・ベースの曲を作りたいと思って、DAFをイメージしたという“BODY”こそ〈Lillies流EBM〉と言えるかもしれないが、全体的にはメロディアスで優美な楽曲が多い。80年代のニューウェイヴをベースに、一曲一曲綿密に作り込まれているのも本作の特徴である。

 「“Go Back”は誰も作れない80s、僕が思う最高に綺麗に積み上げられた80sを作ろうと思ったんです。でも、最後のほうはシンセ・ベースで4つ打ちで、めっちゃ歪んだギターも出てきたり。あのあたりはある意味ふざけて、振り切って作りました。ビリー・アイドルみたいなちょっとダサい感じを、下世話にならない程度にやってみた感じです」(KENT)。

 アルバム・タイトルに特別な意味はないそうだが、〈好きなことを好きにやった〉という、本作の肩の力が抜けたムードを表しているようにも思う。同じ目線を共有する、幅広い世代のミュージシャンとの交流を経て、自身の立脚点を再確認した幸福な現在地。『Romanticism』とは、そんな作品とも言えるのではないだろうか。

【関連動画】Lillies and Remainsの2014年のEP『LOST』収録曲“This City”

 

 

▼文中に登場したアーティストの作品

左から、ティコの2014年作『Awake』(Ghostly)、DAFの81年作『Alles Ist gut』(Virgin)、ビリー・アイドルの83年作『Rebel Yell』(Chrysalis)、acid androidの2010年のミニ・アルバム『code』(DANGER CRUE)、KENTが楽曲を手掛けたVANIRUの2013年のシングル“Cosmic Night”(IBARA)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ

 

 

▼Lillies and Remainsの近作を紹介

左から、2011年作『TRANSPERSONAL』、2012年のカヴァー集『Re / Composition』、世界的なバンドPurpleとの3組による2012年のスプリット盤『UNDERRATED』、2014年のEP『LOST』(すべてFifty One)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ

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