インタビュー

minus(-) 『D』

【Revelation In Black 黒い波の誘惑】Part.2

Revelation In Black
[ 緊急ワイド ]黒い波の誘惑

新しい波の洗礼を受けた音楽のなかでも、とりわけ妖しい翳りで人を惹き付けるもの。美しい黒に覆われたサウンドスケープを透かしてみると、そこに見い出せるのは……

 


 

minus(-)

抑制が生む艶めかしさと退廃美――11年を経ての再開によってもたらされた、洗練のエレクトロニック・ミュージック

 

SOFT BALLET藤井麻輝森岡賢による新ユニットのminus(-)が、初のミニ・アルバム『D』を発表した。5月30日の初ライヴ以来、未完の状態ながらも披露し続け、磨き上げて来た楽曲群を中心とする全6曲。70~80年代のニューウェイヴを彷彿とさせる愁いを帯びたサウンドを基調に、ビートが脈打つダンス・ミュージックあり、ピアノを前面に押し出したクラシカルで気高いナンバーあり。音楽という形でしか表現し得ない瑞々しい情感を、洗練されたエレクトロニカの手法を用いて紡いだ美しい曲の数々に、ただただ溜め息が出る。

minus(-) D avex trax(2014)

 SOFT BALLETが〈閉経〉を意味するアルバム『MENOPAUSE』(2003年)を最後に活動を休止して以来、2人が音楽を共に作るのは実に11年ぶり。2011年の東日本大震災以降、音楽活動から距離を置いていた藤井が、「ふたたび音楽を」と思い立ち、アプローチした相手は森岡だった。事前に明文化されたコンセプトはなく、藤井によれば、「曲が〈こうしてください〉という方向に自動的に進めていくだけ」だったという。

 「前のバンドでは、森岡が完成させたものを僕が削るという減算型だったんですけど、今回は、ラフスケッチの段階でデータをもらって発展させる、という加算型でできたから、その点は新鮮でした」(藤井)

 「こういう作り方は初めてかもしれないですね。僕はSOFT BALLET時代にあった藤井に対する偏見が取れたかな? すごく大人な、グローバルな視点で見る人なんだなと見直した……というのも失礼なんですけど(笑)」(森岡)。

 リズムや明確なメロディーもなく、ただそこで蠢く音の連なりが果てしないイメージを喚起する冒頭の“No_9”や、ベートーヴェンの〈月光〉がブレイクビーツと融合したかのようなハイブリッド・ナンバー“No_2”など、芳醇なイメージ喚起力を備えたインストゥルメンタル。その一方で、ゲスト・ヴォーカルにLillies and RemainsKENTを招いた“RZM”は抑制的な低音が妖艶に響き、KEN LLOYDFAKE?OBLIVION DUST)が歌う“No_4”は淡々とループするメロディーが昂揚をもたらす。女性ヴォーカルのイメージがもともとあったという“B612(Ver.0)”は、クガツハズカムきのこ帝国佐藤のソロ・プロジェクト)が低音域のウィスパー・ヴォイスの才を開花させた退廃的な名曲だ。……と、ここまで書き綴ったものの、音楽の聴き方をこうして言葉で方向付けることを、彼らはもっとも忌避している。

 「まったく素の状態で聴いてもらって、その時に初めて沸き起こるであろう何かしらのヴィジョンを大事にしたいし、言葉で視野を狭めたくないんですよね。年齢的にもどれが遺作になるかわからないし、後悔のないものを作りたい、というのがいまの僕のいちばんの音楽的情熱かもしれません。心残りになると化けて出ちゃいますから。それはちょっと嫌なので」(藤井)。

 「僕は、聴き手のことばっかり考えてしまって空回りしちゃうタイプ。だから逆に、何も考えないほうが良いんでしょうね。今回は本当に、子どもが真っ白なノートに筆書きするような状態で出すことができました。意図的なものも、故意的なものもないですし。藤井麻輝という器の中で泳がせてもらった、という感じですね」(森岡)。

 

▼関連作品

左から、SOFT BALLETのベスト盤『SOFT BALLET 1989-1991 the BEST』(ソニー)、FAKE?の2014年作『The Lost Generation』(COMA RED)、きのこ帝国の2014年作『フェイクワールドワンダーランド』(DAIZAWA)

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