INTERVIEW

スミス/モリッシーをTHE NOVEMBERS×Lillies and Remains×Luby Sparksが語る

映画「イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語」公開記念・座談会

(左から)Natsuki Kato、小林祐介、KENT
 

スミス結成前夜のモリッシーの姿を自由な解釈で描く映画「イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語」が、5月31日(金)に日本公開を迎える。5年の活動期間に残した、いまだ異彩を煌々と放つ曲の数は僅か70余り。おおよそ〈インディー〉と呼ばれるロックのプロトタイプを確立した彼らのDNAは、言うまでもなく現在に至るまで無数のミュージシャンたちが受け継いでいるわけだが、映画を一足早く観たTHE NOVEMBERの小林祐介、Lillies and RemainsのKENT、Luby SparksのNatsuki Katoも然り。それぞれに異なるアプローチで、スミスを含むポスト・パンク時代のイギリスの音楽の影響を強く受けたサウンドを探求している、ジャパニーズ・バンドのフロントマンたちだ。ファンの視点とミュージシャンの視点を併せ持つそんな3人が、映画の観どころ、そしてスミスの魅力を論じてくれた。

 

映画「イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語」トレイラー

 

全部がBメロみたいな不思議のメロディー

――みなさんはどんなふうにスミスの音楽と出会ったんですか?

KENT(Lillies and Remains)「僕が知ったのは、ちょうどギター・ロックがリヴァイヴァルしていた、高校3年生か大学1~2年生の頃ですね。2000年代初めにストロークスなんかが現れて、彼らのルーツにある音楽を聴こうとして、確かサード・アルバム『The Queen Is Dead』(86年)を聴いたのが最初です。モリッシーにはそれほど興味を抱かなかったんですが、とにかくジョニー・マーのギターのフレーズが良くて!」

小林祐介(THE NOVEMBERS)「僕も2003年か2004年、高校3年生でした。バンドをやっている同級生がいて、自分のライヴ音源のMDを送ってくれたんですけど、入場SEがスミスのシングル曲“This Charming Man”(83年)だったんです。そのライヴの曲がどうこうじゃなく、入場SEがすごく頭に残って(笑)。〈あれは何?〉と訊いたら、〈スミスっていうイギリスのカッコいいバンドの曲だよ〉と。それが始まりで、アルバムとして最初に聴いたのは同じく『The Queen Is Dead』でしたね」

“This Charming Man”
 

Natsuki Kato(Luby Sparks)「僕も高校3年生くらいのときで、当時はアークティック・モンキーズとか現行のインディー・ロックをたくさん聴いていたんですが、その中に超ポスト・スミスなハートブレイクスっていうイギリスのバンドがいたんです。彼らが大好きで、元ネタとして80年代にこういうバンドがいたんだと知りました。で、タワーレコードに友達とふたりで行った時に、〈80年代のバンドって誰を聴けばいいんだろう?〉と訊かれて、知らないくせに〈スミスでしょ〉と答えて、セカンドの『Meet Is Murder』(85年)を買わせて(笑)。友達に勧めたからには知っておかないとまずいと思って、僕も急いで聴きました」

――すぐにハマりましたか?

Natsuki「当初は正直言ってハマらなかった。“Frankly, Mr. Shankly”(『The Queen Is Dead』に収録)とか、ちょっと陽気なノリの曲が入っているのが、〈ダサ!〉って思ったんですよね」

小林「ああ、カントリーっぽいやつね(笑)」

Natsuki「そう。それで〈これはちょっと無理だな〉と思って。当時はハートブレイクスを基準にしていて、〈ハートブレイクスっぽいからカッコいいな〉と思ったり、カッティングがいっぱい入っていたりするところがすごく好きだったんですけど、メロディーに歌詞をたくさん詰め込んでいるせいで、キャッチーさがすぐにはわからない。じわじわ来るんですよ。でもその後大学生になって、〈さすがにスミスはベースとして持っておかないと〉と思って、あらためてちゃんと聴いて、やっと良さがわかりました」

KENT「〈スミスは聴いていないと恥ずかしい〉みたいなところは、あったよね。『The Queen Is Dead』を手に取ったとき、僕もそういう気持ちを抱いていたのかもしれない」

小林「僕もKENTくんと同じで、ジョニーのギターのフレーズがすごくいいなって思ったんですけど加えて、最初からモリッシーの歌声もすごく好きだったんですよ。ああやって高らかに朗々と歌い上げるヴォーカリストでは、当時ほかに好きな人がいなかった。繊細だったりアンニュイなヴォーカリストばかりで。でもモリッシーは少し演歌が入っているくらい、こぶしが効いていて、そこがまず好きになったきっかけですね。

でも、あとになってなんで好きなのか考えたときに、僕の頭のなかに井上陽水さんのことが浮かんだんです(笑)。楽曲の面でも、井上陽水さんとモリッシーの共通項はめちゃくちゃ多いと思っていて。あと、L'Arc~en~Cielのkenさんがスミスをリスペクトしていることも知っていたから、ギターにL'Arc~en~Cielを感じたり、朗々と歌い上げるところにhydeさんを感じたり(笑)、別のところから入ってきた遺伝子が実はスミスとつながっていたという土壌があった。だから最初から良さがわかったんです」

KENT「音楽を聴きはじめると、どこに行ってもスミスに行き当たるんですよね。でも僕が聴き始めた頃、〈なんでスミスを知っている日本人がこんなにいるんだろう?〉って正直言って思ったんです。日本人にはあの複雑な歌詞にすぐには反応できないだろうし、メロディーラインにしても、いい感じの、おいしいサビにすんなり行き着かないし」

小林「スミスのメロディーって、超不思議だよね。全部がBメロみたいなんだよ」

KENT「そうそう! ずーっとBメロ」

Natsuki「モリッシーは歌詞から書くんですよね」

KENT「しかも、ジョニーとモリッシーが完全に別々に曲作りと歌詞を担当しているから、ああなるのかな。僕はどうしても曲作りをするほうの観点で聴いてしまうんですけど、ジョニーのギターを受けたら、もっとほかのメロディーがあったのかもしれないって思ったりします(笑)」

Natsuki「うん、もっとめちゃくちゃキャッチーなサビがある曲になったかもしれない」

KENT「そうそう、いつもそう思いながら聴いちゃう(笑)」

小林「僕らは常にサビという概念で聴きどころ捉えちゃうけど、スミスの曲って、さっき言ったみたいにBメロで始まるんだよね。予想だにしない歌いはじめだから、そこでまず引っかかって、ずっと解決しないままに曲が進む。そしてちょっと声量やピッチが上がったりバンドの圧が増したりして、サビっぽく聴こえているんだけど、メロディー的には何も起きていない――みたいな(笑)」

KENT「譜割りもすごくヘンだよね」

 

スミスに受けた影響とお気に入りの1曲

――そんなスミスに、ミュージシャンとして影響を受けているという実感はありますか?

KENT「僕はやっぱりジョニーみたいな感じにはギターを弾けない。いいなと思ってたまに真似はしていますけど、そこまで消化し切れてないかも」

Natsuki「僕はファースト・アルバムの『Luby Sparks』(2018年)を作っていたときに、なんとなくスミスっぽい曲も作りたいと思っていたんです。アルペジオがきれいに入っていたり、コードは明るく聴こえたりするのに切なくもある、80年代のイギリスっぽいギター・ポップとか。“Frankly, Mr. Shankly”にしても、明るく始まるけど、次のコードでしゅんとするじゃないですか。ああいう感じをめざした曲がありましたね」

小林「僕は無意識なところと自覚しているところがそれぞれあって、オマージュとして曲を作ったこともあります。“Reunion With Marr”(2012年作『GIFT』に収録)という曲で、いかにもジョニーが弾きそうなフレーズを捏造して(笑)。ほかにもサウンドの好みとか、モリッシーの佇まいとか、なんだかんだ影響を受けていますね。モリッシーのファッションも実は好きで、彼が愛読しているからとオスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』(1890年)を手に取ったりしたこともあります」

THE NOVEMBERS “Reunion With Marr”
 

――全作品の中で、お気に入りのアルバムと曲をそれぞれ挙げていただけますか?

小林「最初にアルバムとして聴いたという思い入れを含めて、『The Queen Is Dead』かな」

KENT「聴いている回数で言うと、僕もそうですね」

Natsuki「僕も。『Meat Is Murder』と『The Queen Is Dead』を同時に聴いてみて、こっちのほうが聴きやすいなって(笑)」

小林「曲なら“Girlfriend In A Coma”(87年作 『Strangeways, Here We Come』に収録)ですね。歌い出しはすごくいいメロディーで、〈これは完璧だ!〉と思ったら、途中で悲劇が起きたみたいなコード進行になって、ストリングスがジャジャン!って入ってビックリするんですよ。それからまた最初のテーマに戻って〈It’s serious〉と歌って終わる。〈確かにシリアスだ〉って(笑)」

Natsuki「僕は“Heaven Knows I’m Miserable Now”(84年)。最高ですね。MVも結構観ていました。最初はどのアルバムに収録されているのか分からなくて、数年後にやっとコンピレーション盤の『Hatful Of Hollow』(84年)に入っていることに気付きました。スミスにしてもニュー・オーダーにしても、この時代のバンドはシングルをたくさん出しているから、アルバムに入っていない曲が多いし、シングル1曲1曲がめちゃくちゃ強い」

“Heaven Knows I’m Miserable Now”
 

KENT「僕のお気に入りは、カヴァーをしたこともある“Some Girls Are Bigger Than Others”(『The Queen Is Dead』に収録)。ギターのリフで言うとスミスの曲のなかでいちばん好きで、いちばんきれいだと思うし、やっぱりジョニーが好きなので(笑)」

Natsuki「KENTさんの歌い方は、めっちゃモリッシーですけど(笑)」

KENT「いやいや(笑)。メロディーや歌詞の面では、“There Is A Light That Never Goes Out” (『The Queen Is Dead』に収録)がいちばん心に残っていますね。サビで、ダブルデッカー・バスと10トン・トラックに挽かれちゃうんですから。そういうのがスミスっぽくて、僕は好き。みんなもああいうところが好きなんじゃないかな」

※該当箇所の歌詞は〈And If A Double-decker Bus Crashes Into Us/To Die By Your Side Is Such A Heavenly Way To Die//And If A Ten-tonne Truck Kills The Both Of Us/To Die By Your Side/Well, The Pleasure, The Privilege Is Mine〉
 

Natsuki「映画『(500)日のサマー』(2009年)に使われていた曲ですよね! すごく印象的でした」

“There Is A Light That Never Goes Out”

 

昨日までの自分には戻れないという焦燥感や絶望感を抱きながら言葉を綴る

――次に映画「イングランド・イズ・マイン モリッシーはじまりの物語」の話をしたいんですが、まずは率直な感想を聞かせてください。

Natsuki「僕は、モリッシーがどういう人なのかよく知らなくて、限られたライヴ映像で、花を振り回して踊っている姿しか観たことがなかった。で、映画が始まって一瞬、〈これがモリッシーなの?〉って思ったんですけど、挫折したりチャンスを掴んだりしてだんだん話が進んでいったあとの、ヘッドフォンをしてクラブに行くシーン以降はモリッシーにしか見えなくなった。俳優も巧いんでしょうね。こういう人だったからこういう歌詞が生まれ、ああいうパフォーマンスをするようになったんだという、バックグラウンドがわかりました」

KENT「僕の場合は、イメージしていたモリッシー、そのままでしたね。面倒くさい感じとか、ひねくれている感じとか(笑)。すごくカッコいいわけでもないし、しかも毒舌で。なのにいろんな人たちがあんなに彼に構っていたってことは、何か理由があるはず。つまり、結局モリッシーはみんなに愛されていたってことなんでしょうね」

小林「映画のなかの彼は感情の起伏が激しくて、そのレンジが広いんだけど、現実にはすごく些細なことしか起きていないんですよね。〈それがすべてなんだな〉って観終わったときに思いました。仲良かった子が遠くに行っちゃうとか、傍目にはたいしたことは起きていなくても、この世の半分が消え失せたかのように落ち込んだりする。そういう感受性の人だから、なんでもドラマティックに解釈して、昨日までの自分には戻れないという焦燥感や絶望感を抱きながら常に言葉を綴っている。

ただ歌詞を書いていると言うより、〈世界を滅ぼすくらいのものを作っているんだぞ〉という気持ちが見て取れるんですよね(笑)。で、そういうすごく狭い日常で起きていたことが、のちにモリッシーが世界を騒がせることの着火点だったんだと、その後の成功を知っている人間だからこそグっとくる部分があった。好きなものだけが詰まった箱庭みたいな部屋とか、クソみたいな職場とか、そこを見せたかったんだなって。モリッシーとスミスに関する知識が一切ない人が観たら、どう感じるのかわからないけど」

KENT「でも、バンドを組むときのドキドキ感みたいなところにも、映画として観応えがあると思うな。青春映画という雰囲気でもないんだけど(笑)」

――ミュージシャンとして感情移入する部分が大いにあったということですね。

KENT「はい。僕は特に、初めてのライヴが終わったときにモリッシーが高揚感に浸っているシーンがすごく好きです。あれ、めっちゃわかる。テンションが上がっていて、次の日もそのことしか考えられなくて、布石を打った実感がすごくあったんだろうな。すごく人間味があるシーンなんですよ。お姉さんに言ったキツい言葉も、めっちゃ可愛いし(笑)」

小林「皮肉の言い方がすごいよね。〈スターになれない人間にはわからないと思うけどさ〉みたいな。急に別の形で人間を見下しはじめているから」

KENT「そうそう、〈俺はこれで生きるぞ! 普段の生活は全然うまくいってないかもしれないけど、俺にはこれがあるんだ〉みたいな手応えを感じていて。僕自身はスミスのような成功は収めていないけど、モリッシーが音楽業界の関係者に名刺をもらった瞬間の気持ちとかも理解できた。〈ついに僕の才能に気付いたか!〉みたいな感じで、周りの景色が変わって見えるんですよ(笑)。あの気持ちをモリッシーもめっちゃ感じていたんだろうな」

Lillies and Remainsの2014年作『ROMANTICISM』収録曲“BODY”
 

Natsuki「うん。音楽をやっている人、やりたいと思っている人は、絶対共感できるところがあると思う。僕は大学を卒業したばかりで、就職をせずにバンド活動をしていて、就職か音楽か選ぶ必要があるのかってことを日々考えさせられています。映画のモリッシーと自分がいまいる場所とがすごく近いんです。

そして僕もバンドを始めるまで、自分はきっと何かができるんじゃないかと思い込んでいて、でもずっと何もできずにいた。音楽がこんなに好きなのに、ただ好きなだけでいいのかなって思っていた時期がありました。バンドを始めるときの独特のプロセスも、映画に描かれていますよね。メンバーを探していて、〈こいつなら行けそうだ〉と思った瞬間の嬉しさだったり。で、自分の部屋や相手の部屋で、〈ちょっとやってみようか〉って試してみて……」

KENT「あれはすごくわかる。結局何も作れなくて、だいたいハズレるんだけど(笑)。同性の家に行くっていう、あのヘンな感じが独特なんですよ。恋愛関係にあるわけじゃないから、そういう盛り上がりもなくて(笑)、部屋で男同士でひたすら好きな音楽の話をして……。若干恥ずかしいんだよね」

Natsuki「バンドのメンバーってただの友達でも同僚でもないし、微妙な距離感がありますから。あと、モリッシーが最初歌えなかったシーンもすごく共感できた。僕は歌が昔から嫌いで、自分の曲だから自分で歌ったほうが早いかなと思ってやってみたんですけど、最初ははっきり歌えなかったり、声がちっちゃくなってしまうことが多々あって。そんなふうに終始バンド音楽の魅力が詰まっていて、いつの時代も変わらないんだなって感じました」

――確かにモリッシーが思い切って声を発するまで、かなり時間がかかるんですが、小林さんとKENTさんが初めて歌ってみたときはいかがでした?

小林「僕は元々ギタリスト志望で、歌うつもりはなかったんですよ。当時のバンドではベースを弾いていて、リーダーがギタリストだったんですけど、〈僕もギターを弾きたい〉と言ったら、〈いや、ギターは1本だから、お前はヴォーカルかクビ〉って(笑)。それで仕方なくヴォーカルになった。だから最初は全然歌えなくて、慣れ親しんだ人たちの前でも難しかったから、モリッシーはさらに難しかっただろうな」

KENT「自分の声ってやっぱり、みんな嫌いだったりする。だから初めて歌うときは、すごく気持ち悪いんですよね。映画を観て、あんなモリッシーがよく歌えたなって驚きました」

Natsuki「そうですよね。ああいうふうに沸々と表舞台に憧れを抱いていた人こそ、ずっと内に持っていたものが爆発した時に威力があるんだなって思います。〈自分のなかにはこれがあったんだ!〉と気付く瞬間ですよね。自分のなかで妄想だけ広げていたことが実現したときは、本当に気持ちいい」

Luby Sparksの2018年のEP『(I'm)Lost in Sadness』収録曲“Perfect”

 

SNSのある時代ならモリッシーはボカロPになっていたかも

――この映画では、70年代末のマンチェスターそのものも大きな役割を果たしていますよね。当時の英国の社会事情を象徴しているかのように、暗くてさびれていて、いつも雨が降っていて。マンチェスターはスミス以外にも同時期に多くの偉大なバンドを輩出しているわけですが、みなさんの目にはどんなふうに映りましたか?

KENT「あそこまで多くのバンドが登場したのは、ちゃんとコミュニティーが確立されていたからなんじゃないかなって、感じました。だってモリッシーみたいなタイプの若者でも、クラブに行っているわけじゃないですか。そこで女の子に声をかけるわけでもなく、音楽を聴きに来ているだけで。コミュニティーがないと行かないだろうし、みんなが集まる場所があって、お互いに影響されたんだろうな」

Natsuki「あと、アメリカ出身のバンドとイギリス出身のバンドが同じジャンルの音楽をプレイしたとき、イギリスのバンドの音楽は、どうしても闇がある感じに仕上がる。そこが僕には大きな魅力で、気候とかああいう暗くて閉鎖的な感じも関係しているんですよね。政治に不満を抱える若者がスミスに熱狂したのも理解できるし」

小林「うん、アメリカと違って、憂いや陰りがおのずと音楽に表れる。でも町そのものもそうなんですけど、イケてる男性像・女性像みたいなものが、そもそも全然違うからなのかなってあらためて思いました。アメリカだともっとマッチョな思想がマジョリティーだし、KENTくんが言ったコミュニティーの話にもつながるけど、自分たちの流儀みたいなものが醸造されやすい場所だったんじゃないかな。〈こういうふうに振る舞うのがクールでカッコいい〉というのは、狭ければ狭いほど蔓延するし、NYみたいにいろんな人がいていいっていう町だったら、あんなことは起きないような気がする。だから当時はSNSがなくて良かったなと思います。SNSがあったら、モリッシーはボカロPとかになっていたかも(笑)」

 

映画のメッセージは〈詩を書け、家を出ろ〉

――同じマンチェスターが舞台でイアン・カーティス(ジョイ・ディヴィジョン)の半生を描いた「コントロール」(2007年)ほか、ミュージシャンの伝記映画は過去にも多数作られてきました。それらと比較して〈イングランド・イズ・マイン〉のおもしろさとは?

Natsuki「例えば『コントロール』ではジョイ・ディヴィジョンの曲がガンガンかかりますけど、〈イングランド・イズ・マイン〉にはスミスの曲が一切かからない。そこが逆に良かったのかも。僕は映画を観終わって、帰り道ですぐにスミスの曲を聴きました。それくらい聴きたくなるんです。『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)のクライマックスで、ライヴ・エイドのシーンが全部持っていく……という感覚に近くて、観終わったあとですぐ聴きたくなる作り方が、巧いと思いましたね」

小林「一般的に映画のテーマとして、〈そろそろ家を出ろよ〉というモチーフって結構あるじゃないですか。〈行動を起こせ〉とか〈お前が始めるんだ〉とか。この映画でも、挫折して落ち込んでいるモリッシーを観ていて、僕らは〈家を出てそろそろ何かちゃんとやれよ〉って悶々とする。〈このグズ!〉とかって思うんだけど(笑)、ジョニーがモリッシーの家の呼び鈴を押したことで、スミスが始まるわけで、きっかけはほんのちょっとしたことなんですよね。あのときモリッシーがドアに出なかったらバンドは始まらなかったんだから、〈今日はどういうふうに手を動かそうかな〉とか〈どこに足を運ぼうかな〉っていう行動が未来を変える。

それは結局のところ、僕らが自分自身に対して思っていることだったりするんですよ。〈僕はこのままでいいのか?〉とか〈僕は変わりたい〉とか。だからこの映画のメッセージは、〈詩を書け、家を出ろ〉みたいな感じかな(笑)。モリッシーは超落ち込んでいたけど、ずっと何かを書いていた。世界を呪うような言葉だったり、自分の表現だったり。それを持っていたというのは大きいですよね」

KENT「寺山修司の〈書を捨てよ、町へ出よう〉みたいだね(笑)」

Natsuki「確かに音楽って、華やかな姿になるまでにいろんなきっかけがすごく重要だと、バンドをやっていてすごく感じます。周りに偶然いた友達が言ってくれた一言だとか」

――ちなみにNatsukiさんは、帰り道でどの曲を聴いたんですか?

Natsuki「“Cemetry Gates”と“Bigmouth Strikes Again”を立て続けに聴きました(いずれも『The Queen Is Dead』に収録))。僕はモリッシーが友達のリンダと墓地で話しているシーンがいちばん好きなので、〈これ、“Cemetry Gatesじゃん! 実際にやってたんだ!〉と思って、すーっと入ってきて」

“Cemetry Gates”
 

小林「僕も帰りのバスの中で聴いていました。“Hand In Glove”(83年)だったかな」

KENT「映画を観ると、やっぱりスミスの音楽の聴き方が変わりますね。僕はこれまではいつもジョニー側から聴いていたけど、モリッシー側から聴けるようになった。どういう人なのかわかって、モリッシーの視点からスミスを見ることができて。例えば誰でも〈今日は家を出たくないな〉と思う日がありますよね。僕だったら3時間くらい家にいたら、それで気が済んで出かけたりするけど、モリッシーの場合は〈1か月くらい家にいようかな〉みたいな(笑)。そういうレヴェル感が違うだけの人だったんだと思うと、人間としてすごく近くなった気がします」


映画「イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語」
出演:ジャック・ロウデン/ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ/ジョディ・カマー/シモーヌ・カービー
監督・脚本:マーク・ギル(「ミスター・ヴォーマン」)
プロデューサー:ボールドウィン・リー/オライアン・ウィリアムズ(「コントロール」)
共同脚本:ウィリアム・タッカー
2017年/イギリス映画/英語/カラー/シネスコ/94分
原題:ENGLAND IS MINE
字幕翻訳:柏野文映
配給:パルコ/PG-12
5月31日(金)より東京・渋谷シネクイントほかにてロードショー!
eim-movie.jp

 

Information
タワーレコード渋谷店&Mikikiにて、映画「イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語」公開記念タイアップ・キャンペーンを開催!

タワレコ渋谷店・6F洋楽ROCK/POPコーナーにてTシャツ付ムビチケの先行販売や、上記座談会の登壇者らがオススメしたスミス~モリッシー関連作品を直筆コメント付きで展開。対象商品購入でタワレコ渋谷限定デザインの特典ステッカーをプレゼント! またパネル展示、1Fの電子看板でもトレイラーの放映などを行います。

詳しい展開内容は下記にて。タワレコ渋谷店は、〈イングランド・イズ・マイン〉を上映する映画館、渋谷シネクイントともかなり近い距離ですので、映画を観る前にスミスやモリッシーを聴きたくなったら、あるいは映画を観てスミスやモリッシーを聴きたくなった気分のまま、ぜひともご来店ください!

 

キャンペーン概要
■トレイラー放映
・場所:タワーレコード渋谷店1Fエントランス
・期間:2019年5月20日(月)~6月10日(月)

■関連商品の展開販売
・場所:タワーレコード渋谷店6F ROCK/POP売場内
・期間:2019年5月20日(月)~
販売商品
・「イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語」限定Tシャツ付ムビチケ(税込4,000円)※限定TシャツはLADIES/MENSの2種
・「イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語」ムビチケ (税込1,400円)
・スミス/モリッシーのCD、レコード各種
・Mikiki座談会参加アーティスト(THE NOVEMBERS、Lillies and Remains、Luby Sparks)のCD
※上記対象商品ご購入で、いずれもタワーレコード限定デザイン特典ステッカーを差し上げます(なくなり次第終了)

■パネル展示〈モノクローム・フォト・エキシビジョン〉
・映画の名シーンやメイキングシーン、未公開フォトを、モノクロ写真でおよそ10点展示
・場所:タワーレコード渋谷店6F「イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語」展開上部壁面
・期間:2019年5月17日(金)~未定 ※シネクイントでの映画公開中は実施予定

★キャンペーン詳細は渋谷店のNEWSページにてご確認ください
http://towershibuya.jp/news/2019/05/20/134079

40周年 プレイリスト
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