映像は奇をてらわない。いくつものカメラで多彩なアングルから演者の所作を捉え、その様は見る者の興味に見事に添う。そういう意味では、この晩の公演を特等席で、複数の“眼”を得て見たような気分になれるだろう。石若のドラムを叩く姿を真上から写したカットも挿入されていて、それはうれしい。だって、普段コンサートに行っても絶対にこういうアングルでは見ることができないから。おそらく、石若は演奏するスタイルによりドラムのセッティングを変えていると思われるが、この晩はこういうキットを叩いていたのか。
また、Dolby Atmosを介する音が良い。1人1人の出し音がくっきりと聞こえ、各々が何をしているかがストレス・フリーでよく分かる。当然、フロントに立つ人の声の表情や個性もくっきり。これは、うれしい。
その一方、余計な作法の持ち込みはなされない。出演者の独白が曲間にインサートされたり、その人間像を知らせるために公演とは直接的には関係のない映像が入れられる作品もよくあるが、「JAZZ NOT ONLY JAZZ」にはそれがない。ただコンサートの様/流れを適切に抑え、その〈ゆくえ〉を素直に出すことに徹する。字幕による説明も、潔くなし。ゲストが変わる際の機材セッティングの時間をオミットしている部分はあるだろうが、石若のMCやゲストとのやりとりはリアルタイム的にけっこう収められている。それは石若とゲスト陣との関係性を伝えてくれるわけで、今回初めて一緒にやる人も多かったよう。そして、その会話からは石若がかつて好きで趣味的に聞いていた人たちに声をかけたということも知らせてくれる。
もちろん最後は出演者が全員ステージに出てきて、田島貴男/Original Loveの〈ジ・アンセム〉的な風情を湛えた“接吻”をみんなで歌い継ぎ、演奏し合う。秀でた楽曲はエヴァーグリーンであり、強いと思わせる場面でもありますね。エンドロールではリハの模様なども簡潔に紹介されるが、それも祝福された感覚を持つ本編を見た後だと興味深い。
「JAZZ NOT ONLY JAZZ」、ジャズだけじゃないジャズ……。そんな表題が冠されたこのライヴの映画化が明瞭に伝えるのは〈今のジャズの担い手の力量や興味はジャズだけで発揮されたり、完結するものではない〉という事実や、〈現在のジャズ的感性や力量は、他の音楽語彙にも有効である〉ということだ。また<イケてる同時代のビート・ポップは、ジャズが抱える何かを介してこそ光る>ということも、「JAZZ NOT ONLY JAZZ」は直裁に示唆するだろう。
MOVIE INFORMATION
劇場版「JAZZ NOT ONLY JAZZ」
監督:村尾輝忠
出演:アイナ・ジ・エンド/上原ひろみ/大橋トリオ/田島貴男(Original Love)
/PUNPEE/堀込泰行/石若駿/The Shun Ishiwaka Septet
配給:WOWOW
(日本|2025年|141分)
©WOWOW
2025年9月19日(金)ロードショー
https://jnoj.jp/film/