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宅録が手軽な時代にスタジオへ集まって録音する意味

――去年の12月にリリースされた『Into My System』ツアーのライブアルバム(『Into My System Live』)には、すでに新作から“QREA”、“Little Cycle”、“NOCTILUCA”が収録されていました。“Little Cycle”はアルバムのタイトルにもなっているし、ライブのような熱量という意味でも、今作を象徴する一曲ですよね。

「“Littel Cycle”は4人で作り上げた最大級の塊みたいな感じというか(笑)、1人1人の熱量を掛け算してできた楽曲で、メンバーが1人でも変わったら、あの曲は生まれなかったと思います。本当に、バンドメンバーがいるからこそできた曲だなと思いますね。

途中のインプロのセクション、真ん中の何も決めていないゾーンがあるんですけど、そこは全員のキャラがすごく出てて、特にベースの佳輝は最初の方は全然弾いてないんですけど、最後の方にちょっと出てくる、そのタイミングが絶妙だし、イシイちゃんは1人ですごい爆発してたり(笑)。

でもレコーディングは大変でした。ブースが違うと伝わらない部分もあったりして、3人はここで終わりだと思ってたけど、私だけ終われなくて、ボーンってはみ出しちゃったり(笑)。クリックは聴いてないので、ダメだったらもう一回最初からだから、すごく大変でした」

――時代感的にいうと、宅録でも高いクオリティのものが作れて、ギターをラインで録ることも普通になってたりするけど、今回の作品は一緒に録ることが大事だった。

「大事でしたね。コミュニケーションを取り合いながら、お互いの顔を見て作品に取り組む時間は宅録よりも意思疎通を取りやすいし、オンラインの世界では1週間かかることが、その場で解決してしまうこともあって。

このアルバムのレコーディングをし終えたあとの話にはなるのですが、最近デヴィッド・バーンの『音楽のはたらき』という分厚い本を古本屋で見つけて、読み終わるのに1カ月かかったんですけど(笑)、それにも〈今は家でもプロのスタジオの環境で作った音と全く同じ音で作品を作ることが可能になった時代〉と書いてあって、本当にそうだなと思って。昔はレコード会社にお金があったから、大きなスタジオを長い時間借りてレコーディングするのが主流だったけど、今はそれがより個人的なものになって、それでも同じクオリティのものができる、特別な時代になったなって。これからまた自分が作品を出すときに、スタジオで録る必要性についてもう一回考える、あの本がそのきっかけになりましたね」

――『The Little Cycle』というタイトルにはどんな意味合いがありますか?

「“Little Cycle”という曲名を付けたのは直感的な感じだったので、正直特別な意味はないんですけど、最初にすごく小さいフレーズがあって、そこにみんなが乗っかってきて、渦ができて、どんどん大きくなっていく、この曲にはそういう構図があって。それが一番メッセージ性があるというか、今回自分がやりたかったことのテーマに近い。自分という核があって、そこに仲間たちが集まって、1つのものを作るということとすごくマッチしてるタイトルだと思ったんです。

あとはこれまで『Time Won’t Stop』も『Into My System』も3つの単語にしてたから、今回も『The Little Cycle』にしました」

――“Beat Birds”とか、楽曲のミニマルなイメージともリンクしますよね。

「確かに。そう考えると今回ミニマルっぽいフレーズの曲がすごく多い気がします。自分の中での流行りだったのかもしれないですね」

 

高橋佳輝が加わったバンドの新たなモード

――“Beat Birds”はダンサブルで、ビートミュージック寄りの前作と今作の中間のようなイメージもありました。

「BLUE NOTE PLACEで俊ちゃんとデュオでライブをやる機会があったんです。俊ちゃんは細かいフレーズがすごくきれいで、映える人だから、俊ちゃんに合うような曲を作りたいなと思って、ああいうフレーズが思い浮かんで、それでできた曲が“Beat Birds”ですね。だから、最初はビートと鍵盤のために作って、そこにギターとベースが加わって、より厚みのある感じになったという背景があります」

――この曲はシンセベースですか?

「いや、あれは佳輝のエレキベースの音ですね。彼の音作りは特徴的で、本当にシンセみたいな音を出すんですよ。彼は常に何か研究をしてて、ずっと練習してるし、音楽に対する熱量がすごくて、いつも見習わなきゃって思いますね」

――ベースは前作までdawgssの森光奏太さんが参加していましたが、昨年のライブ以降に佳輝さんに代わっていて、今作でも全面的に参加していますね。

「以前から名前は聞いてたし、共通の知り合いもいたし、セッションとかでたまに会うこともあって、ずっと気になってはいたんです。でも今回自分のプロジェクトに呼ぶにあたっては俊ちゃんとも相談して、3カ月ぐらい悩んだのかな? 今まで奏ちゃんが積み上げてきてくれたものもあるし。でも結果的に佳輝でよかったなって」

――俊亮さんやイシイさんは同世代ですけど、佳輝さんはちょっと上ですよね?

「そうですね。いい意味で見守ってくれるというか、佳輝がリードしてくれている部分もあったり、ちょっと違う視点が自分のバンドの中に入ってきた感じがして、それはすごく新鮮です。

基本的に俊ちゃんもイシイちゃんも多くを語らないタイプで、ライブで集まるとmimikoが〈いつも私だけしゃべってるじゃん!〉って言ってたんですけど(笑)、佳輝が入ることによって、みんなの懸け橋になってくれて、すごくしゃべるようになったんですよ。今までは演奏で話す、みたいな感じだったのが、和気あいあいと、取り留めのないことも話すようになって、それはちょっと面白かったですね」

――最近のライブにはその雰囲気の良さが反映されているのかもしれないですね。

「それは本当にそうだと思います」