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僕たちの求める音

 今回のアルバム『Verses GT』には10曲が収録。仕上げるにあたってのテーマや理想はあったのだろうか。

NT「最初から最後まで通して聴けるアルバムにすることが凄く大事だった。もしかしたら先行シングルを聴いて〈これはダンス・アルバムだな〉と思った人もいるかもしれない。でも、このアルバムにはアンビエントっぽい瞬間もあれば、しっかり〈楽曲〉として成立しているものもあるし、アルバムを通してひとつの世界観を作りたかったんだ」

JG「実は他にも曲はたくさんあるんだけど、あえて片面5曲ずつの全10曲にしたんだよ。そこにあるちょっとしたシンメトリーの美しさとか、長すぎないけどちゃんと没入できる、みたいな絶妙なバランスを大事にしたかった。だから、すべての曲が入るべき理由があって選ばれているんだ。もっと派手な曲もあったけど、やっぱりこのアルバムにはひとつの物語が流れていると感じていて、それを壊したくなかった」

 そんな世界観に寄与する声のゲストはジョージ・ライリー、クチカ、タイソンの3名。後2者はラッキーミーに所属するレーベルメイトだ(タイソンはネナ・チェリーの娘でもある)。

JG「ジョージは友達の友達で、以前ハドソン・モホークとも仕事をしていて、そういう自然な繋がりもあったんだけど、間違いなくUK音楽のDNAを持ち込んでくれたね。今回のアルバム全体が〈自宅でゆっくり聴ける音楽〉と〈クラブで体感する音楽〉のちょうど中間にあるような作品なんだけど、そのバランスってUKの音楽シーンがすごく得意とするところだと思う。タイソンは“Angels”にスモーキーなトリップホップの雰囲気を持ち込んでくれて、それもすごく良かったね」

NT「タイソンやクチカとはレーベルメイトという関係性だけじゃなくて、もっとファミリーみたいな感覚があった。その温かいエネルギーを作品にも込めたかったんだ。3人とも僕たちがファンだったアーティストでありながら、作業していくなかで友情も深まっていって、凄く自然に作ることができた。こちらから細かい指示を出さなくても、みんなが持ち込んでくれるものを信頼していれば良かったんだ。一緒に制作できたことは、とても大きな喜びだよ」

 なかでもジョージの歌う“Your Light”は最後に出来た曲でもあり、先行シングルにもなった重要な存在だという。

JG「“Your Light”はアルバムの前半に完璧にフィットする、まさに光が差し込むような存在だと思っているんだ。しかもこの曲はアルバムで初めて〈声〉が登場する瞬間でもあって、あの揺らぐような深みのあるヴォーカルが入ってくるところはアルバムの中でも特に好きな瞬間だね。それともうひとつ特別な曲がB面の真ん中あたりに位置する“Found”だね。これは突き抜けるような明るさやエネルギーに満ちた“Your Light”の対極というか、どこか深く沈み込むようなループ感や曖昧さがあって、不思議で引き込まれる雰囲気がある。この2曲はアルバムの中で異なる役割を果たしながら、お互いを補完し合っているような関係なんだ」

NT「その話をしてくれたのはおもしろいね。僕にとってもハイライトはやっぱり“Found”で、これはモントリオールのフィルのスタジオで作ったんだけど、このコラボを象徴する曲だと思っているんだ。というのも、自分たちのサウンドへのイメージがある程度固まった頃に作っていて、完全に流れるような状態で生まれたトラックだったんだよね。ほとんど会話もなく、ただ没頭していて。作っている最中に鳥肌が立ったくらいだよ。しかも、完成してから何時間ループで聴いても全然飽きなかったんだ」

JG「そう、ほとんど会話もせずに作業していて、まるで催眠状態からふっと目が覚めたみたいになって、気付いたらトラックが出来ていた(笑)。“Found”は物凄くミニマルで、アルバムのなかでも音のレイヤーがいちばん少ない曲だと思うけど、僕にとってはいちばん広がりを感じる曲でもあるんだ。無限に広がっているような果てしない感覚、恐らくその感覚こそがこの曲のDNAで、僕らがこれから作るすべての音楽にとっての基準になったと思う。つまり、ミニマルでありながら同時に広がりがあること。迷い込めるような、でも決して気が散らない音楽。それが僕たちの求める音なんだ」

 充実のアルバムを引っ提げた二人はこの後に日本も含めたツアーを控えている。そして……。

JG「次にやるべきことはライヴの構築だね。現時点では、アルバムを完成させた東京でツアーを終える予定なんだけど、それも本当に特別でエキサイティングなことなんだ。一方で、今回のアルバムには入れなかった楽曲がまだまだたくさんあって、それにも心の底から興奮している。それをどう形にしていくかも楽しみだね。まずはこのアルバムを世に出して、世界がどう反応してくれるか……果たして反応してくれるのかも含めて(笑)、眺めていくことにワクワクしているよ」

左から、ジョージ・ライリーの2023年作『Un/limited Love』(Ninja Tune)、クチカの2024年作『Can You Hear Me Dreaming?』、タイソンの2024年のEP『Chaos』(共にLuckyMe)