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ミラクルなトリオで実現させた、いま鳴らしたい音

――本作は、カノアさんが来日した際に1日空いていたため録音したとのことです。制作の経緯を改めて教えてください。

「Days of Delightの平野(暁臣)さんと〈何か作品をつくろう〉と話していた矢先にカノアさんが来日すると知って、すぐに連絡したところ快諾してくれました。札幌での共演が実りになって、スムーズなタイム感でレコーディングまで辿り着きました。それからどんな音楽にするかをイメージして、いま鳴らしたい音像を考えたところ、市野さんにオファーした次第です」

――カノアさんと録音するにあたって市野さんとのトリオにした理由、実際に3人で演奏した際の感触などを教えてください。

「ジャズの音楽にはさまざまな側面がありますが、テンポやタイムから逸脱して音楽が進んで楽曲を模っていく演奏の仕方が、音楽上でのバランスのよい会話が3人でできるのではないかと想像して、それに見合った曲を用意しました。実際に演奏したら、それはまさしくミラクルでした」

――石若さんはさまざまな形式、編成のバンドで演奏されていますが、石若さんにとってトリオとはどんな演奏形態でしょうか?

「トリオの音楽は、3人よれば文殊の知恵という言葉があるように、偶数な編成ではできないような特別な音楽の拡がりがあると思います」

 

歌のメロディが即興で拡張されていく面白さ

――今回、 “April Fools”(THINKKAISM)、“Room (Shouganai)”“Natsuyasumi”(Songbook)など石若さんが過去に録音された自作曲を演奏しています。選曲はどのようにしましたか?

「例えば、“Room”や“Natsuyasumi”はSongbookの曲で、歌詞がついていますが、その歌詞のついた歌のメロディからインスパイアされて即興でそのメロディが拡張されていく面白さを個人的に見出していて、というのは、ドラマーの立場でそれを目撃しながら演奏する訳ですが、市野さんと、カノアさんにうたっていただいたらどんな景色が見えるだろうと企みました」

――近年、ピッチの高いスネアやタムを16分や32分音符などで細かく叩きつづけるJD・ベックのようなスタイルがTikTokなどで流行っています。“April Fools”での手数の多い演奏はそれに近いプレイも部分的に聴けますが、ああいった演奏法を意識することはありますか?

「彼らのプレイというよりかは、もっとクラシックサイドの現代音楽のパーカッションのためにつくられたような作品に近いことを、ドラムセットを用いて表現したいという心です」

――“Arekara Ichinen”と“Lake Largo”は新曲でしょうか? それぞれ、どんな曲なのかを教えてください。

「前者は古い自作曲で、『Boys featuring SHUN』というアルバムの“Last Year”という曲が元になっています。3.11の震災のちょうど1年後に出来た曲でした。“Lake Largo”は録音時のわりと新しい曲で、Banksia Trioに持参して時たまライブでもさまざまなアレンジを試しながら演奏していた曲でした。どちらもピアノに向かって作曲したものです」

――アルバムを温かく締め括る“時計台の鐘”は、東京音楽学校出身のバイオリニスト高階哲夫が1923年(大正12年)に作曲した曲です。札幌の時計台がモチーフになっていますが、石若さんにとってどういう曲なのか、今回演奏した理由とともに教えてください。

「カノアさんも札幌にゆかりがありますので、札幌市民の誰もが耳にしたことがあるであろう市歌を選び、演奏する際に自然に札幌の町を意識するような形になりました」