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多才かつ個性的な音楽家マーティ

――アルバムには石若さんと渡辺さんの曲も入っています。

マーティ「『Trio』シリーズにはほぼ毎回メンバーの書いた曲が入っています」

――渡辺さんの“My Legs Are Killing Me, But It Hurts So Good”はちょっとユーモラスで独特な曲ですね。

マーティ「変な曲だよね(笑)。大好き。僕は変人だから、たぶん翔太は僕のために書いてくれたのだろうと思います。メロディは意外とシンプルだけど、ちょっと怪しさが入っている。

僕にとってもコンポジションはすごく大事。シンプルな曲に怪しくて面白い要素が入っていることは大事だと思います」

――そこはジェームズさんと通じ合っていますね。

ジェームズ「うん。マーティの作曲はすごく好き。いろんなプロジェクトをやっているけど、全部にマーティの書き方が表れてる。それがすごくいいし、珍しい。マーティ自身のスタイルだけではなく、バンドのサウンドをまず想像してやっている。それは正しい」

マーティ「バンドのサウンドはすごく大事だね」

ジェームズ「うん。マーティの新しいバンドの作品を聴くたびに〈あっ、また違いますね~〉って思っています」

――ジェームズさんはマーティさんをどんな音楽家だと思っていますか?

ジェームズ「マーティは珍しいミュージシャンで、いろいろなプロジェクトをやっています。マーティのようにウッドベースとエレキベースの両方をうまく演奏できる人はほとんどいない。そして、フリージャズも現代的な即興音楽もロックもフュージョンもポップも、これほどいろんな曲をやれる人はほとんどいない。それから、たくさん音楽を聴いている彼のセンスや趣味もすごいです。どんなジャンルやフィールドに入ってもマーティの味が入ってくる。それは素晴らしい」

マーティ「……泣きそう(笑)!」

――なかなか聞く機会がないと思いますが、ermhoiさんにとってマーティさんはどんな音楽家ですか?

マーティ「えっ、怖い怖い怖い(笑)!」

ermhoi「え~……(笑)。普段関わっていると朗らかで明るくてフレンドリーですが、音楽を通して彼自身のいろんな感情の引き出しを表現しているのかな、とすごく感じます。彼のひねくれた面が音を通して聴けるから安心するというか。

『Trio』シリーズはどれもサウンドが違っていて、『Trio IV』と『Trio I』はピアノトリオという楽器の組み合わせは一緒だけど、音楽性はぜんぜん違っていて不思議ですよね。同じ人が作っていて、作曲も9割ぐらいマーティなんだけど、こうも変えられるっていうのは特殊だなって」

――ピアノトリオはジャズの世界で重要な編成ですが、マーティさんにとってどういうものですか?

マーティ「好きな人とやりたいから、あんまり楽器は関係ないかなって。〈ピアノトリオのレコードを作りたい〉じゃなくて、〈翔太はほんとに特別なミュージシャンだから一緒にやりたい〉とか、そういう思いでアルバムを作っています」

 

アコースティックベースギターの音に惹かれて

――『Trio IV』でマーティさんはアコースティックベースギターを演奏しています。エレキベースでもコントラバスでもない、あまり一般的ではないこの楽器を選んだ理由は?

マーティ「僕がアコースティックベースギターを初めて聴いたのは、たぶん2004年とか。お母さんが昔サンフランシスコに行って、アメーバ・ミュージックで店員さんに〈息子がベースを始めたんです。お土産を買いたいんだけど、おすすめのCDありますか?〉って聞いたんですね。その店員さんが出してきたのがジョナス・ヘルボーグ(ヨナス・エルボーグ)というスウェーデンのベーシストのすごく珍しいアルバム。

そのアルバムはショーン・レインというギタリストとセルヴァガネッシュというインドのパーカッショニストと3人で演奏したもので、何曲かでアコースティックベースギターを弾いているんですね。それが最高で、めっちゃ感動しまして。それから音楽の歴史を遡っていろいろ聴きました。

で、去年そのアルバムをひさしぶりに聴いて、やっぱ弾きたいなって思ったんです。タコマのアコースティックベースギターを偶然デジマートで見つけて買ったら、〈ああ、あの音だ!〉と思って、翔太と合いそうだと思いました」

――渡辺さんの音とアコースティックベースギターが合いそうだと思ったことがきっかけだったんですね。

マーティ「そう。このアルバムはワンルーム、同じ部屋で録っているんですが、アコースティックベースギターは音量がそんなに大きくないんですね。アルバムを録るにあたって、それもめっちゃ面白かった。駿もそれに合わせてすごくちっちゃい音の叩き方をしてて、モニターで聴くのも難しくて。このレコードにはそういういろんなチャレンジのインフルエンスも入ってて、すごく楽しかった」