©Logan White

オーケストラ・サウンドも爽やかな新作にノラ・ジョーンズも参加!

 ある日、ジェシー・ハリスのもとに旧友のブラジル人メイコン・アナニアスから連絡が届いた。〈いまエストニアのオーケストラと一緒にアルヴォ・ペルトの95歳を祝う委嘱作品を録音してるんだけど、このオーケストラと何か一緒に録音しないか〉――このことをきっかけに生まれたのが、『If You Believed In Me』だ。

JESSE HARRIS 『If You Believed In Me』 Secret Sun/Artwork(2025)

 メイコンは、大半がリオで録音されたジェシーの『Sub Rosa』(2012)で管弦の編曲などを務めた。また、同じくブラジル人のマリア・ガドゥが同年に発表した『Mais Uma Página』には、彼女とメイコン、ジェシーが共同で作った曲が収められている。

 「前年にメイコンとマリアは一緒にニューヨークの僕の自宅を訪ねて来て、彼らと友人になった。僕は自分のアルバムをオーケストラと一緒に作りたいと思ったことがなかったので、メイコンの提案は全く思いがけないものだった。ただ、以前から僕は、クラウス・オガーマンがオーケストラの編曲を手掛けたジョアン・ジルベルトの『Amoroso』が好きだったので、あのアルバムのことが念頭にあったかもしれない」

 ともあれ、ジェシーはたまたま一週間前に作ってあった“Dolores”をメイコンに送った。

 「同曲のオーケストラの演奏と編曲に感動して、彼らと一緒にアルバムを1枚作ろうと思った。もっとも、オーケストラが入ることを前提に曲を作らなければならなかったので、既存曲以外の8曲は、約5週間で書き下ろした。すごく大変だったけど(笑)」

 エストニアでのオーケストラの録音はメイコンに任せたそうだが、ジェシーはNYの自宅スタジオでヴォーカルと各種楽器、リオではカシン等とリズム・トラックを録音。また、“Having A Ball”ではノラ・ジョーンズとデュエットしている。今から約23年前に全世界でヒットしたノラのデビュー・シングル“ドント・ノウ・ホワイ”は、作者のジェシーにとっても出世作にあたる。

 「僕はノラの歌声が大好きなんだけど、今回彼女はわざわざ僕の自宅に来てくれた。“ドント・ノウ・ホワイ”はあまりにもヒットしたので、自分のライヴで歌うことを避けていた時期もあった。でも、近年は自分でも歌っているよ」

 “ドント・ノウ・ホワイ”は、J・D・サリンジャーにとっての「キャッチャー・イン・ザ・ライ」のようなものかも、と指摘すると、「そうかもしれない」とジェシーは苦笑した。サリンジャーが他にも良い短編を残しているように、この新作にも良い曲が揃っている。