
言葉の重みを噛みしめて
――ちなみに、メンバーそれぞれ思い入れがある曲は?
平野「“今なら言える”です。(自分のパートの)トランペット的にもかっこいいし、音源全体の完成度がいちばん高い。よくぞこんなにゴリラ祭ーズからかけ離れた曲作れたな、と。録音もいちばん大変でした。いっぱい録り直したし」
――あの曲、Spotifyではいちばんよく聴かれてますね。舩越くんは?
舩越「“沈黙”ですね。これは当時、自分がすごく考えてたことに、なんなら古賀くんがちょっと歌詞を寄せてくれた部分もある気がする。僕は、盲目的に発信することに対して自分が割と抵抗があった。発信することは大事だけど、それだけが正義でいいのか、みたいな? そういう話を2人とはいっぱいしたので」
古賀「覚えてますよ。去年の春、トリキ(鳥貴族)でね(笑)。須藤さんと会う前日やったね。歌詞については、須藤さんより前に舩越くんからすでにダメ出しを受けてて。僕にダメ出しというよりは、〈歌って何なん?〉みたいなことだった(笑)?」
平野「表現者側の態度に対するレクチャーやったね」
古賀「言葉の重みというものについてね。〈簡単に言葉を使いすぎや〉みたいな」
舩越「いろんな人に対して〈言葉の重みを意識してないのかな?〉という疑問を抱いてて。僕にとっては今回の『The Drifter』は、そういう時期とともにあったアルバムなんです」
古賀「それは一緒ですよ、こっちも。僕にとっても重要な時間でした。もともと“沈黙”という曲は、今回のアルバムでは自分の弱さを表すような曲やと思ってたんです。でも、舩越くんとしゃべったことで、決してそうじゃないなとわかった。なので、最後のフレーズが〈もう誰も傷つけたくないよ〉だったのを、意思を持って黙るという選択ができるということがわかったし、黙るということは何も考えてないということじゃないと思えたから、〈もう何も言葉にできないように目を閉じて〉に言い換えたんです。なので、僕にとっても推し曲といってもいいです」
――古賀くんは全部自分で作ってるから、どれか1曲は難しいだろうけど、あえていえば?
古賀「難しいな……。でも、やっぱり“The Drifter”は思い出深いです。このアルバム制作は、この曲とともにあったし、この曲に対する自分の思いもどんどん変わっていったし。この曲と旅をしたなと思います。自分の中では、出すタイミングを逃したし、古い曲だからあんまり出したくないと思ってた時期もあったけど、最終的に歌詞をめちゃ練り直して、10年後の自分でも聴ける曲になったかなという達成感はありますね」
ゴリラ祭ーズにチャンピオンロードは似合わない
――このアルバム『The Drifter』で、ゴリラ祭ーズは若さを獲得しましたよね。前が老けていたという意味じゃないけど、小器用に面白いインスト曲を演奏するかわいいバンドみたいなイメージが大きかった。ある意味でそれを裏切るほどの変化をして、今回のアルバムで初めて実年齢っぽい不器用さを見せたと思うんです。
3人「うれしー!」
――この不器用さ、未完成な部分も含めて、今ようやくバンドらしいスタート地点に立っているのかも。これからはどういう活動を考えているんですか?
平野「上京とか?」
古賀「実は考えてます」
舩越「でも〈チャンピオンロード〉は、やっぱり自分たちは違うな、となりました(笑)」
――え? 違うの?
平野「去年の夏くらいに気がつきました(笑)」
古賀「俺たちが目指すのは、そういうかっこよさのバンドじゃないなと、半年かけて気づきました」
舩越「アルバムも、当初はもっとクールでかっこよくて熱くて、現代にマッチした内容を目指してたんですけど、自分たちの根の部分がそれと違いすぎた。今は、自分たちらしいやり方があるんじゃないかと思ってます」