インタビュー

ものんくる 『南へ』

よりポップさを増した新作は、とっても〈たらけも〉

撮影:米谷 享/撮影協力:秩父鉄道株式会社

 

 ウッドベース奏者の角田隆太とヴォーカリストの吉田沙良によって結成された、ものんくる。ジャズ、ポップス、ブラジル音楽など多彩な音楽性を消化しながら、自由奔放な語り口でドラマティックに展開するサウンドで注目を集めてきた彼らが、遂にメジャー・デビューを飾った。新作『南へ』は、昨年リリースされたファースト・アルバムに続いて菊地成孔がプロデュースを担当。作詞作曲を手掛ける角田は、新作の内容についてこんなふうに語ってくれた。

 「アルバムの半分くらいは前作の時にできていた曲なんですけど、残りの前作以降に作った曲に関しては“ポップなものを作ろう”という意識はありましたね。ジャズっぽいアンサンブルに飽きてきたってこともあったし、僕がポップなことをやろうとしても、あからさまにポップなものにはならないだろうと思っていたので」(角田隆太)

ものんくる 南へ TABOO(2014)

 前作より聴きやすさを増してはいるが、凝った作りは相変わらず。《ぴえろ》では童謡を曲に織り込むなど遊び心を見せる一方で、菊地が提供した《EVE NO LUCKY DAYS》ではパフュームばりに洗練されたポップ・ソングを聴かせたりとアルバムはバラエティ豊かな内容。そんななか、吉田が初めて作詞作曲を手掛けた《たらけも》はユニークな言葉のセンスも魅力的だ。

 「私、日常会話がヘタクソで。親しい人に対して、意味不明の言葉をわーっと言ってるんですよ。 “たらけも”もそのひとつで、それにツノさん(角田)がコードを付けて、そこからストーリーを拡げていったんです。私としてはシンプルで透明な気持ちを表す言葉なんですけど、曲を聴いてくれた人がいろいろ想像してくれたらいいな、と思ってます」(吉田沙良)

 どの曲も様々なアイディアが散りばめれているが、なかでも作曲には一番時間をかけていて「ポップスをやるからにはメロディが大切だと思っていて。もっと良いメロディがあるんじゃないかと探すのが大変だった」(角田)とか。一方、吉田は「ポップスってことは意識しなかったんですけど、ラブソングが多くなったんで、その主人公の気持ちになって歌うとポップな感じになるんですよね」と自然体だ。

 「でもベタなラヴソングじゃなくて“不安を抱えながら今は一緒にいる”みたいな歌詞なので、誰にでもあてはまる歌だと思います。希望があるとは言えないけどポジティヴに行きていく、みたいな」(吉田)

 「そう、結論は保留しながら前進する」(角田)

 “南”に何が待ち受けているのは神のみぞ知る。でも、きっとものんくるの歌が旅の風景を鮮やかに彩ってくれるはずだ。