来年2019年1月12日(土)に東京・代官山UNITで開催されるライヴ・イヴェント〈DOVETAIL(ダブテイル)〉。Mikikiでは、同イヴェントに出演するWONK、MELRAW、SIRUP、CRCK/LCKS、ものんくるが、菅野結以がパーソナリティーを務めるTOKYO FM「RADIO DRAGON-NEXT-」内で行った座談会の模様を、計6回にわたってテキストで公開中だ(イヴェントと本記事の概要は第1回の記事へ)。
〈なれそめ編〉、〈WONK編〉に続く第3回は、〈MELRAW編〉。WONKのサポートとしても知られ、サックスやシンセサイザーなど多数の楽器やMPCを操るマルチ・インストゥルメンタリスト=安藤康平について、5名がトークした。
★座談会・完全版テキストの記事一覧はコチラ
★次回、第4回は12月1日(土)公開予定!
俺8部合唱
菅野結以「続いてはMELRAWさん、曲紹介をお願いします」
MELRAW「はい。9月にリリースした曲で、“Warriors”です」
(“Warriors”オンエア中)
角田隆太(ものんくる)「いかついですよね」
小西遼(CRCK/LCKS)「ドラムは(CRCK/LCKSの石若)駿? スネアの音すげえ駿っぽいよね」
MELRAW「うん。〈ミュートする?〉って訊かれたから〈しないで!〉って」
小西「わざとこうしたんだね。この余韻の作り方は、駿っぽい」
角田「この声、コーラスは自分でやってるの?」
MELRAW「そう、全部。〈俺8部合唱〉みたいな。いや、6くらいかな?」
小西「ライヴでも歌ってるもんね」
MELRAW「うん。でもこの間やって辞めた」
小西「ヴォーカル・エフェクトをやったらいいのにって、この間ライヴを観てて思ったな」
MELRAW「オートチューンとかも考えたんだけどね、曲によって難しいから。でもいろいろやってみたりはしてますよ」
小西「SIRUPはオートチューンとか使うことある?」
SIRUP「6年位前にやったことはありました。楽しかったけど、お客さん(の反応)は〈え? なんで?〉って」
MELRAW「たぶん、歌う側からしたら違う音色(おんしょく)を取り入れたいって話だと思うんだけどね。以前、清水翔太くんがオートチューンを使って、SALUさんとかと一緒にやり出したときに、〈なんで歌上手いのにオートチューンなんだろう?〉と思ったりはしたな。自分がオートチューンを使うのは音程を取りたいからなんだけど、歌う側の意図や意味合いを汲み取ることって、やってないとなかなか難しいよね」
角田「お客さんはやっぱりその声が聴きたくて観に来てるわけだから、えっオートチューンなのって思っちゃうこともあるかもね」
SIRUP「ヒップホップだと文化というかサウンドのひとつにオートチューンがあるから、それがないと逆に成り立たなかったりしますけどね」
小西「この曲、サックスはどこで録ったの?」
MELRAW「これ全部、向(啓介)くんのところ。歌は実家で録りました」
小西「そうなんだ。部屋鳴りしてるなと思ってたんだよね。それにしても〈DOVETAIL〉の日は、〈小川翔※、何バンド出るのか問題〉があるね」
※ものんくるやMELRAW、WONKなどのサポートも行うギタリスト
MELRAW「WONKと兼任する俺どころじゃないね」
小西「今日、小川翔呼ぶべきだった(笑)?」
菅野「その小川さんは何の担当ですか?」
小西「ギターです。最近はCHARAさん仕事をやったりとかもしていますね」
MELRAW「元々俺の地元の友達で、彼が上京するタイミングでギターの現場をいろいろ紹介していたら、いつの間にかその全部やることになっちゃったみたいな(笑)」
初めて自分で歌を入れて……みましたよ
菅野「お届けしたのは、“Warriors”でした。めちゃめちゃかっこいいです。曲をお送りしている最中に、サポート・ミュージシャンが被りまくっているので、この日はどうなるんだろうって話をしてたんですよね」
小西「石若駿は“Warriors”でも叩いているし、この中の4組に関わってるね」
長塚健斗(WONK)「WONKのファースト・アルバム『Sphere』でも一曲叩いてくれていますし。“Real Love”という曲で」
小西「Real Love!」
菅野「おっ、やっぱり※(笑)」
※長塚は〈恋愛担当〉。本連載の第1回を参照
角田「そういう星のもとにいるね(笑)。駿はものんくるの前作(2017年『世界はここにしかないって上手に言って』)でも叩いてくれてるし、実は〈DOVETAIL〉の日も駿にお願いしてるんだよ」
小西「マジ?!」
角田「あ、言ってなかったっけ? そうなの」
菅野「めちゃくちゃ忙しい……」
MELRAW「“Warriors”のピアノを弾いてる宮川純くんは、ものんくるのサポートをやってるんですけど、〈この日、MELRAWも俺が弾く?〉って言ってくれてるし、もうごちゃごちゃしてるんですよ、水面下で(笑)」
角田「サポート・ギターの小川さんは、この日たぶん3バンド(WONK、MELRAW、ものんくる)掛け持ちになるだろうと」
SIRUP「僕、小川さんの奥さんのほうと仲良いんです」
菅野「え! どういうことですか、それ(笑)?」
SIRUP「よく一緒に対バンしていて(笑)。僕の前の名義の時代に」
長塚「へえー! すごいな」
菅野「そういう意味でも、ひとつのシーンが出来てるってことなんですね。MELRAWさんの曲に入っているヴォーカルはご本人の声だということで」
MELRAW「そう。今回なぜこの曲を選んだかと言うと――SIRUPくんはひとりだけど、この中でバンドにヴォーカリストがいないのってMELRAWだけで。ファースト・アルバム(2017年作『Pilgrim』)では、それこそ長塚とか、ものんくるの(吉田)沙良ちゃんに歌ってもらってたりしてるんですけど、この曲では簡単なものだけど、初めて自分が歌を入れて…………みましたよっていう」
全員「アハハハ(笑)」
MELRAWと小西はまったく違うサックス奏者
角田「ちなみにこの曲の歌詞は誰が?」
MELRAW「それはお隣にいらっしゃる……」
長塚「僕が書きました」
小西「ああ、LOVEに関しての話はやっぱりね」
長塚「まったく違うっすね(笑)」
MELRAW「“Warriors”は鼓舞する、みたいな意味だからね(笑)。まあ、歌詞はテーマだけ伝えて書いてもらった感じです。さっきの歌詞の書き方の話でもあるんだけど(第2回の記事を参照)――俺は英語も堪能ではないし、歌詞書いてる人の前で言うのもなんだけど、音楽に乗せて言葉にして人に伝えたいことってあまりないんです。ヴォーカルは声っていうひとつのパートというか、音としてでしか捉えられなくて。今までもすっごくがんばって書いてたんですけど無理で、何回も挫折してるんですよ(笑)。だから健斗には、デモの段階で何語でもない謎の歌を入れて、それを〈こういうテーマで書いてください〉とポンと送って」
小西「いいじゃん。コ・ライティングだよね」
菅野「その〈テーマ〉はなんだったんですか?」
長塚「まさに戦士というか、鼓舞する、みたいな」
MELRAW「ちょっと儀式的で、繰り返されるリフレイン的な」
長塚「宗教的なじゃないですけど、そういう雰囲気で書きましたね。で、書き終わった後に今度は英語の発音のね……LINE上で声を送ることができるじゃないですか? あれを使って、ここの発音はこうです、みたいなやり取りをしました。この〈R〉の発音が違うとかってふたりで声を送り合って(笑)」
菅野「英会話教室(笑)」
MELRAW「夜な夜なそんなことやってましたね」
長塚「おもしろかったですよ」
菅野「SIRUPさんがアンケートの〈MELRAWさんの好きな一曲〉で、この曲を選んでるんですよね」
SIRUP「単純に自分がライヴを観に行ったら一番踊るやろうなって曲なんですよね。いま話を聞いてて〈やっぱりな〉と思ったんですけど、民族的なリフレインがあって。僕、次の日に何も予定がなくてめっちゃ酒を呑んでいい状況だったら、この曲を5時間くらいずっと聴きながら踊り続けられると思う(笑)」
長塚「病気(笑)。何呑んでんのこの人ってなるよ(笑)」
菅野「(笑)。小西さんは同じサックス奏者としての見方もあると思うんですけど、アンケートでMELRAWさんのことを〈自分にはないサックス・スタイルがいい〉と書かれていますね」
小西「たまに会った時に、最近のサックス・シーンで、だんだんサックスの音(の種類)が増えてきたよねって話すんです。MELRAWはよくそれを言ってて。それは彼自身がサックスの音が好きで、音楽も好きだから、サックスという楽器がこの先どういうふうにやっていけるんだろうっていう可能性をつねに意識してるんです。そしてその意識を持って、プレイヤー然としていろんなシーンに食い込んでいってるところも尊敬してますね。それでいて、自分とはまったく違う。もう1ミリもかすらないくらい、スタイルが違うんですよ」
菅野「どう違うんですか?」
小西「難しいんですけど、発音から声質から語法から言語まで違う。でもお互い、少なくとも俺はだけど、彼が吹いてるところを見て、めっちゃ勉強になるから。刺激を受けてますね」
菅野「言葉にするとしたら、MELRAWさんはどういうタイプのサックス奏者ですか? どういう音の?」
小西「うーん、お茶目な男の子がめっちゃかっこいいスーツを着てるみたいな感じ(笑)。アツいのに、スタイリッシュでもあるんですよ。WONKでワーッと吹いてめちゃくちゃ盛り上げるときも、MELRAWって絶対醒めてるんですよね。盛り上げたその先の意識が冴えきってる。ライヴが終わって呑んでるときは、ぐちゃぐちゃになってるんですけどね(笑)」
長塚「(笑)。たまにひどいときは、ステージ上がるときに〈ふぇ?〉ってなってるよね。でも、それでも盛り上げるのがすごいですよ」
小西「そういえば、サックス持ってこなかったこともあるもんね」
菅野「えー!」
MELRAW「そうだ、仙台でのライヴに(笑)」
小西「でも、ステージの上では冴えまくってるんだよ」
菅野「MELRAWさんから見て、小西さんはどういう印象?」
MELRAW「小西は英語を話せるけど、さっき言ってた〈発音の違い〉ってそこがけっこう大きいのかなと思ってますね。俺もうらやましいところはいっぱいあって、小西の演奏を聴いてて、自分はこういうふうに吹けないなあってのはよく思います」
小西「〈持っていき方〉ってのがちょっと違うよね」
MELRAW「俺からすると、小西はオシャレだなと思う」
菅野「おもしろいですね。ぜひふたりで一緒にやってほしいです」
小西「いつかやりたいねって言ってはいるんですよ。でもなかなか機会がなくて」
菅野「ぜひ実現してほしいですね。MELRAWさん的に、今回の〈DOVETAIL〉についてはどうですか」
MELRAW「僕はこれまでみんなのサポートをしてきたわけですけど、こうやって対バンという形で肩を並べてやるのは不思議な感じだったりします。ヴォーカル不在ということで、この中ではちょっと異質だとは思うんですけど、〈関係ねえぞ〉って気持ちでやろうと思ってるので、みなさんよろしくお願いします(笑)」
★次回、第4回は12月1日(土)公開予定!
TOKYO FM「RADIO DRAGON-NEXT-」
毎週金曜日27時~29時に放送中! https://www.tfm.co.jp/dragon/
※放送されたトークはコチラからオンエア日より1週間聴くことができます。
※TS ONE(全国聴取可)にて毎週土曜日20時~22時で再放送有り。
※放送は関東近郊。関東以外の方はradikoの有料コンテンツ、またはWIZ RADIOで聴くことができます。
DOVETAIL
日時:2018年1月12日(土)
会場:東京・代官山UNIT
開場/開演:15:00/16:00
出演:WONK、MELRAW、SIRUP、CRCK/LCKS、ものんくる
チケット:前売4,800円 SOLD OUT
主催・企画・制作:Dentsu Music & Entertainment Inc.、サンライズプロモーション東京、ワイズコネクション
★詳細はこちら
■WONK
長塚健斗(ヴォーカル)、江﨑文武(キーボード/ピアノ)、井上幹(ベース/シンセサイザー)、荒田洸(ドラムス)からなるエクスペリメンタル・ソウル・バンド。新曲1曲を収録したリミックス作『GEMINI: Flip Couture #1』を5月23日にリリース。
http://www.wonk.tokyo/
★WONKがクリス・デイヴの魅力を語ったインタヴュー記事はコチラ
■MELRAW
サックス、フルート、トランペット、
http://www.epistroph.tokyo/melraw/
■SIRUP
大阪出身のシンガー・ソングライター、KYOtaroによるプロジェクト。最新EP『SIRUP EP2』を8月1日にリリース。
http://www.sirup.online/
■CRCK/LCKS
小西遼(サックス/キーボード/ヴォコーダー他)、小田朋美(ヴォーカル/キーボード)、井上銘(ギター)、越智俊介(ベース)、石若駿(ドラムス)から成るポップ・バンド。最新EP『Double Rift』を7月11日にリリース。
http://crcklcks.tumblr.com/
★『Double Rift』リリース時のインタヴュー記事はコチラ
■ものんくる
ジャズを基軸にした独自のサウンドに詩情豊かな日本語詞をミックスした、吉田沙良(ヴォーカル)と角田隆太(作詞/作編曲/ベース)からなる2人組ユニット。最新アルバム『RELOADING CITY』を9月5日にリリース。
http://mononkul.tumblr.com/