
インディーロックやヒップホップを意識した都会的な音
――今回の作品は『City』ですが、前作の『Mountains』とはどのようなコンセプトの違いがあるのでしょうか?
マーティ「すごくシンプルに言うと、『Mountains』は山梨の八ヶ岳の森の中で録ったアルバム。チルして、休憩の間に外でコーヒーを飲んで山を見るような雰囲気。
対して今回の『City』は、東京で夜の24時から朝の4時まで録音したアルバムなんです。みんな仕事が終わってからスタジオに入って、〈じゃあ録音しよう!〉って朝までやって、次の日はまた別の仕事に行くっていうタフなスケジュールで。すごくシティボーイなバイブスだなと思って」
――録音の日付を見ると、今回の『City』のほうが先に録音されているんですね。
マーティ「音作りの面でいろいろ悩んでしまって。その間に〈また録りたい〉ってなって山梨で『Mountains』を録った。そっちがすごくいい出来だったから、〈じゃあもう1回『City』の音源を聴き直してみよう〉ってなって、聴き返したら〈あれ? めっちゃいいじゃん!〉ってなったんだよね」
――悩んだのはどんなポイントだったんですか?
マーティ「『Trio II』、『Trio III』、『Trio II: 2』は全部自分でエンジニアリングもやっていて、『City』は違うエンジニアにお願いしていたんです。で、『City』は自分のエンジニアリングで作る音とか考えていることと、ちょっと違った音に思えて。録ってすぐは『Trio I』と同じものが出来てしまった感触があったんです。でも僕は、アルバムは毎回違う音にしたい。同じだったら出す意味が無いと思っているから。でも、時間をおいて改めて聴いてみたら全然違うものにちゃんとなってるなと思うことが出来たんですよね」

――じゃあ『City』『Mountains』っていうコンセプトはむしろ後からついてきたものなんですね。
マーティ「そう。毎回『Trio〜』だとわかりにくいから、今回はタイトルをつけようと思いました。でも環境による気持ちの部分はやっぱり大きい気がしますね。
楽器も『Mountains』はアコースティックベースギターと生ドラム、アップライトピアノでほぼ生楽器。『City』の方はシンセサイザーが入ったり、エレキベースにもめちゃくちゃエフェクトをかけたりしてます」
石若「具体的な録り方で言うと、『Mountains』の方は一つの部屋に全員がいて、セパレーション(隔離)なしで録ったんだよね」
マーティ「そうそう。引っ越したばかりの僕の家のスタジオで、奥さんの実家から持ってきたピアノを調律してそのまま録って。大変だったよね」
――『City』の音色面はどんなコンセプトでしたか?
石若「僕の楽器でいうと、『City』の時はジャズっぽいセットじゃなくて、もっとインディーロック寄りのセッティングでピアノトリオをやるイメージでした。バスドラムも22インチでジャズトリオにはデカめにして。クラップスタック(ハンドクラップの音を再現するシンバル)を使ったりとか」
マーティ「そう、インディーロックやヒップホップ系の音を意識しましたね。翔太もプロフェット(シンセサイザー)を持ってきたりして。僕もIbanezのめちゃくちゃ安くハードオフで買ったベースを使いました。あのベースはなにか魔法がかかってると思うんです。価格やグレードでいったらいい楽器じゃないんだけど、不思議な魅力があって。それもインディーロック感に寄与していると思いますね」