スター・ウォーズ「マンダロリアン」の音楽にみるアカデミー賞作曲家ルドウィグ・ゴランソンの魅力

 アメリカ・ハリウッドを代表する映画シリーズである「スター・ウォーズ」の最新作「スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー」が2026年5月22日、日米で同時公開される。同作の音楽を手がけるのは、今や映画音楽界を代表する作曲家となったルドウィグ・ゴランソンである。この最新作の公開に合わせ、ゴランソンが担当した「マンダロリアン」シリーズのサウンドトラック3作が4月24日、レコードで発売されることになった。

 「スター・ウォーズ」の音楽と言えば、言わずと知れたジョン・ウィリアムズである。どんな作曲家であっても、この映画音楽の大巨匠の後に「スター・ウォーズ」シリーズの音楽を担当することは、並大抵の重圧ではない。ゴランソンはこの超人気作の音楽をどう受け継ぎ、どう発展させたのか。このサントラを聴けば、その答えが見えてくる。

 ここでまず、ルドウィグ・ゴランソンの経歴を紹介したい。ゴランソンは1984年スウェーデン生まれ。2007年からロサンゼルスで映画音楽などを学び、「ブラックパンサー」「オッペンハイマー」でアカデミー賞作曲賞を受賞。2026年3月に発表されたばかりの第98回アカデミー賞でも「罪人たち」の音楽で3度目の作曲賞を受賞するなど、今やハリウッドで最高の作曲家の一人である。

 そんなゴランソンにとって、飛躍のきっかけになった作品の一つが、「スター・ウォーズ」で初のドラマシリーズとなった「マンダロリアン」(2019〜23年放送)である。同作はSeason 1〜3があり、全24話。ゴランソンはこのシリーズの音楽を担当した。彼の音楽を聴くと、憧れの存在でもあったジョン・ウィリアムズに対して最大限の敬意を払いながら、ゴランソンによる全く新しい「スター・ウォーズ」を生み出しているのがよくわかる。

 「マンダロリアン」は、映画史上に残る悪役である暗黒卿ダース・ベイダーが去った5年後の混迷した世界から始まる。賞金稼ぎであるマンダロリアンは、惑星ネヴァロである仕事を依頼される。依頼を引き受けたマンダロリアンは惑星アーヴァラ7に向かい、ヨーダと同様に強いフォースを持つ〈ザ・チャイルド〉の捕獲を目指す。ザ・チャイルドの本名は〈グローグー〉であり、今回の最新作の物語はまさにマンダロリアンとグローグーを中心に展開されることになる。

LUDWIG GORANSSON 『スター・ウォーズ/マンダロリアン - Season 1(オリジナル・サウンドトラック)』 Walt Disney(2026)

 Season 1のサントラには、テーマ曲“The Mandalorian”など、マンダロリアンシリーズを象徴する音楽の数々が収録されている。ゴランソンの音楽はジョン・ウィリアムズのダイナミックで壮大な世界観は残しつつも、混沌とした世界や登場人物の苦難や葛藤、絆を象徴するような繊細さも併せ持つ。

 ただ金管楽器を大音量で鳴らすだけでなく、非常にメリハリの利いた音楽が印象的である。また、ジャズやクラシック、民族音楽、電子音楽など様々なジャンルの影響が見て取れ、ゴランソン自身がスター・ウォーズの多様な世界を体現しているかのようだ。

LUDWIG GORANSSON 『スター・ウォーズ/マンダロリアン - Season 2(オリジナル・サウンドトラック)』 Walt Disney(2026)

 Season 2のサントラでは、元ジェダイであるアソーカ・タノを意識した異国情緒あふれる旋律、帝国軍を想起させるような重厚なサウンドが意識されている。マンダロリアンとグローグーによる物語が山場を迎えるにあたり、ゴランソンの音楽もよりドラマチックに響く。

 Season 3では、グローグーを救出するにあたり、マンダロリアンの掟を破ってヘルメットを脱いでしまったマンダロリアンの姿や再びマンダロリアンの一員として生きようとする矜持や誇り、帝国軍に破壊された惑星マンダロアの復興に向けた過程が描かれている。

LUDWIG GORANSSON 『スター・ウォーズ/マンダロリアン - Season 3(オリジナル・サウンドトラック)』 Walt Disney(2026)

 Season 3の音楽はルドウィグ・ゴランソンとともに、盟友であるジョー・シャーリーが手がけた。2人が紡ぐ音楽は、これまでのSeason 1〜2よりもダイナミックかつ激しく、そしてマンダロリアンとグローグーの関係を象徴するような、ある種の神聖さをはらむ。ゴランソンとシャーリーの関係というのは、まさに運命の絆を確かめ合うようなマンダロリアンとグローグーの関係と表裏一体なのかも知れない。

 ゴランソンは「スター・ウォーズ」の音楽を手がけたことについてのインタヴューで、「ジョン・ウィリアムズと最初に話したことの一つは、彼のインスピレーションは何なのかを尋ねることでした。彼はサムライ映画と西部劇を挙げました。私の仕事は、視覚的に見えるものやストーリーを音楽でも表現することです」と語り、ジョン・ウィリアムズのほか、ジョンと並び称される映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネから受けた影響が大きいことを語っている。

 スター・ウォーズという作品について、ゴランソンは「私にとって作曲中に非常に重要だったことの一つは、初めてスター・ウォーズを聴いた時の感情や感覚に立ち返ろうとしたことです。一番記憶に残っているのは、音楽を聴いた時の感覚と、それが私をどのように変えたかということです。まるで宇宙にいるような、初めてこの音楽を聴いた時は別の惑星にいるような感覚でした」として、スター・ウォーズが非常に思い入れの深い作品であることを振り返っている。

 さらに、「マンダロリアン」シリーズについてはこのように語っている。

 「このシリーズが他のスター・ウォーズと違うのは、主人公がヘルメットをかぶっていることだ。顔の表情が見えない。だから音楽の役割は、キャラクターが何を感じているかを明らかにすることだ。音楽は基本的にキャラクターの表情だ。私は映画を作曲するように作曲しました」

 つまり、ゴランソンはジョン・ウィリアムズやスター・ウォーズへの憧れと敬意を抱きながら、自分にしかできない新たな「スター・ウォーズ」の音楽を生み出そうと明確に意識しているのである。実際、ゴランソンの音楽はジョン・ウィリアムズのまねごとではない、独自の境地に達していると言える。

 1979年生まれの僕にとって、映画・音楽の原点と言える作品は間違いなく「スター・ウォーズ」である。ジョージ・ルーカスの手による壮大なストーリーと個性的な登場人物、ジョン・ウィリアムズの素晴らしい音楽は憧れの〈夢の世界〉であった。今回のサントラは、ルーカスとジョンが創り上げた世界をゴランソンが継承・発展させていることの証明になるだろう。

 


MOVIE INFORMATION
スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー

監督:ジョン・ファヴロー
製作総指揮:デイヴ・フィローニ
キャスト:ペドロ・パスカル(マンダロリアン/ディン・ジャリン)、シガーニー・ウィーバー(ウォード大佐)
2026年5月22日(金)日米同時公開
https://starwars.disney.co.jp/movie/mandalorian-grogu