イリュージョンを誘う
ハリウッドサウンドのアナリーゼ
ジョン・ウィリアムズの音楽
待望の「スター・ウォーズ」シリーズ最新作、〈フォースの覚醒〉が今月公開される。〈エピソード6/ジェダイの帰還〉より32年ぶりにマーク・ハミル、キャリー・フィッシャー、ハリソン・フォードが戻ってくること、監督にJ.J.エイブラムスが起用され話題になっているが、今年83才を迎えたハリウッド映画音楽の巨匠、ジョン・ウィリアムズの最新スコアにも大きな期待と注目が集まっている。世界的に権威のあるAFI(アメリカン・フィルム・インスティテュート)が選出するAFIアメリカ映画音楽ベスト25では、「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」が1位に輝き、2位「風と共に去りぬ」、3位「アラビアのロレンス」、4位「サイコ」、5位「ゴッドファーザー」と続いている。「スター・ウォーズ」の音楽は、まさにハリウッド映画音楽の金字塔と言えるだろう。
ジョン・ウィリアムズは、1932年ニューヨークに生まれ、父親のジョニー・ウィリアムズはジャズ・ドラマーで、レイモンド・スコット・クインテット、ベニー・グッドマン等と共演、ハリウッドでは「波止場」「地上より永遠に」等の録音に参加した。音楽的な家庭環境の中で育ったジョンは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校に在籍、作曲をマリオ・カステルヌォーヴォ・テデスコに個人的に師事。アメリカ空軍に徴兵された際は、アメリカ空軍バンドで指揮とアレンジも担当した。兵役の後、ジュリアード音楽院ピアノを学び、在学中よりニューヨークのクラブでジャズ・ピアニストとして活動、アレンジャーとしての頭角も現して行く。
その後、ロサンゼルスでフランツ・ワックスマン、バーナード・ハーマン、アルフレッド・ニューマンのオーケストレーターを務め、ピアニストとしてジェリー・ゴールドスミス、エルマー・バーンスタイン、ヘンリー・マンシーニの映画音楽録音にも参加している。これまでにアカデミー賞5回(ノミネート49回)、ゴールデン・グローブ賞4回、グラミー賞22回受賞。
ジョージ・ルーカスとの出会い
1974年、スティーヴン・スピルバーグ監督は「続・激突!カージャック」の音楽にジョン・ウィリアムズを起用。以降40年間、自ら監督の作品では必ず彼を作曲家として起用している。そしてウィリアムズをジョージ・ルーカスに紹介したのが、スピルバーグなのである。ルーカスが、1976年に「スター・ウォーズ」の音楽をウィリアムズに依頼したのは、スピルバーグの熱心な推薦があったからだという。当時、ルーカスは1930年、40年代のクラシックなハリウッド・スタイルの音楽を探しており、ウィリアムズの名前があがった時、彼のことはジャズ・ピアニストだと思っていたので、正直なところ心配だった。「本当? 彼は本当にコルンゴルドやアルフレッド・ニューマンのようなクラシカルな音楽が書けるの?」とスピルバーグに念をおして尋ねると、「もちろん。彼はパーフェクトだよ!」という答えが返ってきた。
ルーカスはインタヴューで、「『スター・ウォーズ』の90パーセントは音楽だ。オールド・ファッションなスタイルで、サイレント・フィルムのように、音楽がストーリーを語っているようなものなんだ。感情は、映像と同時に音楽を通して観客へ伝えられていく」と語っている。1976年の、ウィリアムズとの最初のコラボレーションでは、「〈サイレント・フィルムだと思って作曲をして欲しい〉と注文を出し、彼はその意味を充分に理解してくれた」とも話している。