バンドという形式が柔軟になった〈新しい合奏〉
その後、2022〜2024年は、現在へと繋がるようなライブシーンが、少しずつ整ってきた時期だ。シティポップ以後、フォーク以後、クラブ以後の、新しいバンド像が次々と生まれはじめた3年間。以下のラインナップを見ると、バンドという形式自体がかなり柔軟になっているのが分かるはずだ。
<vol.24>Bearwear/Bialystocks/浦上想起・バンド・ソサエティ
<vol.25>えんぷてい/幽体コミュニケーションズ/離婚伝説
<vol.26>ANORAK!/Ålborg/THE ティバ
<vol.27>HOME/Salmon Pink/Till Yawuh
<vol.28>シャッポ/野口文/Half Mile Beach Club
それぞれシティポップ、インディロック、フォーク、ソウル、サイケ、クラブミュージック、宅録的感覚などを横断している新しい感性のバンドがズラリと並ぶ。これは単純にギターバンドが戻ってきたというより、もっと複雑な状況だ。〈バンド〉という伝統的な器を使いながら、実際には上記のような感覚が混ざりあった、新しい合奏表現が現れていた。

特にvol.26(2024年2月8日)の回は、鮮烈だった。ANORAK!、Ålborg、THE ティバという3組ともがギターバンドの素朴な衝動を持ち合わせながら、しかし軽やかで、エモ的なムードを瑞々しいアンサンブルでまとめあげる才能に満ちていた。
まだ名前のついていない次の気配を確かめる現場
そしていよいよ2025年以降は、ラインナップから香り立つ質感が、さらに現在へと地続きだ。まさに今ブレイクの足掛かりをつかもうとしている人たち、その種を蒔いている人たちと言えるだろう。
<vol.29>aryy/the bercedes menz/トップシークレットマン
<vol.30>烏兎-uto-/Wepeg/眞名子新
<vol.31>cephalo/SleepInside/与謝野
<vol.32>Meg Bonus/sysmo/Veg
<vol.33>cambelle/さらば帝国/メコン
<vol.34>HUGEN/Manda/brooks
ここで見えてくるのは、2020sのオルタナティブロックからはじまり、ハイパーポップ、宅録、エレクトロニック、ラップ以後のポップス、シンガーソングライター、バンドが渾然一体となりつつある状況だろう。2025〜2026年の〈NEWWW〉は、ジャンル単位でシーンを切り取るというよりも、まだ名前のついていない次の気配を、現場で確かめるような場になりつつある。〈この音楽が、生身の声や音圧、観客の反応の中でどんな体験に変わるのか〉という感触を確かめる場所。今の〈NEWWW〉は、ストリーミング上の点を、現場の線へ変える企画になっているということだ。
異質なアーティストの同居が示す音楽の広がりと新しい聴き方
実際に忘れがたいのは、vol.29(2025年3月24日)の回。aryyは、ハイパーポップ以降の感覚やエモラップ的な質感を持ちながら、どこか内省的なポップスとしても響く存在である。一方、the bercedes menzには、オルタナティブロックやインディロックの文脈を引き受けながら、そこに痙攣したような歪みを加えていく感覚がある。そしてトップシークレットマンは、パンクやロックの衝動を、過剰なテンションとユーモアを交えながら放出するバンドだ。


Photo by Shimizu Soutarou
この3組は、一見すると同じジャンルの中にいるわけではない。むしろ、聴こえてくる音も、身体の動かし方も、ステージ上での佇まいもそれぞれ異なる。しかしだからこそ、同じ場に並ぶことで、2020年代半ばのインディペンデントな音楽がどれほど多方向に広がっているのかが見えてきた一夜だったと記憶している。内省的な電子音楽、ギターロックの更新、パンク的な爆発力。それらが別々のシーンとして分断されるのではなく、ひとつのライブハウスの中で接続されていたのだ。

Photo by Shimizu Soutarou
〈NEWWW〉の面白さはまさに、そこにある。似た音楽を並べて安心感を作るのではなく、異なる質感のアーティストを同じ場に置くことで、観客に新しい聴き方を促していく。音源だけを追っていると別々の点に見えていたものが、ライブの場ではひとつの時代の空気としてつながって見える。そのエディトリアル感覚こそ、2025年以降の〈NEWWW〉が持っている大きな価値だろう。