スペースシャワーネットワークが運営する東京・渋谷のライブハウスWWW。2010年のオープン以降、〈ダブダブ〉の略称で親しまれ、若手や中堅を中心に幅広いアーティストが出演、海外ミュージシャンの来日公演の会場としてもお馴染みで、今や渋谷という街を代表するライブハウスとして定着している。特にエッジーでインディペンデントな音楽のファンは、一度は足を運んだことがあるだろう。
そんなWWWが2014年8月から開催してきたレギュラーイベントが、〈NEWWW〉だ。ブレイク前の新人を中心にスタッフが独自の視点でブッキングしてきた〈NEWWW〉は、1,000円というチケット代の安さも魅力のひとつで、多様なオーディエンスへ最新の音楽に生で触れる機会を提供してきた。最新回のvol.34は2026年6月23日(火)に開催、HUGEN、Manda、brooksが出演する。
そこでMikikiは、〈NEWWW〉の12年の歴史をアーカイブする記事をお届けしよう。2014~2019年を振り返った記事に続いて、後編として2020~2026年の開催回を文筆家つやちゃんに論じてもらった。 *Mikiki編集部
ワンマンではない、何が起こるかわからない対バンイベント
好きなアーティストのワンマンライブには行く。知っている出演者が多いフェスにも行く。けれど、まだよく知らない名前が並んだ対バンイベントにふらりと足を運ぶことは、以前より少し難しくなっているのかもしれない。音源はすぐ聴けるし、SNSを見れば雰囲気もわかる――私たちはライブに行く前に、多くのことを判断できるようになった。その便利さの一方で、何が起こるかわからない空間に身を置く機会が、少しずつ減ってきてはいないだろうか。
ただ、2020年代に突入して以降、かつてないほどにインディペンデントシーンが隆盛を見せる中で、1,000人規模以上のライブハウスやスタジアム、フェスだけでは全体像をつかみづらくなったのも確かだ。そんな中、渋谷WWWのレギュラー企画〈NEWWW〉が続けてきたことは、いま改めて振り返られるべきだろう。1,000円という破格のチケット代で、まだWWWでワンマンを行っていない新しい才能を並べるこの企画は、単なる新人紹介イベントではない。2020年代のインディペンデントシーンが、どのようにリアルに変化していったのかを現在進行形で知ることのできる、ひとつのアーカイブでもあると思う。
異種格闘技が繰り広げられる現代ポップの実験場
その後半史は、皮肉にも、ライブハウスという場所そのものが大きく揺らいだ時期から始まる。2020年5月に開催が予定されていたvol.19は、コロナ禍の影響で延期となった。新しい音楽と出会う場所が一度止まったあと、〈NEWWW〉は翌2021年から再び精力的に開催を重ねていく。vol.20〜23の4回は、次のようなラインナップだった。
<vol.20>illiomote/カメレオン・ライム・ウーピーパイ/a子
<vol.21>YONA YONA WEEKENDERS/浪漫革命/E.scene
<vol.22>Gokou Kuyt/SARA-J/Wez Atlas
<vol.23>Tok10/DENYEN都市/SHO-SENSEI!!
ご覧の通り、ここにはバンドだけでなく、ラップ、R&B、オルタナティブポップ、宅録以降のソロ表現が混在している。〈NEWWW〉が従来のインディバンド紹介にとどまらず、SoundCloud以降、ストリーミング以降、SNS以降の新しいポップ表現を捉えようとしていたことが見えてくるだろう。言い換えれば、ライブハウスという場所そのものが、ソロアーティスト、ラッパー、シンガーソングライター、トラックメイカー的な表現までを含む〈現代ポップの実験場〉へと変わりつつあったのだ。

なかでも筆者の記憶に強く残っているのは、vol.22(2021年7月23日)の回。当時、SoundCloudラップのシーンを席巻していたGokou Kuytのパフォーマンスは激しい熱狂を生んでいた。そこに、SARA-JとWez Atlasの自然体でしなやかな表現がぶつかることで、良い意味で統一感のない、異種格闘技的なキュレーションになっていた。コロナ禍の混乱の中で、自由な才能が次々と現れてくるような感覚を強くした回だった。
バンドという形式が柔軟になった〈新しい合奏〉
その後、2022〜2024年は、現在へと繋がるようなライブシーンが、少しずつ整ってきた時期だ。シティポップ以後、フォーク以後、クラブ以後の、新しいバンド像が次々と生まれはじめた3年間。以下のラインナップを見ると、バンドという形式自体がかなり柔軟になっているのが分かるはずだ。
<vol.24>Bearwear/Bialystocks/浦上想起・バンド・ソサエティ
<vol.25>えんぷてい/幽体コミュニケーションズ/離婚伝説
<vol.26>ANORAK!/Ålborg/THE ティバ
<vol.27>HOME/Salmon Pink/Till Yawuh
<vol.28>シャッポ/野口文/Half Mile Beach Club
それぞれシティポップ、インディロック、フォーク、ソウル、サイケ、クラブミュージック、宅録的感覚などを横断している新しい感性のバンドがズラリと並ぶ。これは単純にギターバンドが戻ってきたというより、もっと複雑な状況だ。〈バンド〉という伝統的な器を使いながら、実際には上記のような感覚が混ざりあった、新しい合奏表現が現れていた。

特にvol.26(2024年2月8日)の回は、鮮烈だった。ANORAK!、Ålborg、THE ティバという3組ともがギターバンドの素朴な衝動を持ち合わせながら、しかし軽やかで、エモ的なムードを瑞々しいアンサンブルでまとめあげる才能に満ちていた。
まだ名前のついていない次の気配を確かめる現場
そしていよいよ2025年以降は、ラインナップから香り立つ質感が、さらに現在へと地続きだ。まさに今ブレイクの足掛かりをつかもうとしている人たち、その種を蒔いている人たちと言えるだろう。
<vol.29>aryy/the bercedes menz/トップシークレットマン
<vol.30>烏兎-uto-/Wepeg/眞名子新
<vol.31>cephalo/SleepInside/与謝野
<vol.32>Meg Bonus/sysmo/Veg
<vol.33>cambelle/さらば帝国/メコン
<vol.34>HUGEN/Manda/brooks
ここで見えてくるのは、2020sのオルタナティブロックからはじまり、ハイパーポップ、宅録、エレクトロニック、ラップ以後のポップス、シンガーソングライター、バンドが渾然一体となりつつある状況だろう。2025〜2026年の〈NEWWW〉は、ジャンル単位でシーンを切り取るというよりも、まだ名前のついていない次の気配を、現場で確かめるような場になりつつある。〈この音楽が、生身の声や音圧、観客の反応の中でどんな体験に変わるのか〉という感触を確かめる場所。今の〈NEWWW〉は、ストリーミング上の点を、現場の線へ変える企画になっているということだ。
異質なアーティストの同居が示す音楽の広がりと新しい聴き方
実際に忘れがたいのは、vol.29(2025年3月24日)の回。aryyは、ハイパーポップ以降の感覚やエモラップ的な質感を持ちながら、どこか内省的なポップスとしても響く存在である。一方、the bercedes menzには、オルタナティブロックやインディロックの文脈を引き受けながら、そこに痙攣したような歪みを加えていく感覚がある。そしてトップシークレットマンは、パンクやロックの衝動を、過剰なテンションとユーモアを交えながら放出するバンドだ。


Photo by Shimizu Soutarou
この3組は、一見すると同じジャンルの中にいるわけではない。むしろ、聴こえてくる音も、身体の動かし方も、ステージ上での佇まいもそれぞれ異なる。しかしだからこそ、同じ場に並ぶことで、2020年代半ばのインディペンデントな音楽がどれほど多方向に広がっているのかが見えてきた一夜だったと記憶している。内省的な電子音楽、ギターロックの更新、パンク的な爆発力。それらが別々のシーンとして分断されるのではなく、ひとつのライブハウスの中で接続されていたのだ。

Photo by Shimizu Soutarou
〈NEWWW〉の面白さはまさに、そこにある。似た音楽を並べて安心感を作るのではなく、異なる質感のアーティストを同じ場に置くことで、観客に新しい聴き方を促していく。音源だけを追っていると別々の点に見えていたものが、ライブの場ではひとつの時代の空気としてつながって見える。そのエディトリアル感覚こそ、2025年以降の〈NEWWW〉が持っている大きな価値だろう。
ライブハウスでは今も未来を発見できる
一方こうしてラインナップを振り返ってみると、過去にさかのぼるほど、現在では広く知られるようになったアーティストの名前がいくつも見えてくる。つまり〈NEWWW〉は、その時点で話題になっているアーティストを後追いで紹介してきた企画ではなく、まだ評価が固まりきる前の段階で、その後のシーンを担う可能性のある才能を見つけ出してきた場だったということだ。数年後に振り返ったとき、出演者の名前が別の意味を帯びて見えてくる――その事実こそ、ブッキングの目利きの確かさを物語っている。
あるいは、若手やブレイク前のアーティストにとっても、WWWという場でパフォーマンスできることは大きな意味を持つはずだ。通常のライブハウスとは異なるキャパシティ、ステージの広さ、音響、照明、そして観客との距離。その環境に立つことで、自分たちの音楽がどの程度のスケールで響くのか、どの部分が届き、何がまだ足りないのかを実感できる。〈NEWWW〉の意義は、観客に新しい才能との出会いを提供しているだけではない。アーティストにとっても、次のステージへ進むための経験値を得られる機会を、継続的に作り続けているところにあるのだろう。
ワンマンライブだけを追っていては見えないものがあるし、フェスの大きなステージだけでは拾いきれない熱というものが、確かにある。対バンやブッキングイベントの面白さとは、知らなかった名前が、その夜を境に自分の中で意味を持ちはじめる点にあるのだろう。その瞬間を、〈NEWWW〉は何度も作ってきた。この12年、そして2020年以降の後半史は、ライブハウスが今なお未来を発見できる場所であることを示す、確かな記録だ。
〈NEWWW〉の歴史
vol.1 2014年8月6日 Awesome City Club/Yogee New Waves/Aun beatz
vol.2 2014年9月16日 トリプルファイヤー/藤井洋平 & The VERY Sensitive Citizens of TOKYO/Taiko Super Kicks
vol.3 2014年10月14日 吉田ヨウヘイgroup/YankaNoi/うてなキャンプ
vol.4 2015年1月21日 SANABAGUN./TOKYO HEALTH CLUB/Have a Nice Day!
vol.5 2015年4月15日 Suchmos/踊る!ディスコ室町/思い出野郎Aチーム
vol.6 2015年6月11日 D.A.N./never young beach/LUCKY TAPES
vol.7 2015年8月20日 DYGL/PunPunCircle/余命百年
vol.8 2015年11月20日 D.A.N./Have a Nice Day!/never young beach/Suchmos/トリプルファイヤー ※周年特別回
vol.9 2016年1月28日 MARQUEE BEACH CLUB/Gateballers/メシアと人人
vol.10 2016年4月27日 Klan Aileen/PAELLAS/MIRROR MOVES
vol.11 2016年7月26日 あっこゴリラ/CHAI/ヘンショクリュウ
vol.12 2016年10月12日 WONK/KIANO JONES/TOYOMU
vol.13 2017年6月15日 バレーボウイズ/MONO NO AWARE/カネコアヤノ(バンドセット)
vol.14 2017年8月3日 evening cinema/unizzz.../South Penguin
vol.15 2018年5月21日 odol/STEPHENSMITH/TENDRE
vol.16 2019年2月6日 I Saw You Yesterday/ARSKN/betcover!!
vol.17 2019年2月19日 さとうもか/ジオラマラジオ/中村佳穂
vol.18 2019年8月5日 Wool & The Pants/んoon/木
vol.19 2020年5月20日 Johnnivan/maco marets/YONA YONA WEEKENDERS ※公演延期
vol.20 2021年4月18日 illiomote/カメレオン・ライム・ウーピーパイ/a子
vol.21 2021年4月24日 YONA YONA WEEKENDERS/浪漫革命/E.scene
vol.22 2021年7月23日 Gokou Kuyt/SARA-J/Wez Atlas
vol.23 2021年11月14日 Tok10/DENYEN都市/SHO-SENSEI!!
vol.24 2022年10月19日 Bearwear/Bialystocks/浦上想起・バンド・ソサエティ ※公演延期
vol.25 2023年10月2日 えんぷてい/幽体コミュニケーションズ/離婚伝説
vol.26 2024年2月8日 ANORAK!/Ålborg/THE ティバ
vol.27 2024年4月24日 HOME/Salmon Pink/Till Yawuh
vol.28 2024年10月9日 シャッポ/野口文/Half Mile Beach Club
vol.29 2025年3月24日 aryy/the bercedes menz/トップシークレットマン
vol.30 2025年5月27日 烏兎-uto-/Wepeg/眞名子新
vol.31 2025年7月30日 cephalo/SleepInside/与謝野
vol.32 2025年9月29日 Meg Bonus/sysmo/Veg
vol.33 2026年3月16日 cambelle/さらば帝国/メコン
LIVE INFORMATION
NEWWW vol.34

2026年6月23日(火)東京・渋谷 WWW
開場/開演:18:30/19:30
出演:HUGEN/Manda/brooks
前売:1,000円(税込/オールスタンディング/ドリンク代別)
e+:https://eplus.jp/newww-vol34/
LivePocket:https://livepocket.jp/e/newww_vol34
問い合わせ:WWW 03-5458-7685
Flyer design by YOKKE
PROFILE: HUGEN

2024年始動。TP(ボーカル/PC)を中心に構成される音楽プロジェクト。エレクトロニックミュージックを軸に、民族音楽や民謡などの要素を交えたオルタナティブな楽曲を制作している。縁や愛、優しさ――身近な感情や風景を、気取らずに言葉に乗せて歌うTPの歌詞も特徴のひとつ。結成2年目にして〈FUJI ROCK FESTIVAL ’25〉の〈ROOKIE A GO-GO〉に出演。2026年はオーストラリアのフェス〈RISING〉や〈Vivid Sydney〉に出演。NHK Eテレドラマ「聞けなかった あのこと」では、寺尾紗穂との共作で主題歌も手がけた。ライブ活動や制作を精力的に展開中。
PROFILE: Manda

〈Manda〉とは、本質を有するものや心理を表すものを意味する。日本語では〈醍醐〉といい、発酵の最上級を指し、〈これ以上ない〉という比喩として使われる。
横浜・東京を中心に活動中。メンバーそれぞれが異なる風土・文化のアイデンティティを持ちながら、日本で育つ。ソウルフルで攻撃的なソロと、エスニックでありながら境界のないグルーヴを得意とする。それとは対照的に、社会/他者との接続を憂う静的な歌詞が特徴。活動2年目で〈りんご音楽祭〉や〈森波〉をはじめ、様々な国内イベントに出演。2025年には〈FUJI ROCK FESTIVAL ’25〉の〈Gypsy Avalon〉ステージに出演。2025年8月1日に1st EP『Green Eye』をリリース。
PROFILE: brooks

2024年から活動開始。リズム&ブルースやサイケデリックロックをベースに良質なサウンドを追求する。2025年9月に1stアルバム『maison brooks』をリリース。また〈りんご音楽祭2025〉にも出演。