トークによって導かれる作曲家たちのポートレート
前作『Transcription』から約3年半ぶりとなる清塚信也の新作アルバム『KIYO-LOGUE』がリリースされる。
「クラシック音楽を中心にしたアルバムをそろそろ出したいなと、ずっと考えていたのですが、どんな形でどんな作品を選ぶか、それがけっこう難しかったので、いつもコンサートで演奏しているように私自身の語りを入れたらどうだろうと、ようやくアイディアがまとまって、このアルバムにたどり着いたという感じです」
興味深いのは、作曲家をふたり一組にして、それぞれの作品を並べながら、歴史的にもバロック時代からロマン派、そして近代までと、自然に音楽史の流れをたどって行く構成になっていること。
「ふたり一組にする、というのが今回のアルバムの大きなポイントです。それによって作曲家それぞれの個性が分かるのと同時に、時代の雰囲気も変わっていくのを楽しんで頂けるかなと思います」
その組み合わせは、バッハとスカルラッティ、シューマンとブラームス、ショパンとリスト、ショパンと滝廉太郎、ドビュッシーとガーシュウィン、その他にシューベルトの“即興曲 作品90の2”に加え、清塚自身の作品が2曲という構成となっている。
「シューマンとブラームスの関係は単なる先輩と後輩ではなく、ドイツ・ロマン派の中心となったふたりの出会いがその後の音楽界にも大きな影響を与えた。とても重要な出来事だっただろうと感じています。そして滝廉太郎を入れたのは意外かもしれませんが、ショパンも滝も若くして結核で亡くなったという共通性のほかに、病気で亡くなる若い作曲家の想いを伝えたい気持ちもあったからです。滝の書いた“憾(うらみ)”はその音楽のなかに、自分が果たせなかった想いを本当に詰め込んだ作品で、特に最後の音は低い〈レ〉の音なのですが、これほど想いのこもった一音は他の作曲家にはないだろうと震えますね」
清塚はこの作品を知った後、実際に滝の地元である大分県竹田市を訪問して、自筆譜に触れたりしつつ、いつか録音したいと考えていたそうである。
もちろん〈LOGUE〉=語りの部分も分かりやすく、かつ楽しめるのだが、その語りの後ろでBGM的に流れている作品も、それぞれの作曲家に関連する作品であったりするので、ぜひ注意して聴いてみて欲しい。そして清塚自身の作品“Serendipty”“人生の光”が優しく全体を閉じる。ちょっと短めのコンサートを味わった気分になれる新作である。
