BUCK-TICKが1993年にリリースした7thアルバム『darker than darkness -style93-』が、このたびアナログ盤でリイシューされた。それまでの音楽性から大きく変革した6thアルバム『狂った太陽』とセルフカバー盤『殺シノ調べ This is NOT Greatest Hits』を経たバンドは、さらなる変化を求めて今作へと辿り着く。よりヘヴィでマニアックな表現を詰め込んだ傑作を、李氏(音楽ZINE「痙攣」編集長)にレビューしてもらった。 *Mikiki編集部
90年代前半、激変を繰り返すBUCK-TICK
全く別のバンドに生まれ変わったのではないか。成長。飛躍。進化。革新。言い方はなんでもいいが、とにかくBUCK-TICKのこれまでのディスコグラフィと全く異なるのが今回アナログ盤が再発された『darker than darkness -style 93-』だ。これまでパンク〜ニューウェイブの流れを汲んだ音楽性を展開してきた彼らが、90年代のグランジ〜オルタナの潮流を積極的に吸収したことで、リズムやサウンド、アンサンブルのあり方に至るまで、バンドを根本から改造するかのような変化を遂げたのだ。
その変化を確かめたいのなら、まずは“青の世界”を聴けばいい。大音量で鳴り響くエンジン音のような冒頭のギターソロからしてただ事ではないし、リズム隊の演奏もギターリフの大鉈を振るうようなグルーヴを意識したタメを効かせたものに変化している。櫻井敦司による艶やかなボーカルや随所に差し込まれた鍵盤などを通して過去作に連なるゴシックな洒脱さをキープしながら、ここで鳴らされる音はこれまでのどの曲よりも低く、重たい。
BUCK-TICKは『狂った太陽』『殺シノ調ベ』といった過去作ではジーザス・ジョーンズなどの影響下で、同時代のマッドチェスターにも通じるような厚みを持ったサイケ感覚をパンク〜ニューウェイブ由来のゴシックな意匠の上で表現してきた。『darker than darkness -style 93-』における激変は、元々のダークなサイケデリアにグランジ〜オルタナ由来の重低音とグルーヴを加えたものと整理することもできる。彼らのこの試みはバンドブームの余波の続く90年代前半の国内シーンにあって極めて先駆的だった。
そして櫻井敦司によるドラッギーで誇大妄想的なビジョンの裏に強烈な死の予感を忍ばせた歌詞が、当時のニルヴァーナやアリス・イン・チェインズといったグランジ勢のネガティビティと呼応しているのも見逃せない。様々な意味でこのアルバムは〈日本のオルタナティブロック〉の先駆けとも言える傑作だったのだ。
しかし、単に今作をグランジ化、オルタナ化したアルバムとも言い切れないところが本当に面白いところだ。例えばOn-Uサウンドを経由してダブレゲエ化したゴシックロックとも言うべき音響に達した“キラメキの中で...”を聴けばわかるように、『darker than darkness -style 93-』におけるBUCK-TICKの音楽的関心は実に広い。ゴシックフェイクジャズ歌謡“誘惑”から、和製シンセポップの屈指の名曲“ドレス”に至るまで、バンドの折衷主義的スタイルは今作においても遺憾なく発揮されている。さらにこれら多岐にわたる音楽性をまとめ上げる上では作品全体の薄汚れたようなローファイなプロダクションは重要で、この意味で『狂った太陽』以降サウンドエンジニアを手がける比留間整の果たした役割にも改めて注目すべきだ。
