DJ KRUSHのニューアルバム『TOKYØHUM』が、2026年7月22日(水)にCD、2枚組LP、カセットテープの各フォーマットでリリースされる。すでに配信で聴くこともできる今作だが、フィジカルとして作品を手に取ることで、彼のヒップホップDJとしての強いこだわりをより一層深く感じられるはずだ。
そうしたこだわりは、当然アルバムの収録曲でも貫かれている。世界を股にかけて活躍するDJ KRUSHは〈東京〉という街をどう見ているのか。『TOKYØHUM』の核心に迫るべく、本人に話を訊いた。
なお、DJ KRUSHへのインタビューと共に、今作のアートワークを手がけたB-BOY彫刻家の小畑多丘からの独占コメントも掲載している。制作途中の貴重な写真と合わせて、ぜひチェックしてもらいたい。 *Mikiki編集部
デカイ東京をマンホールの下から見る
──前作『再生 -SAISEI-』から約2年ぶりの新作アルバムですが、この間に心境の変化はありましたか?
「国内外のステージに立って音を鳴らし続ける日々と、どう進化すればいいのか常に考えながら制作に没頭していたよね。アルバムのイメージは絞れてきていたから、国内外で音を吐き出しつつ、お客さんの反応を見て刺激をもらいながら、それを制作の糧にしたところもあるかな。『再生 -SAISEI-』は前の事務所から独立して一発目のアルバムだったからちょっと力が入ってた部分もあったけど、それからチームの体制も少しずつ整ってきて。今作は次へ行ってみようという前向きな気持ちで制作ができたね」
──『TOKYØHUM』というアルバムタイトルですが、これはどういった意味ですか?
「造語みたいなもんでさ。東京という都市の心音、鼓動、地下で渦巻いてる何か、すげえパワーあるぞみたいな。例えば渋谷を闊歩しながら、ネオンを浴びてモニターを見てワーッと騒ぐのではなく、そうした賑やかな街をマンホールの下から見てるような感じというか。その目線の方が俺には合ってたし、昔からそうだったしね。そういったイメージをどう言葉で表現しようかと思ったときに、〈HUM〉っていう言葉が語呂としても良かったんだよね」
──アルバムを作る前から東京をイメージしていましたか?
「曲を作りながらイメージするようになったかな。ビートを作っていたとき、よくよく考えてみたら東京をベースにしたアルバムを作ったことがなかったなと思って。この数年で東京へやってくる海外の人は増えているし、改めて自分なりに東京を考えてみたというか。でも、みんなが見てる東京をそのまま表現してもしょうがないからね。そこはDJ KRUSHとしてちょっと潜ったダークな空気感を出した方がいいかなと」
──具体的に東京ってどんな街だと思いますか?
「めちゃくちゃデカイよね。過剰な情報と孤独が同居する場所だし、冷徹だけど、常に底知れぬエネルギーがうごめいてる。俺はこれまで150以上の国に行ってるのね。ゆっくりは見られてないけど、いろんな都市を体験してきてもやっぱり東京はデカイ。油断するとすぐに埋もれちゃうし。その中でやっていくのは大変だけど、やりがいはある街ではあるかな」
──毎年ヨーロッパツアーもされていますよね。今作を聴いて、確かに世界を意識した内容になっているなと感じました。
「音的にUK寄りのベース系というか、ちょっと太い方に寄っていったから、そこにパワーのあるラップを乗せたいと思ったときに、しばらく海外勢とやっていなかったからやってみようかなと。そこで腰の据わった骨太の、向こうではレジェンド級で存在感のある人たちを選んだんだ」

UK、アフリカ、日本から招いた客演たち
──フィーチャリングされた3名のアーティストですが、まずはUKよりリコ・ダン。ロンドンを拠点にする老舗のグライムクルー、ロール・ディープの中心人物ですね。
「あの辺のMCたちの図太い声質も含めて、存在感があって経験を積んでる人とやってみたかったんだよね。それで絞っていったらリコ・ダンになった。今回コラボした“WARN DEM”は、実はバックトラックが最初のものとは全然違っていて。始めに数曲渡して、そこから彼が選んだトラックに詞を乗せてもらったんだけど、いざあのぶっとんだラップが乗っかってきたら自分で作った元のトラックがイマイチに聴こえてしまって。ラップがバッチリだったからこそ、もっともっと良くしたいと思って全部差し替えたんだ。
元のトラックは今よりも暗い感じだった。フロアでかけてもドンとはならない感じ。だけどこれだけ太い声で内容も面白いなら、フロア寄りにしてベースをもっとぶっとくすればいいなと思って」
──“I WOKE UP FEELING FUZZ”でフィーチャリングしているのはMCヤラーというケニアの女性ラッパーですが、今回その存在を初めて知りました。
「今まで女性ラッパーと曲を作ったことがあまりなかったから、現場を手伝ってくれているスタッフに相談したらMCヤラーが候補に上がってきた。それで曲を聴いたらトラックがダークで自分に近い温度を感じたから、彼女なら間違いなくいけると思って声をかけたんだよね。
上がってきたラップを聴いたときは、圧倒的なエネルギーを感じた。〈アフリカでは子供を教育する教師にきちんとお金が支払われていない〉というような内容のリリックなんだけど、最初はもっと〈センセイ、センセイ〉と連呼していて。そこに少し違和感を感じたから彼女とやりとりして、最終的には今の形に落ち着いたっていう。彼女とはいつかもっとヘヴィな曲もやってみたいなと思っている」
──そして日本からはELIMが“大烏 -OoKARAS-”に参加しています。
「彼のオリジナル曲が好きで、DJでかけていたんだよね。鋭く研ぎ澄まされたリリシズムで世界観も面白いし、他とは違うなと思っていた。初めてライブハウスで会って挨拶をしたときに〈何か一緒にできたらいいね〉と話をして、そこから日が経って今回改めて声をかけてみたんだ。彼は映像制作もしていて、最初は俺のインスト曲の映像を作りたいと言ってくれてたんだけど、まずはラップで参加してほしいと思って。俺のダークな世界観を分かってくれてるから、タイトルからリリックまで全部彼に任せたけど、まったく問題なくやれたね」
