密かに込めた人間愛

 昨年、デビュー35周年を迎えたT-SQUAREのフロントマンとしても大活躍中、人気サックス・プレイヤーの伊東たけしが7年振りにソロ・アルバムをリリース。そのタイトルが『Favorites』とは実に潔い。「直球です」と笑う彼は、まず、純粋に好きな曲を演奏したいと思い、最初に浮かんだのがブラジルのウエディング・ソングといわれている名曲だった。

 「自分の“セテンブロ”が欲しいと思ったんですよ。でも、サックスや新しいEWIでプレイするのはどうもピンと来なくて、それでオールドEWI使ってみたら音の温かさと透明感が出せてね。“エスターテ”も楽器がヒントになって選んだ曲のひとつです」

伊東たけし 『Favorites』 Village(2014)

 楽曲によってサックスとEWIを使い分けることも含め、伊東が描いた音世界やイメージを、前作同様、安部潤(キーボード)がしっかり受け止め見事にアレンジした。同じ福岡出身だからか、

 「彼とは好きなモノが似ているんです。お祭り好きだし(笑)。改めて本当にいい奴と出逢ったなあと感じています」

 新作ではスティーヴィー・ワンダー、ハービー・ハンコック、タワー・オブ・パワー、ジャズのスタンダード・ソングなど様々な曲を取り上げている他、伊東のオリジナルも収録。ブラジル&ラテン系のナンバーが多いのはポイントのひとつである。

 「中学生の頃から愛聴していましたからね。あのウキウキしちゃうリズムや、ボサ・ノヴァの持っているモジュレーション(転調)が凄く好きなんです。フワフワっと動く世界観にずっと惹かれ続けているんですよ」

 自分のお気に入り曲を大好きな仲間とプレイした時間を“楽しくてねえ”と喜ぶ姿は非常に無邪気。

 「何が嬉しいって、この7年(東京・丸の内の)コットンクラブで年に1回ライヴを行ってきたメンバーと一緒に録音出来たことです。2回目のライヴ以降、メンバーとして欠かせなくなったキューバ出身のルイス・バジェ(トランペット)もかなり良い味を出してくれていますよ」

伊東たけしメロウ・マッドネス・セプテットによる2014年のパフォーマンス映像

 とにかく、聴いて気持ちよくなってもらえたらそれが1番!と笑顔でキッパリ。

 「このアルバムがBARで流れているとしますよね。そうしたら、いつの間にか隣人と波長が合っちゃった、なんてことが起こるといいなと思っています。スウ~と浸透して心が開いていく作品にしたかったし、愛を語り合う時に邪魔にならないサウンドを残したかった」

 今年の3月に還暦を迎えたものの、年齢は特に意識していない。ただ、より自分に素直になっているという彼は新作にさり気なく、しかしながら本気で“ラヴ&ピース”の想いを込めたのである。

 


LIVE INFORMATION
新作『FAVORITES』発売記念! 伊東たけし Mellow Madness Septet/Special Eve Night!
2014年12月24日(水)兵庫・神戸 チキンジョージ
開演:19:00
出演:伊東たけし(アルト・サックス)/宮崎隆睦(サックス)/田中充(トランペット)/安部潤(key)/養父貴(ギター)/川崎哲平(ベース)/坂東慧(ドラムス)
https://www.tsquare.jp/