豪華な面々で祝う35thアニヴァーサリー

 昨年2013年、デビュー35周年を迎えたT-SQUARE。アニヴァーサリー・イヤーであった昨年はT-SQUARE SUPER BANDによる記念盤『Smile』に始まり、さらにゲストを加えた日比谷野音と大阪フェスティバルホールのコンサート、過去全作品リマスターBOX『T-SQUARE 35th Anniversary THE BOX 2013』のリリース、T-SQUARE plusとしてのアルバム『History』、レギュラー・メンバーによるチキンジョージ5days、大晦日のカウントダウン・コンサートと精力的な活動を展開した。そしてこの度、アニヴァーサリー・イヤーのハイライトとなった大阪フェスティバルホールのコンサートを収録した映像作品「Festival」と、年が明けてレコーディングされた新作『NEXT』が届けられた。まずは35周年アニヴァーサリー・イヤーを締めくくる映像作品「Festival」からご紹介しよう。

T-SQUARE 『T-SQUARE 35th Anniversary “Festival”』 Village(2014)

 

安藤正容「前回の30周年から、あっという間でしたね。あの時は〈次は5年後だね〉なんて半分冗談で言ってたんだけどね。でも前回あれだけ派手にやってしまったので、今回はその上を行かなくちゃというプレッシャーはありましたし、とにかく豪華なコンサートにしなくちゃと気合いを入れてました。ただ、これまでに大抵のことはやってしまっているので、企画を練るのが難しいんですよ。そこで閃いたのが、スクエアの旧メンバーはもちろん、スクエアと関係のあった外部アーティストをお招きすることなんです。アルバム『虹曲』(2012年作品)のレコーディングで外部からゲストを招いたとき、とても刺激を受けましたし、楽しかったというのが一つのきっかけではありましたね」

伊東たけし「いろいろ案はあったんだけど、最終的にマリーンのヴォーカル、オットットリオで安藤と一緒にやってるギターの野呂一生と是方博邦、ブラス・セクションには村田陽一(トロンボーン)と田中充(トランペット)にゲストとして入ってもらったんだ。ブラス・セクションはうちの宮崎隆睦(サックス)がまとめ役を兼ねている。それにしてもマリーンはエンターテイナーとして素晴らしい力量を持っているよね。“It’s Magic”という曲が僕たちやマリーンはもちろん、お客さんたちにとっても大きな存在の曲なんだと改めて感じましたよ。

安藤「ギタリストのゲストは日比谷野音では山本恭司とDIMENSIONの増崎孝司にお願いしたんですが、大阪フェスティバルホールで出演してもらったのは野呂一生と是方博邦。今回スクエアのメンバーとしてのギタリストは僕一人なんですが、僕としてはゲスト・ギタリストは大歓迎なんですよ。なぜなら同業者のプレイや使用機材なんかにもの凄く興味ありますから……(笑)。だって3人のギタリストが順番に曲のメロディを弾く箇所があるんですが、それぞれ個性豊かで面白いですよ。是ちゃんは独特の味のある是方節だし、野呂くんが弾いたらスクエアの曲なのにカシオペアっぽく聞こえちゃう(笑)。それから、マリーンとは昔よくジャズ・フェスなんかで一緒になることはありましたけど、意外にも共演することはあまりなかったんです。それがまた縁があって、彼女のアルバム『INITIAL』(2011年作品)を僕がプロデュースしたんです。これもこの5年間の出来事ですから、彼女は今回のゲストとしてとても旬なアーティストだと思います」

河野啓三「前回の30周年を経験しているので、今回は緊張しながらも楽しむ余裕がありました。鍵盤奏者としては宮城さんと和泉さんの演奏が気になるところですが、お二方の演奏には初期スクエア・サウンドにおける個性そのものを感じましたし、それが色褪せずにむしろ研ぎ澄まされていることには感激しました。元メンバー以外のゲストが参加するという試みも新鮮でしたね」

坂東慧「歴代メンバーによる僕の尊敬するリズム・セクションからは、やはり一時期のスクエアのサウンドを作りあげたオリジネーターとしての説得力を感じましたね。それにしても仙波さんの存在感には脱帽です(笑)。音楽をもっと楽しくするすることが出来るはずだと、思い入りました」

 

記念すべきコンサートの熱狂を高音質で

 そして、メドレーも入れれば24曲という新旧織り交ぜたデラックスなセット・リストは坂東慧の考案によるもの。

坂東「前回の30周年ツアーやこのイヴェントの前のツアーともなるべく曲がカブらないように選びました。一見大変そうですが、全体の曲数が多いので意外と選ぶのは楽なんです(笑)」

安藤「彼はドラマー目線のフラットな立場で選びますから、僕や伊東さんが今まで避けて逃げてきたような曲も平気で選ぶんですよ。わぁ〜、この曲で来たか〜みたいなね(笑)。今回、初期の曲はより当時の雰囲気を出すためにギブソンES-335をクリーンなサウンドで弾いていますからお楽しみに!」

 今回特筆すべきは、21台のHDカメラと本邦初ともいえる96k・24bitシステムにて96ch録音という大規模&高音質な収録。これによって、この歴史的イベントの興奮、熱狂、感動を余すところなく再現している。

伊東「やはり映像だと、音だけでは伝わらないものが明解に見えてくるよね。演奏している姿にはリアリティーを感じるし、躍動感がある。でもカット割りが多すぎて映像監督はたいへんだったんじゃないかな。それにしても、もの凄い規模で収録したもんだね。だって、終わってからホールの撤収時間に間に合わなかったくらいなんだから(笑)」

 なお、本作品にはコンサート本編以外に、Disc 3には現メンバーへの濃密なインタヴューを基に構成された35周年イヤーのドキュメント映像も収録されている。

伊東「メンバーそれぞれのコメントもあるし、オフショットの映像も含めてみんなの人となりを楽しんでください(笑)。チキンジョージでのコスプレしながらのライヴ映像も収録されてるしね。俺としては出来ればあの映像は観られたくないんだけどね(笑)」

 

進化形 T-SQUAREの『NEXT』

 さて、それでは35周年を終えて次なる段階へ踏み出した新作『NEXT』。このアルバムをより楽しむためのポイントを、作曲したメンバーそれぞれから聞いてみよう。

坂東「僕が何曲か挑戦したのはトラック数を少なくして5人でそのまま成立するようなアレンジです。それから、“SHINE”や“NEXT”ではドラム、ベース、アコースティック・ギターのストロークはアナログ録音による豊かな空気感にこだわりました。

河野「僕はその時のタイミングとして他のメンバーが書きそうもない曲を提出するというパターンが多いのですが、まあ、そういう意味ではキメ打ちですね(笑)。あと、僕はヘヴィーメタル全盛期を体験した世代なので、ギターへの想いを作曲やアレンジに込めてしまうんです。その結果、安藤さんには相当ムチャ振りしてしまいましたが…(笑)」

安藤「そうそう、みんなが持ってくるデモ・テープの完成度が高すぎて怖い(笑)。坂東くんのデモには彼が弾いたギターが入ってるし、河野くんのデモにはあらかじめかなり難しいフレーズが指定してあるから大変なんですよ(笑)。作曲に関しては、昔は散歩してるときにメロディが浮かんだりしたんですが、最近はギターを弾きながら作っています。だから通常ならメロディーを譜面にして伊東さんに渡したりするんだけど、今回は“I Stand Alone”みたいにそのままギターで弾いてみようか、なんて曲も出て来ました」

伊東「河野はいかにも〈アップデイトしたスクエア〉という曲を持ってくるし、坂東は一番若いのに昔のスクエアらしさを表現するのが上手い。その上にいろんなものを感性豊に採り入れた独特のポップさがあるんだ。安藤の曲にはいつもながらのシンプルなスクエアらしさがあるしね。僕は今回は演奏者としてのスタンスに徹した。今は作曲することよりも、楽器を演奏することにもっと磨きをかけていたいんだ。その分、みんなの曲をどう演奏するかということに集中出来て、満足のいく結果が得られたと思うよ」

 そして、バンドのサウンドをさらにランク・アップさせた、隠されたチャレンジとは?

伊東「このところ常に課題としてきたのは、サウンドの豊かさをいかに質感として表すことが出来るかということ。聴いた瞬間にハッとするようなサウンドの立体感と品性、それをスクエアでも出したかった。トミー・リピューマがプロデュースしているジョージ・ベンソンやアル・ジャロウのアルバムみたいにね。僕はそういう想いで演奏したし、エンジニアはそのスケール感を確実に表に出してくれた。だから、新作のサウンドは自慢して回りたいくらいとても気に入っているんだ」

安藤:僕たちプレイヤーはそこまで気にすることなく、ただ演奏することだけに集中しがちだけど、伊東さんが言ったことを意識するのとしないのとでは出来は違ってくる。さらにエンジニアが僕たちの気付かないところまでを引き出してくれたときに求めるサウンドが得られるんだと思う。

 現在のT-SQUAREを象徴する新作のサウンド。懐かしさと新鮮さの両方を兼ね備えた彼らのサウンドは、まだまだ進化していく。

坂東「4人プラス田中晋吾さん(ベース)という現在のメンバーになって9年。これまでのスクエアのサウンドを踏襲しつつ、この5人にしか作れないものを目指したいです」

河野「新しい世代にとって手本となるような、質の高いインストゥルメンタル・ポップスを作っていきたいですね」

伊東「新たなるスタート・ライン。バンドとしてはもちろん、自分自身サックス奏者として次なる段階へ進んでいこうと思っている」

安藤「今回の新作はメンバーそれぞれが新しいT-SQUAREの個性となるような曲を書いてくれて、今までにないフィールを注入することができました。次なる40周年を目指して頑張りますので、皆さん見守っていてください(笑)」