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菊地成孔

一声かけていただければ尽力しますよ

――それが昨年リリースされた『HAPPY END』で、電影と少年CQは9年の活動を終えたんですよね。そして今回、ルアンさんは〈リブート〉と称してソロ活動に舵を切ったという訳ですが、新たに誰かとユニットを組もう、グループに入ろう、とは考えませんでしたか?

ルアン「それは考えなかったですね。電影と少年CQのハッピーエンド後、新しく別でアイドルグループ加入のお誘いはいただいたんですが。新しくアイドルグループに所属して活動したいとは思っていませんでした。音楽は続けたい気持ちはあったので、ソロアーティストとして活動を続けていく事だけは決めていましたね。ただ、セルフプロデュースは自分の場合あまり自信がなかったので、誰かにプロデュースしてもらった方がいいなと思ったんです」

――そこで、プロデューサーとして菊地さんの名前が挙がったのでしょうか。

ルアン「はい、食事の席で、電少の解散を伝えた時に〈これからどうされるんですか?〉という話になって、そこから自然と……(菊地を見て)えっ、そうですよね(笑)?」

菊地「そうですね(笑)。まあ、僕はそんなに、いわゆる〈かわいい後輩〉っていうのがいないんですよ。少なくともジャズの村とかにはいない。後輩をいっぱい連れて〈飲みに行くぞ!〉って人もいると思うんですけど、僕はもっと違う職種の、例えば料理人とかね、そういう人と飲みに行くことの方が多い。音楽家の若い人と行くと、異様に尊敬されて〈恐れ多いです……〉みたいになっちゃう(笑)。

なんだけど、電少さんとは自然とスッといけて。まあ、もはやギリ孫でもおかしくないくらい、年が離れすぎてるからっていうのもあるんですが(笑)。それでビストロかなんかで呑んで、楽しく話してたんですよ。そしたら2人が急に改まって、さっきの解散の話をしだして。亀の甲より年の功と言いますか、僕もさんざんいろんな人の解散は見てきたんで、いろいろありますよね、と。

で、ゆっきゅん君はソロで活動してるし、ルアンさんももうソロをやってたんですよね。以前、ルアンさんのソロライブにも一回ゲストで出していただいてたんで〈ソロはこういう感じなんだ〉っていうのも知ってたんです」

ルアン「下北沢での生誕イベントですね

※編集部注 2024年6月25日に東京・下北沢SHELTERで開催された〈ルアン倶楽部〉

菊地「ですから、さっきも言ったように、いわゆる地下アイドルのプロデュースは僕にはちょっとできない、普通のアイドルでも難しいなと思ってるんですけど、ルアンさんなら僕にもできることがあるかなっていうか。

それで、今後ソロアーティストとしてやっていくお気持ちが多少なりともあるのでしたら、一声かけていただければ尽力しますよ、という風に申し上げた記憶はありますね」

――社交辞令でもないし、自分を売り込む訳でもないけど、ルアンさんなら、と。あのちゃんだったら難しいけど……。

菊地「まあ、あのちゃんからお願いされることはないでしょうし、やんないですけど(笑)」

 

新時代のウィスパー歌手

――菊地さんから見て、ルアンさんの歌手としての個性というのは、どういう点にありますか?

菊地「今どき珍しい、ウィスパーボイスの人ですよね。今どきっていうのは、ある時期はいっぱいいたってことなんですけど。今はもっと、元気に歌う人が主流ですよね。だから、ウィスパーっていう点がまず一番大きいかな、と思います。

で、ウィスパーボイスって、ボサノヴァ以降ずっとヘタウマと結びついてて。(そういうウィスパーの歌手は)か細くて危うくて、ファンはそこにドキドキする訳ですね。なんだけど、ルアンさんはピッチもいいし、リズムも安定しているし、ウィスパーにつきもののヘタウマではないんですよね。それが新しいなと思いますね」

――たしかに、ウィスパーで歌う歌手は〈雰囲気〉っぽい人が多い印象です。

菊地「あと、わざわざ言うのもどうかと思うんですけど、ルアンさんは思ってたより背が高いんですよ(笑)」

ルアン「よく言われます……(笑)」

菊地「声のイメージと、あとゆっきゅん君がデカいから、小柄に思われるけど、実際に会うと〈あれ、結構デカい?〉というのがルアンさんの印象で(笑)。

で、そこからイメージが湧いてきたんです。〈小さい女の子が、ウィスパーで蠱惑的な感じで歌う〉というのは、僕の年齢だと死ぬほど見てきたパターンだけど、そうじゃない〈意外と背が高くて、下手じゃないウィスパー〉っていう新しさを感じたんですよね。

そこから、ルアンさんと連絡して、〈こういうことがやりたい〉〈じゃあこんなのはどうですか?〉とやり取りして。電少さんのライブは、ああいうシアトリカルな音楽で、お客さんは座って黙って聴いて、1曲終わっても拍手がなく、公演の最後に大拍手が来るという演劇方式で……っていう、演劇のお客さんと同じですよね。でも、僕の音楽に関していうと、踊らせる方なので。電少の時とは違うルアンさんのソロをやるなら、お客さんがドカーンと盛り上がるようなのがいいんじゃないかと思ったんです」

ルアン「そうですね、そこに関しては私も同じでした。今までの要素は残しつつ、歌でフロアをブチ上げるような方向がいいな、と。昔からそういう風になれたらいいな、とは思ってたんです。今回のアルバムだと“ROXY”とか“優雅な生活が最高の復讐である”とか、今までの私にはなかった、激しい曲がその路線ですよね」