
自分のなかに新しい風が吹くかも
――そういうタイミングでメジャーに行けたのはよかったですね。初めからメジャーの世界に放り込まれていたら、渦に呑まれて自分を見失っていたかもしれない。
「そう思います。初めはASTERI ENTERTAINMENT(レーベル)にお世話になっていたんですけど、私以外は作家としての活動もされている方ばかりだったんです。アーティスト活動だけをしていて、しかも女性というのは、私だけで。だから異質だったし、歌詞や曲についても衣装やアートワークに関しても何かを言われることがなかったんです。
そこで4年ちょっと自分なりにやったからこそ、もっと人の意見やアイデアが欲しいなと思うようになれた。もし最初からいろんな人が意見を言ってくる場所だったら〈うるせえ〉って思ったと思うんですけど(笑)、自分と仲間たちだけで手探りで活動したからこそ、何が足りてないのかもわかってきて。自分が経験していないことを経験している人の意見をもっと聞きたいなと思ったとき、初めて新しい場所を探そうと思えたというか」
――自分から新しい場所を探そうと思って動いたわけですね。
「そうです。新しい場所というか、新しい人。この人の言うことは面白いな、一緒に仕事したいなと思える人と出会えないかなって。だからメジャーデビューしたいってことではなかったんです」
――たまたまそういう人がいたのがメジャーのエピックだった。
「場所を変えようと思ってから2年ぐらいの間にほかのレーベルの方ともお話しさせてもらって、時間がかかったんですけど、最終的にエピックとご一緒できることになった。話していて、自分のなかに新しい風が吹くかもって思えたんです。エピックと一緒にやることになって実は1年くらい経つんですけど、それまでと比べるといろんな人の意見をすごくオープンに聞くことができるようになったなって思います」
ネガティブな感情、ブルージーな感覚こそ大事にしたい
――さらささんは初期から〈Live Bluesy/ブルージーに生きろ〉をテーマとしてやってきましたよね。これまでに50回くらい聞かれていると思いますが(笑)、このテーマがどのようにして出てきたのか、どうしてそれを掲げているのかを改めて説明してもらえますか? というのも、今回のEPのタイトルも『Live Bluesy』なので。
「はい。ゆっきゅんというアイドルがいるじゃないですか。今は普通に友達なんですけど、私が高校生のときからゆっきゅんのことが気になっていて。その頃にインテグレートという化粧品のCMで〈ラブリーに生きろ〉というキャッチコピーがあって、ゆっきゅんがTwitter(現X)に〈自分だったらギルティに生きろだな〉という投稿をしていたんです。それを見たときに、私だったら〈ブルージーに生きろ〉かなと。
そのときはまだ音楽活動をしていなかったし、将来何になるかも考えていなかったんですけど、そう思ってInstagramのプロフィールに〈ブルージーに生きろ〉って書いてみたんですよ。それがしっくりきたというか。それでグッズにも〈Live Bluesy〉って英語で入れてみたりしているうちに、みんなが〈さらさと言えば〉みたいに捉えてくれるようになって。じゃあ、その言葉をテーマとしてやっていこうと」
――なるほど。
「もともと私は明るい性格じゃなくて、子供の頃から神経質で、繊細で、ネガティブな感情が自分のなかで大きかったんです。落ち込みやすいし、心配性だし……そういう自分が嫌だったんですね。でも19、20歳ぐらいになって振り返ってみたとき、いつもネガティブなことを起点にして物事が好転したり、落ち込んでいるときに誰かと出会って、その人が助けてくれてそれまでと違う人生になったことばっかりだったなって気づいて。
例えば私は小学校も行ったり行かなかったりだったし、中1のときも半分くらい不登校で、親が見かねて私立に転校させてくれたんです。そこで出会ったのがいい先生で、学校に通えるようになり、中高一貫だったので高校では軽音楽部に入って歌を始めることになった。人ってネガティブな状態が続くと場所を変えようとするものだし、変化させようという力が働くと思うんです。で、そういうときこそ前進できるんだなと思って。
もちろん今でもネガティブな気持ちになることがあるけど、〈これが転機となっていい方向に進めるかも〉って思えばいいんじゃないかなと。ネガティブをネガティブなまま肯定できれば次に進めるし、自分が魅力的だなって思う人も傷ついてきた過去があってそれに向き合って進んできたんだなとわかるから。そういう人にこそ私には光があるように見える。なので、ネガティブな感情、ブルージーな感覚こそ大事にしたいという気持ちがずっとあるんです」
――そうしたところから〈Live Bluesy〉というテーマを掲げて4年以上活動されてきたわけですが、それを新しいEPのタイトルにつけたということは、当時と変わらずそうした気持ちを強く持ち続けているということ?
「そうですね。前に比べたら生きるのも少しは楽になっている気がするけど、ネガティブな感情ってやっぱりあるし、そこは変わらないなと思っていて。10代の頃から明るい音楽、明るい表現が好きじゃなかったから、そのアンチテーゼとして私は〈Live Bluesy〉と言いたい、っていうのもあるかも」