Verve@70
――ヴァーヴ創立70周年記念
UHQCDコレクション 第三弾

Verve、ヴァーヴ。それは活気、情熱、生き生きとした表現力といった意味を持つ言葉。

 Verve、ヴァーヴ。それは活気、情熱、生き生きとした表現力といった意味を持つ言葉。かような単語を掲げたジャズ・レーベルが設立されたのは、1956年のこと。設立者はジャズ名士/辣腕イヴェンター/マネージャーのノーマン・グランツ。彼はクレフやノーグランというレーベルを持っていてそれらを統合する形で立ち上げた。そして、エラ・フィッツジェラルドやオスカー・ピーターソンら人気の担い手を担ぎ出す。当時のヴァーヴは王道、まさに大衆音楽としてのジャズが胸を張って送り出された。当初同社には、1960年代後期以降のワーナー・ブラザーズのロック路線を支えた偉人モー・オースティンもいた。

 1961年にヴァーヴはMGMに売却され、1972年にはポリグラムに権利が移り周辺のジャズ作品が吸収され、さらに1998年にユニバーサルとポリグラムが合併し、膨大なカタログを有するユニバーサル帝国の旗艦ジャズ・レーベルとして大車輪。〈新旧ジャズの百貨店〉といったスタンスで、ヴァーヴは様々なジャズの形を送り出している。近年だと、ジョン・バティステの成功は印象深いだろう。

 そんな歴史を持つヴァーヴは、設立70周年。それに合わせて2026年に入り〈Verve@70 ~ ヴァーヴ創立70周年記念UHQCDコレクション〉というシリーズが組まれ、その第3弾として30作がリリースされる。ちなみに、第1弾は1950年代の録音作、第2弾は1960年代の作品を中心とする。そして、この第3弾では1990年代から2000年代にかけて発表されたアルバムが対象となる。以下、そのアイテムを見ていこう。

 まずトリビュート/オマージュ作が7作、選ばれている。真摯なテナー・サックス奏者である ジョー・ヘンダーソンがデイヴ・ホランド他マイルス・デイヴィスのバンドに在籍した奏者たちとのカルテットで録音した『ミュージング・フォー・マイルス』。同じくヘンダーソンの『ラッシュ・ライフ』はデューク・エリントンを支えた名作曲家であるビリー・ストレイホーンに捧げる作品だ。トランペットの ロイ・ハーグローヴとダブル・ベースのクリスチャン・マクブライドとピアノのスティーブン・スコットがドラムレス編成でパーカーの世界に望んだ『パーカーズ・ムード』。活動初期にマイルス・デイヴィスに賞賛されたシンガーであるシャーリー・ホーンの『アイ・リメンバー・マイルス』。ハービー・ハンコック/マイケル・ブレッカー/ロイ・ハーグローヴ三者連名による生誕75年を愛でるライヴ盤『ディレクションズ・イン・ミュージック~マイルス&コルトレーン・トリビュート』。その2003年日本公演は国際フォーラムのホールAで、満場だった。R&Bも大好きなジョン・スコフィールドがレイ・チャールズにオマージュした、『ザッツ・ホワット・アイ・セイ』。ハービー・ハンコックのヴォーカル活用のジャズ・ビヨンド表現の確かな姿を形にした『リヴァー~ジョニ・ミッチェルへのオマージュ』。

 シンガーのリーダー作は6枚ある。ピアノも上手なシャーリー・ホーンの豪華お膳だてで録られた『ヒアズ・トゥ・ライフ』。現代ジャズ・ヴォーカルの女王的存在と言えるだろうダイアナ・クラールの『ホエン・アイ・ルック・イン・ユア・アイズ』と『クワイエット・ナイツ』。おおらかにしてスケールの大きな歌い口が魅力のリズ・ライトのデビュー作『ソルト』。ナット・キング・コールの娘ナタリー・コールがスタンダードを歌う『アスク・ア・ウーマン・フー・ノウズ』。ボサっぽさやジャジーさも抱えるギター弾き語りシンガー・ソングライターのケニー・ランキンがスタンダード系曲を取り上げた『ア・ソング・フォー・ユー』。この2002年発表作は2009年に亡くなった彼の遺作となった。

 器楽奏者だと、ジャズ界トップ級のベーシストであるクリスチャン・マクブライドの『ファースト・ベース』と『ナンバー・トゥー・エクスプレス』。ハービー・ハンコックとウェイン・ショーターがしっとり敏感なデュオ表現に望んだ『1+1』。また、ウェイン・ショーターはワーキング・カルテットによる『フットプリンツ~ベスト・ライヴ!+1』と、多彩さを求めた『アレグリア』も本シリーズに入れられた。永遠のトランペット小僧であるロイ・ハーグローヴは3作で、キューバ録音のラテン・ジャズ盤『ハバナ』とロマン溢れるストレート・アヘッド作『ナッシング・シリアス』、さらに彼のRHファクター名義によるグルーヴ・フュージョン作『ディストラクションズ』。1973年ニューオーリンズ生まれのトランペッターのニコラス・ペイトンがウィントン・マルサリスらも迎え十全に吹いた『ペイトンズ・プレイス』。テナー偉人のマイケル・ブレッカーが15人のラージ・アンサンブルとともに録音した『ワイド・アングルズ』とアルトのソウルフルな匠であるデイヴィッド・サンボーンの屈託のない『クローサー』もリストに収められた。

 そして、ギタリストは6作品。うちジョン・スコフィールド作が3枚で、メデスキ・マーティン&ウッドと絡むファンキーな『A GO GO+2』、ブラッド・メルドーやケニー・ギャレットらとのクインテットによる『ワークス・フォー・ミー』とスティーヴ・スワロウとビル・スチュワートとのトリオで収録した『アンルート』。現代ジャズ・ギタリストとて高い評価を受けるカート・ローゼンウィンケルの鋭敏なカルテット作『ザ・ネクスト・ステップ』、さらにはヒップホップ大家のQ ティップが制作した『ハートコア』。また、円満な演奏が美点のラッセル・マローンの『ハートストリングス』は浸れるウィズ・ストリングス作だ。

 以上のアルバム群は、今のジャズの広がり/興味深さを伝えるものであるのは疑いがない。そして、それらはポップ・ミュージックの動きとも並走せんとするものであり、コンテンポラリー・ポップがいろいろとジャズの発想を抱えていることも示唆するのではないだろうか。

 


RELEASE INFORMATION
♪ヴァーヴが誇る名盤の数々を、最新の高音質UHQCDでお届けする新シリーズ

第1弾:2026年3月25日発売[20作品]
詳細:https://tower.jp/article/feature_item/2025/12/10/0105

第2弾:2026年4月22日発売[20作品]
詳細:https://tower.jp/article/feature_item/2026/02/10/0101

第3弾:2026年8月26日発売[30作品]
詳細:https://tower.jp/article/feature_item/2026/03/10/0101

公式HP:https://store.universal-music.co.jp/collections/verve-70th-collection