Photo by Collier Schorr

サム・スミスが通算5枚目のスタジオアルバム『Hazel Eyes』をリリースした。今年6月に開催された日本国内最大規模の国際音楽賞〈MUSIC AWARDS JAPAN 2026〉で披露した“My Guy”も収録した本作は、幅広いジャンルの要素を取り込みながら心の奥をさらけ出した、これまで以上に深いロマンティックな作品に仕上がっている。アーティストとして、何より1人の人間として新たなステージへと歩みを進めたサムが新作について語った貴重なインタビューをお届けする。 *Mikiki編集部

SAM SMITH 『Hazel Eyes』 Capitol(2026)

 

また新たな山の頂きを目指して

――新作『Hazel Eyes』の話をする前に、あなたのこれまでのキャリアを少し振り返りたいと思います。2年前に1stアルバム『In The Lonely Hour』の10周年記念盤をリリースされましたが、デビュー当時を振り返ってどんな思いを抱きましたか?

「あの作品で人生が一変したわけですから、1stアルバムとしては本当にぶっとんだ結果をもたらしました(笑)。あの時期の記憶は、信じられないほどハッピーな思い出と辛い思い出のミクスチュアだと言えます。でも自分の作品を振り返るのは好きで、2ndアルバム『The Thrill Of It All』の10周年記念盤を作るのも楽しみにしているんです。

私は自分自身と自分が作った音楽にすごく誇りを抱いていますし、時には過去の作品を振り返って〈ここはほかにもやりようがあったかも〉とか〈ここはあまりうまくできていないな〉と感じることもあるんですが、それも含めて『In The Lonely Hour』の10周年記念盤では制作をエンジョイできました。なので過去の作品を振り返ることは好きですね」

――前作『Gloria』であなたは完全に解放され、エンパワーされた自分の姿を提示していました。『Hazel Eyes』の前哨として、あのアルバムはどんな意味を持った作品だと思いますか?

「私にとって『Gloria』は、アーティスト人生におけるクレッシェンドみたいなアルバムです。20代の頃は特定のタイプのポップソングを作ることに専念してきましたが、3rdアルバムの『Love Goes』から『Gloria』にかけては“Unholy”のような曲を目指して探求の旅をしていたんだと思います。

“Unholy”を生み出すため、私は精一杯尽力しました。なので、人々があの曲を受け止めてくれた時、何かから自分が解き放たれたように感じたんです。アーティストとして登りたいと思っていた山の頂に到達した、そんな手応えを得ました。そして『Hazel Eyes』では、また新たな山に登っているんです」

――〈新たな山を登っている〉とおっしゃいましたが、本作の制作に着手した時はどんな心境でしたか?

「本作で私はアーティストとして大きな変化を遂げています。これまでアルバムを制作する時は様々なソングライターやプロデューサーと組んで、色々な場所で曲を作ってきました。でも今回は、『In The Lonely Hour』で共作した素晴らしい友人であるサイモン・アルドレッドと2人だけで曲を作り始めたんです。

制作が進むにつれて徐々にほかのコラボレーターも巻き込んでいきましたが、そこにいたのは多くても5、6人ぐらい。信頼できる最小限の人たちと制作することで、私は曲の世界に終始留まることができました。

本作の曲を聞いていると、ピースフルな場所に逃避できるんです。遠く離れた田舎にある川のような作品になりましたね。ヘッドホンで聞いていると、そういう世界に連れて行ってくれるんです」

 

Photo by Collier Schorr

今なら愛について深みのある曲が書ける

――本当に素晴らしいアルバムが誕生したと思います。あなたのこれまでのキャリアは、本作を作るための準備期間だったようにも感じました。

「そうかもしれませんね。でも、どのアルバムにもそこに至るまでの準備期間というのはありました。例えば『Gloria』をリリースする時、人々がこのポップなアルバムを聞いた時の反応を想像したんです。人はコマーシャルな音楽はよりシンプルで、お金のために作られていると考えることがありますよね? でも、私はそうは思わなかった。なぜなら、私はチープなポップミュージックを愛して育ちましたから。だから『Gloria』のようなアルバムを作ることを目標にして、長い間準備をしていたような気がするんです。

『In The Lonely Hour』でデビューした私にとって、『Gloria』のようなポップな形で自分を表現することはひとつのチャレンジでもありました。『Hazel Eyes』についても同じように感じるんです。私はかねてから整合性のあるアルバムを作りたいと思っていました。田舎町の出身ですし、小さな村で育ち、自然の中で音楽を聞くことが多かったので、ナチュラルに感じられるアルバムを作りたかったんです。

私のお気に入りの映画のひとつに『プラクティカル・マジック』という作品があるのですが、そのサントラが素晴らしいのでぜひ聞いてみてほしい。実は『Hazel Eyes』にも大いに影響を与えているので」

――サンドラ・ブロックやニコール・キッドマンが出演しているファンタジー要素の強い映画ですよね。

「ええ。すごくロマンティックな映画なんです。魔女絡みのロマンティックコメディで、『Hazel Eyes』にはそのサントラと同じような起伏があると思います」

――『Hazel Eyes』の1曲目“Everlasting Love”に出てくる〈Sad night walker〉は、パートナーと出会う前のあなたのことですか?

「そうです。曲の前半はパートナーと出会う前に書いたんですが、インストゥルメンタルのパートに続く後半は、彼と出会って3年が経過してから書きました。この曲は誰かとの出会いの前夜を描いていて、出会いを経て美しい音楽が湧き起こり、ホーンの音がハッピーな未来へと連れていってくれる。そこでは一夜限りの関係が永遠の愛へと変化していくんです」

――長年あなたはハートブレイクの苦しみを歌ってきたと思いますが、こうして前向きなラブソングを歌う時はどんな気分でいますか?

「今回ラブソングを書く過程で、これまでの人生で最も多くの涙を流した気がします。それはきっと、それだけリアルな感情を曲に込められたという証明ですよね。20代前半の時にもラブソングを書こうと試みましたが、その時はイノセント過ぎて書けなかったんです。でも、今の私がパートナーに抱く愛は信じがたいほどリアルですし、ハッピーな愛でもある。

その反面、辛いことを乗り越えて手に入れた愛でも、その愛が脆くて、いつの日かそれが失われてしまうのではないかと恐れている部分もあります。そのせいか“My Guy”みたいに〈彼は自分のもの〉と歌うハッピーな曲であっても、聞いていると哀しい気持ちになるんです。このあまりにも美しいものが、もしかしたらなくなってしまうかもしれないと思うと怖くて仕方がなくて。でも、今までこのアルバムを作るのを待って良かったなと思っています。今なら愛について深みのある曲が書けますからね」

 

Photo by Collier Schorr

サム・スミスが辿り着いた心の中に流れる〈川〉

――本作のコラボレーターについて、サイモン以外には誰が参加したのですか?

「ファイストとも共作しました。私は彼女の大ファンで、本作では2曲を一緒に書きました。それからルース・オマホニー・ブレイディとデヴィッド・オドラムも参加しています。2人はアルバムの制作に本当に大きく貢献してくれました。素晴らしいソングライターであり、プロデューサー兼プレイヤーなんです。あとはニューヨークを拠点にしている偉大なミュージシャン兼ソングライター、シャザード・イズマイリーも起用しました」

――今回はゴスペルやブルースに加えて、アメリカーナやケルト音楽、インディロックなどこれまでになかったサウンドを取り入れていますが、制作中にどんな音楽を聞いていたのか気になります。

「このアルバムを作っていた時は、ジョニー・キャッシュをかなり聞いていました。サイモンはジョニーの大ファンで、私に詳しく教えてくれたんです。それからタミー・ウィネットも。アメリカに移り住んだこともあって、カントリーミュージックを掘り下げていました。

ほかにも私自身が若い頃に聞いていた音楽からも大いに影響されました。『プラクティカル・マジック』のサントラには先程触れましたが、スティーヴィー・ニックスも然り。ラーズの“There She Goes”をはじめ、90年代のロマンティックコメディ映画に使われていた曲の数々から得たインスピレーションも大きいですね。

それから、ローラ・マーリングからレジーナ・スペクターまで若い頃に親しんだフォークミュージックだったり、コリーヌ・ベイリー・レイのようなソウルミュージックの影響もたくさん受けています。でもこの期間は、今までにないくらいたくさんブルースを聞きましたね」

――あと、本作で繰り返し登場する〈川〉のイメージについても教えてください。

「アルバムの中で最初に完成した曲は“To Be Freeで、次に“Everlasting Love”を書き上げたんですが、この2曲での私はミュージシャンとしてそれまで自分が手にした全てのものを手放して、どこかへ逃げ出したような気持ちでいました。そして心の中で、友人であるサイモンと一緒にとある川に辿り着いたんです。2曲に共通するそんなフィーリングを維持するために、スタジオではいつも同じ場所にいました。それがプロダクションにおける道標になったんです。

今回は私自身がプロデューサーを務めていますが、プロデューサーとしての私のメソッドはまずイメージとサウンドを集めて、終始その世界の中に留まることでした。関わっている人たちやアルバムを構成する要素が、辿り着いた川のほとりから離れないよう気を配ったんです。と同時に、私は川の流れを追いかけて、最終的には海岸に辿り着く。“Moondance”や“Hold On”は制作の後半になって生まれた曲ですが、そこには愛する人とどこかに辿り着く情景が描かれていて、エレクトロニックなサウンドにも青い大海原のイメージを反映させています」

 

離れていった人たちも、いつか私のパーティーに戻ってきてくれたら

――なぜ『Hazel Eyes』というタイトルになったんでしょうか?

「当初は川にまつわるタイトルにしたかったんです。もしくは、自分の頭の中に広がっていた茶色いセピアがかった世界に関連付けたかった。でも、アルバムのミキシングに長い時間を要したんですが、その時に一歩引いて作品を捉える余裕が生まれたんです。作品と少し距離を置くことによって見えてきたのは、〈世界一ロマンティックなアルバム〉だということ。とにかく、パートナーのことや私自身のこと、そして愛が私にもたらしたことに終始しているアルバムだと思ったから、『Hazel Eyes』というタイトルを選びました。

ちなみに、なぜ〈ヘーゼル〉なのかというと、パートナーの瞳の色がヘーゼルなんです。ただ最近になって知ったんですが、私がヘーゼルだと思い込んでいただけで本当はブラウンだったみたいで(笑)。でも、私にとって彼の瞳の色はヘーゼルナッツの色だから、そこは譲りません。それに“Hazel Eyes”が私のお気に入りの曲でもあるので、アルバムタイトルにしたんです。タイムレスで、ラブレターっぽい感じがするので、今では正しい判断をしたなと思っています」

――本作を通してリスナーにはどんなことを感じてほしいですか?

「私自身が逃避していた世界に、聞き手のみなさんも逃避してもらえたらと願っています。そしてそれを実感してもらいたい。またこの作品に収められた曲を通じて、シンプリシティに身を任せてほしいですね。

私が思うに、このアルバムは永久不変でタイムレスでもあります。今この世界で鳴っている他の音楽とは違う時間が流れていますから。あとは、私自身がこれらの曲を書きながら抱いた気持ちをほんのわずかでも感じてもらえたら、それ以上に望むことはありません」

――最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

「まずは〈ありがとう〉と言いたいです。私のファンであるということは、色々な意味でアップとダウンが伴うと思うんです(笑)。もしかしたら途中で脱落してしまった人もいるでしょうし、あるいは途中でファンになってくれた人もいるはず。それでも私は構いません、誰であろうと私は聞いてくれる人のために歌い、音楽を作っていますから。

もちろん、デビュー当初から私の音楽を聞いてくれている人たちには、心の底から感謝しています。そして離れていってしまった人たちも、準備が整ったら私が開いている音楽というパーティーに戻ってきてくれたらうれしいです」

 


RELEASE INFORMATION

SAM SMITH 『Hazel Eyes』 Capitol(2026)

リリース日:2026年8月21日(金)
配信リンク:https://umj.lnk.to/SS_HE

TRACKLIST
1. Everlasting Love
2. Hazel Eyes
3. Moondance (feat. Feist)
4. My Guy
5. When He’s Gone
6. Thief
7. Love Is A Stillness
8. Sugar Rush
9. Oh Mother (feat. The TwoCity Chorus)
10. Constant Companion
11. Hold On
12. To Be Free

■国内盤CD購入特典
ポストカード(先着)
※ご予約済みのお客様も対象となります
※商品ページで〈特典あり〉の記載がない場合は特典対象外となります
※複数枚を1回でご注文された場合、商品がすべて揃うまでに特典の保管期間(発売日より1カ月)を経過すると、自動的に特典付与対象外となります
※特典の数には限りがございます。限定数満了次第、終了とさせていただきます
※タワーレコード店舗とオンラインでは特典の運用状況が異なる場合がございます。店舗でのご購入で特典ご希望のお客様は、各店舗に運用状況をご確認ください

詳細ぺージ:https://tower.jp/article/feature_item/2026/06/26/0104

 

INFORMATION
サム・スミス『Hazel Eyes』リリース記念〈サイン入り白盤レコード〉抽選プレゼント
サム・スミス『Hazel Eyes』の日本盤発売を記念して、タワーレコード渋谷店にて対象商品をご購入いただいた方の中から抽選で1名様に〈サム・スミス サイン入り白盤レコード〉(非売品)をプレゼントいたします。

■抽選特典
サイン入り白盤レコード(非売品):1名様

■対象商品
サム・スミス『Hazel Eyes』日本盤(UICC-10061)
リリース日:2026年8月21日(金) 

■対象店舗
タワーレコード渋谷店

■抽選期間
2026年8月21日(金)~2026年8月28日(金)

■抽選発表
2026年9月2日(水)18:00

■当選品引換期間
2026年9月2日(水)18:00~2026年9月23日(水)

■当選品引換場所
タワーレコード渋谷店 7F インフォメーションカウンター

■注意事項
※抽選期間、当選番号発表日時については予告なく変更になる可能性がございます
※お引取りの際は直接店舗店頭にお越しください。配送は行いませんのでご了承くださいませ
※〈番号付き抽選券〉を紛失・破損した場合は対応致しかねますので大切に保管をお願いします
※当選品および〈番号付き抽選券〉の転売、複製、譲渡、偽造行為は一切禁止とさせていただきます

詳細ページ:https://towershibuya.jp/news/2026/08/18/233350#news

 


PROFILE: SAM SMITH
感情をそのまま声に変えてしまうような、ダイナミックかつ繊細な表現力を武器に、唯一無二のボーカリストとしてアルバム累計で4,000万枚以上、シングルは3億枚以上を売り上げている。2014年のデビューアルバム『In The Lonely Hour』は、イギリスのアルバムチャートで〈トップ10最長連続ランクイン〉記録を樹立し、ギネス世界記録に認定。デビュー作にして世界的ブレイクを果たした。以降も『The Thrill Of It All』『Love Goes』『Gloria』など数々のヒット作を発表している。2015年には映画「007 スペクター」の主題歌に“Writing’s On The Wall”を提供。同曲はアカデミー賞とゴールデングローブ賞を受賞し、「007」シリーズの主題歌として史上初となる全英シングルチャート1位を獲得した。2022年に発表したキム・ペトラスとのコラボ曲“Unholy”は、Billboard Hot 100で3週連続1位、全英シングルチャートで4週連続1位を記録。サムにとって通算8作目の全英No. 1シングルとなった。日本との縁も深く、2024年にはを宇多田ヒカルを迎えた“Stay With Me”の新バージョンをリリース。さらに2025年6月にはライブアルバム『BBC Proms At The Royal Albert Hall』をリリースしている。
日本公式サイト:https://www.universal-music.co.jp/sam-smith/
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