サム・スミスが辿り着いた心の中に流れる〈川〉
――本作のコラボレーターについて、サイモン以外には誰が参加したのですか?
「ファイストとも共作しました。私は彼女の大ファンで、本作では2曲を一緒に書きました。それからルース・オマホニー・ブレイディとデヴィッド・オドラムも参加しています。2人はアルバムの制作に本当に大きく貢献してくれました。素晴らしいソングライターであり、プロデューサー兼プレイヤーなんです。あとはニューヨークを拠点にしている偉大なミュージシャン兼ソングライター、シャザード・イズマイリーも起用しました」
――今回はゴスペルやブルースに加えて、アメリカーナやケルト音楽、インディロックなどこれまでになかったサウンドを取り入れていますが、制作中にどんな音楽を聞いていたのか気になります。
「このアルバムを作っていた時は、ジョニー・キャッシュをかなり聞いていました。サイモンはジョニーの大ファンで、私に詳しく教えてくれたんです。それからタミー・ウィネットも。アメリカに移り住んだこともあって、カントリーミュージックを掘り下げていました。
ほかにも私自身が若い頃に聞いていた音楽からも大いに影響されました。『プラクティカル・マジック』のサントラには先程触れましたが、スティーヴィー・ニックスも然り。ラーズの“There She Goes”をはじめ、90年代のロマンティックコメディ映画に使われていた曲の数々から得たインスピレーションも大きいですね。
それから、ローラ・マーリングからレジーナ・スペクターまで若い頃に親しんだフォークミュージックだったり、コリーヌ・ベイリー・レイのようなソウルミュージックの影響もたくさん受けています。でもこの期間は、今までにないくらいたくさんブルースを聞きましたね」
――あと、本作で繰り返し登場する〈川〉のイメージについても教えてください。
「アルバムの中で最初に完成した曲は“To Be Freeで、次に“Everlasting Love”を書き上げたんですが、この2曲での私はミュージシャンとしてそれまで自分が手にした全てのものを手放して、どこかへ逃げ出したような気持ちでいました。そして心の中で、友人であるサイモンと一緒にとある川に辿り着いたんです。2曲に共通するそんなフィーリングを維持するために、スタジオではいつも同じ場所にいました。それがプロダクションにおける道標になったんです。
今回は私自身がプロデューサーを務めていますが、プロデューサーとしての私のメソッドはまずイメージとサウンドを集めて、終始その世界の中に留まることでした。関わっている人たちやアルバムを構成する要素が、辿り着いた川のほとりから離れないよう気を配ったんです。と同時に、私は川の流れを追いかけて、最終的には海岸に辿り着く。“Moondance”や“Hold On”は制作の後半になって生まれた曲ですが、そこには愛する人とどこかに辿り着く情景が描かれていて、エレクトロニックなサウンドにも青い大海原のイメージを反映させています」