今なら愛について深みのある曲が書ける
――本当に素晴らしいアルバムが誕生したと思います。あなたのこれまでのキャリアは、本作を作るための準備期間だったようにも感じました。
「そうかもしれませんね。でも、どのアルバムにもそこに至るまでの準備期間というのはありました。例えば『Gloria』をリリースする時、人々がこのポップなアルバムを聞いた時の反応を想像したんです。人はコマーシャルな音楽はよりシンプルで、お金のために作られていると考えることがありますよね? でも、私はそうは思わなかった。なぜなら、私はチープなポップミュージックを愛して育ちましたから。だから『Gloria』のようなアルバムを作ることを目標にして、長い間準備をしていたような気がするんです。
『In The Lonely Hour』でデビューした私にとって、『Gloria』のようなポップな形で自分を表現することはひとつのチャレンジでもありました。『Hazel Eyes』についても同じように感じるんです。私はかねてから整合性のあるアルバムを作りたいと思っていました。田舎町の出身ですし、小さな村で育ち、自然の中で音楽を聞くことが多かったので、ナチュラルに感じられるアルバムを作りたかったんです。
私のお気に入りの映画のひとつに『プラクティカル・マジック』という作品があるのですが、そのサントラが素晴らしいのでぜひ聞いてみてほしい。実は『Hazel Eyes』にも大いに影響を与えているので」
――サンドラ・ブロックやニコール・キッドマンが出演しているファンタジー要素の強い映画ですよね。
「ええ。すごくロマンティックな映画なんです。魔女絡みのロマンティックコメディで、『Hazel Eyes』にはそのサントラと同じような起伏があると思います」
――『Hazel Eyes』の1曲目“Everlasting Love”に出てくる〈Sad night walker〉は、パートナーと出会う前のあなたのことですか?
「そうです。曲の前半はパートナーと出会う前に書いたんですが、インストゥルメンタルのパートに続く後半は、彼と出会って3年が経過してから書きました。この曲は誰かとの出会いの前夜を描いていて、出会いを経て美しい音楽が湧き起こり、ホーンの音がハッピーな未来へと連れていってくれる。そこでは一夜限りの関係が永遠の愛へと変化していくんです」
――長年あなたはハートブレイクの苦しみを歌ってきたと思いますが、こうして前向きなラブソングを歌う時はどんな気分でいますか?
「今回ラブソングを書く過程で、これまでの人生で最も多くの涙を流した気がします。それはきっと、それだけリアルな感情を曲に込められたという証明ですよね。20代前半の時にもラブソングを書こうと試みましたが、その時はイノセント過ぎて書けなかったんです。でも、今の私がパートナーに抱く愛は信じがたいほどリアルですし、ハッピーな愛でもある。
その反面、辛いことを乗り越えて手に入れた愛でも、その愛が脆くて、いつの日かそれが失われてしまうのではないかと恐れている部分もあります。そのせいか“My Guy”みたいに〈彼は自分のもの〉と歌うハッピーな曲であっても、聞いていると哀しい気持ちになるんです。このあまりにも美しいものが、もしかしたらなくなってしまうかもしれないと思うと怖くて仕方がなくて。でも、今までこのアルバムを作るのを待って良かったなと思っています。今なら愛について深みのある曲が書けますからね」