花澤香菜が攻めている。10月リリースの前作“ほほ笑みモード”ではSTUDIO APARTMENTとのタッグでクラブ・サウンドに挑み、新たな境地に踏み込んだかと思えば、そこから間髪を入れずに到着した7枚目のシングル“こきゅうとす”は、やくしまるえつこのトータル・プロデュースによる意欲作となった。
「相対性理論もやくしまるさんも、前から大好きで聴いていて。〈私って女子だな〉っていう気持ちになるんですよね。いい感じに散りばめられた毒の部分とか、それでも可愛い部分とかがあって。仕事をしているなかでアドレナリンが出てるのか、普段はどんどん逞しくなってしまうので、やくしまるさんの曲を聴いて乙女な気持ちになってます(笑)。音楽活動を始めて、誰にプロデュースをしてもらいたいか訊かれた時は、〈やくしまるさんがいい〉って言っていて、スタッフさんの間でも合うんじゃないかって話になっていたんですよ」。
花澤は、念願だったという今回のコラボを嬉々として語る。“こきゅうとす”とカップリングの“アブラカタブラ片思い”、どちらのメロディーも歌詞もやくしまる節が如何なく発揮されおり、やくしまるえつこの世界に花澤が潜り込んだよう。
「特に歌詞がやくしまるさんですよね。〈魔方陣〉とか結構ファンタジーな言葉のチョイスではあるんですけど、ちょっと精神世界みたいなところもあって。誰かに対して嘆くのではなくて、自分で必死にがんばって駆け抜けていこうとしている女の子なんだなって思い描きながら歌いました」。
2人の相性は、(字面だけで見てもワクワクするのに)期待をゆうに超えるものになった。花澤は、やくしまると入ったレコーディング、それからヴォーカル・ディレクションについて言葉を続ける。
「デモが届いた時に、やくしまるさんの仮歌が入っていて、可愛すぎてずっと聴いてました(笑)。私もやくしまるさんにディレクションしてもらっていくつか歌い方を試していくなかで、〈ちょっとがんばっている感じで、声を遠くに届けるように歌ってみようか〉ということになって。でも、何度も歌うと曲に慣れてしまうじゃないですか。そうなる前の必死さが声に表れているうちに録ろうということで、この形になりました。普通のレコーディングって、ブースとミキシング・ルームでマイクを通して会話するんですけど、やくしまるさんは直接私のところに来てくれて、譜面と照らし合わせてディレクションしてくれたり、ピアノを弾いてくれたり、一緒に歌ってくれたりしながらやってくださったので、かなりコミュニケーションを取りながら進められました。〈ここは悪魔のささやきっぽくやってみようか〉とか言ってくれたりして」。
その仕上がりに関しては、「私が言うのもなんですけど、めちゃくちゃマッチしてます(笑)。何度も何度も聴いてます。(歌手活動を)やってて本当によかったなって」とのことで、花澤にとっても自信作になったようだ。また、本作には原曲の〈裏返り〉をテーマにしたリミックスも収録。自身の音源がリミックスされることに関しては?
「おもしろいですね! 原曲の〈裏返り〉というコンセプトを聞いていたので、変わるだろうなとは思っていたんですけど、こんなに恐くなるんだと思って(笑)。“アブラカタブラ片思い”は能天気に歌っていたのに、リミックスのほうは魔女感が増しましたよね。最初はただキッチンで料理しているイメージだったんですけど、やくしまるさんに〈片思いの人の家に勝手に忍び込んで料理を作っているんだよ〉って教えてもらって。それを意識して歌ってはいたんですけど、リミックスは片思い相手の目線からになっているので、その恐さがさらに前に出ていますね」。
また、やくしまるは文字通りのトータル・プロデュースで、音源制作はもちろんのこと、ジャケット周りやMV、その衣裳など、このプロジェクトに関わっていないことがないという。封入応募券のデザインに至るまでやくしまるによるアート・ディレクションがなされており、その意味でも本作はこれまでとかなり異なるシングルと言えよう。
「こんなに嬉しいことはないですね。MVもとてもシュールで変わっていて、でもなんか素敵なので(笑)、ぜひ観てみてほしいです。曲もビデオも全部込みで、〈作品感〉がある一枚だと思います」。
▼やくしまるえつこ関連の近作
左から、やくしまるえつこの2013年作『RADIO ONSEN EUTOPIA』、相対性理論の2013年作『TOWN AGE』(共にみらいrecords)、2014年のコンピ『美少女戦士セーラームーン THE 20TH ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE』(スターチャイルド)、2014年のサントラ『TVアニメーション『スペース☆ダンディ』O.S.T.1 ベストヒット BBP』(flying DOG)、2014年のコンピ『大貫妙子トリビュート・アルバム -Tribute to Taeko Onuki-』(commmons)
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▼花澤香菜の近作を紹介
左から、2013年作『claire』、2014年作『25』、2014年のシングル“ほほ笑みモード”(すべてアニプレックス)
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