インタビュー

複数のソングライター擁する5人組、荒川ケンタウロスがメジャー初作で提示した〈何でもあり〉のポップス

複数のソングライター擁する5人組、荒川ケンタウロスがメジャー初作で提示した〈何でもあり〉のポップス

 こういうタイプのバンドが、メジャー・レーベルからきちんと作品をリリースできるのならば、悪い時代ではないと思う。アーティスト写真の印象とは裏腹に、中身はいたって普通の音楽家魂を持った生真面目なバンド。まったく個性の異なる複数のソングライターを擁し、己の信じたポップスの道を静かにひた走る5人組。満を持してのメジャー・デビューだ。

  「自分たちが良いと思ったことをやってるだけで、流行りがどうのこうのというのはまったくないです。良いと思ったメロディーを良いと思ったアレンジでやっていれば、それを総じて〈ポップス〉だと僕は思っているので。何でもありですよ」(楠本)。

荒川ケンタウロス 玉子の王様 コロムビア(2015)

 とはいえ、〈何でもあり〉は〈何でもいい〉ではなく、そこには明確な個性がある。メロディーから滲み出るエヴァーグリーン感。シンプルなフォーク・ロックの要素。メロウなシティー・ポップと、伝統的な歌謡曲の香り。特にメイン・ソングライターの楠本の作る曲には、日本人の琴線に触れる、ノスタルジックで親しみやすいメロディーが頻出する。

  「いちばん聴いていたのはLUNA SEAですけど、槇原敬之さん、ビートルズフィッシュマンズとかも大好きです。あと、80年代のアイドル歌謡曲が好きなんですよ。特に筒美京平さんが好きで、あの時代のアイドル歌謡のエモさとか、メロディーラインは、いろんな世代に響くものだと思うので。僕が目標としているのは、あらゆる世代に幅広く聴いてもらうことで、〈このジャンルはもうこの年では聴けないよ〉というのが嫌なので。そういう意味では王道で、エヴァーグリーンなものをめざしているんだと思います」(楠本)。

 このたび登場するミニ・アルバム『玉子の王様』には、マザーグースの物語にインスパイアされたリード曲“ハンプティダンプティ”を含む6曲を収録。楠本の作るセンチメンタルな青春感溢れる物語、場前の紡ぐ奇妙でシュールな詞世界、一戸の書き出すストレートな真情吐露。それぞれが会心の楽曲を持ち寄り、プロデュースに高野勲柏井日向を迎えた自信作だ。

  「特に楠本さんの“ハンプティダンプティ”がインパクトありますね。歌詞の世界観が、楠本さんの書く曲のなかでは新しい感じなんですよ。いままでの曲は、最初ちょっと曇っていても、最後は明るく希望が見える曲になっていたんですけど、これはずっとダークなまま。そこが僕はすごく良いと思った」(一戸)。

  「それがリード曲でいいのかな(笑)。でも、マザーグースの物語もそうですけど、これを聴いて教訓めいたものに聴こえる人もいるだろうし、〈ああ、こういう奴いるよな〉と思うかもしれない。歌詞は受け取る側の自由に楽しんでほしいです。作風は何でもいいんですよ。どういう曲をやっても良い曲だねと思わせたら勝ちだと思うので」(楠本)。

 今後の目標は?と訊くと、〈長く続けること〉と一言。今回がメジャー・デビューとはいえ、実はそれなりに長いキャリアを持つ5人。浮かれず慌てず、千里の道を一歩から歩み出す覚悟が頼もしい。そしてその先の大きな希望をイメージする力の強さが、よし、このバンドに賭けてみようという気持ちにさせてくれる。

  「フェスにも出たいです。僕らみたいなタイプのバンドは、ライヴハウスでやっているうちは、けっこう大変だと思うんですよ。4つ打ちのロックとかでバーッと盛り上げるわけじゃないので。ただ、いつかそれが逆転するんじゃないかな?と思うところがあるんですね。〈ポップス〉で売れていくということは、出だしは大変だけど、ある程度の規模まで行けば逆転するんじゃないかなと僕は思うので。だからフェスに出て、それを確かめてみたいです」(一戸)。

 

荒川ケンタウロス

一戸(ヴォーカル)、楠本(ギター)、土田(ベース)、場前(キーボード)、尾越(ドラムス)から成る5人組。2009年に東京で活動を開始。翌年9月より現編成となる。2011年8月にタワー限定シングル“天文学的少年”でCDデビューし、同年11月には初の全国流通盤となるミニ・アルバム『遊覧船の中で見る夜明けはいつも以上に美しい』が〈タワレコメン〉に選出されて話題となる。その後も〈MINAMI WHEEL〉などへの出演を含む精力的なライヴ活動と並行して、2012年11月にセカンド・ミニ・アルバム『Apartment』、2014年3月に初フル・アルバム『よどみに浮かぶうたかたは』を発表。メジャー・デビュー作となるミニ・アルバム『玉子の王様』(コロムビア)を2月4日にリリースする。

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