コロコロと形を変えていく真っ白な雲と私の歌

 このたびのファースト・アルバム『Fast Moving Clouds』のリリースと前後して、〈SXSW〉への出演も報じられ、いまジワジワと注目を集めているサンフランシスコのシンガー・ソングライター、サラ・ベス・ネルソン

SARAH BETHE NELSON Fast Moving Clouds Burger/BBQ(2015)

 アルバムのリード・トラックとしてネット上にアップしたメランコリックなピアノ・バラード“Paying”を、SPIN誌などがマジー・スターを引き合いに出して絶賛しているが、それは彼女のほんの一面にしかすぎないように思う。実際、地元の人気インディー・ポップ職人であるケリー・ストルツが共同プロデュースした本作は、“Paying”のようなドリーム・ポップのほかにも、アシッド・フォークや60sガールズ・ポップサイケ・ロックなど、曲ごとに異なるタグ付けができそうな、実に多彩な仕上がりとなった。バーガーらしいキッチュさや青々しさは希薄だが、バーテンダーとして働きながら観察してきたという人間模様を題材に、人生の一コマを切り取ったような深みのあるサラの音楽が、レーベルに新風を吹き込むことは間違いないだろう。

 

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