葡萄が実るまでの近年の個々の動きは……
ここでは、前作となる2005年のフル・アルバム『キラーストリート』以降のメンバーの個別仕事を紹介しよう。
まず桑田佳祐は、2007年の“明日晴れるかな”を皮切りに4枚のシングルを発表。その間、2010年には一旦食道がんの治療/療養期間に入ったものの、翌2011年にはソロとしての4作目『MUSICMAN』を上梓。「いまの自分が書ける言葉を素直に出していきたい」という当時の発言通り、ここでは〈55歳の日本人男性〉たる等身大の内面と〈音楽人間〉たる自身のルーツを素直に開陳している。その後、シングルを挿んで2012年にはベスト盤『I LOVE YOU -now & forever-』も登場。現時点での最新作は2013年のトリプルA面シングル『Yin Yang/涙をぶっとばせ!!/おいしい秘密』となっている。
続いて関口和之(ベース/ヴォーカル)は、2008年に関口和之 featuring 竹中直人・分山貴美子名義で『口笛とウクレレ2』を、2012年にはソロとして『UKULELE CARAVAN』を発表。後者ではつじあやのやYOU、MONGOL800のキヨサクにゴスペラーズの黒沢薫、さらには大貫妙子や原由子らを迎え、ゆったりとしたレイドバック感は全曲で共通ながらも、カントリー調から和情緒溢れるナンバーまで幅広いアレンジのウクレレ・アルバムを作り上げている。
また、松田弘はBOOGIE MATSUDAという架空のキャラ(?)に扮し、2008年にファンキーなディスコ作品『GOOD CELEBRATION』をリリース。青山テルマやSkoop On Somebody、一十三十一にFull Of Harmonyと共演陣も華やかなパーティー曲が目白押しだ。
紅一点の原由子は、自身名義としては2010年にベスト盤『ハラッド』を発表。その後は2012年公開のアニメ映画「ももへの手紙」へ書き下ろしの新曲“ウルワシマホロバ~美しき場所~”を提供したほか、上述の関口の作品や冨田ラボの2013年作『Joyous』などのゲスト・ヴォーカルとしてうららかな歌声を披露。桑田と二人でコーラスを務めた竹内まりやの“静かな伝説”も話題となった。
そして、最後は野沢秀行。彼は自身の作品リリースはないものの、ギタリストの杉本篤彦とドラマーの大河原亮三によるユニット、R134の2009年のミニ・アルバム『ブルー・モーメント』に参加。晩夏を思わせるアダルトな音世界の演出に一役買っている。