先日このコラムを読んだ友人に「ルーツ・ダブ・ファンから後ろ指さされそうな選曲だね」と斬られました。TAMTAM自体がルーツと現代っ子の混血的な存在だから、そこ突っ込まんといて……と弁明しつつ、めげずにゆくぞ! ゆけばわかるさ!
今回テーマの〈ディレイ〉とは、要はやまびこ的なエコーのことですが、〈殺傷力が高め〉という点が鍵。どんな音か想像つきますか? 例えるなら、〈ヤッホー〉と叫んだら5回ぐらい木霊して、6回目からブーメラン的に勢いを増し、最終的には数倍うるさくなって帰ってきた!みたいな音。
ところで、最近エイドリアン・シャーウッドのリアルタイム・ダブワイズ動画を見つけていたく感動しまして。改めてCDを聴き直してますが、彼の作品ではかなり暴力的なディレイを堪能できます。『Echo Dek』(プライマル・スクリームがダブを意識して作った97年作『Vanishing Point』を、全編ダブ・ミックスし直した凄いやつ)はどの曲も強烈ですが、今回のテーマには3曲目の“Ju-87”がピッタリ。ほぼすべての楽器に20秒弱のロング・ディレイを順番にかけてきます。声、ギター、スネアはもちろん、ベースにまで。斬り付けるように尖って戻ってくる音を、拍手で迎えたくなります(笑)。さすがUKダブ界の巨匠、このメチャクチャ感は他に類を見ません。
【参考動画】ADRIAN SHERWOOD LIVE IN JAPAN
ダブ以外での名ディレイ作品は、ROVOの野音ライヴ盤『LIVE at 日比谷野音 2003.05.05 〜Man Drive Trance Special〜』、特に冒頭の“HORSESS”。ディレイが飛び交うなか、カオスでも決してノイジーにならないのが凄い。音楽の一部として聴けてしまうんです。きっと、楽曲もディレイ音まで想定して作っているんだろうな。また、Flying Rhythmsの『DO THE WAVES』は、余計な音が一切入っておらず、凛と際立ったディレイ・サウンドを楽しめます。演奏陣が突然畳み掛けるように同じフレーズを繰り返すと、それに呼応するように深く長いディレイがかかる。一発録りのセッションでこれをやってると思うと、ドキドキしながら聴けます。
TAMTAMもライヴはCD以上のダブをめざしているので、見習うところだらけです!
【参考動画】Flying Rhythms - LIVE @ TAICOCLUB'10
▼文中に登場した作品
左から、プライマル・スクリームの97年のダブ・リミックス盤『Echo Dek』(Creation)、ROVOの2003年のライヴ盤『LIVE at 日比谷野音 2003.05.05 〜Man Drive Trance Special〜』(wonderground)、Flying Rhythmsの2006年作『DO THE WAVES』(時空/ラストラム)
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KURO
TAMTAMのヴォーカリスト。タワー限定シングル『クライマクス&REMIXES』に続き、4月23日にはミニ・アルバム『For Bored Dancers』(スピードスター)も登場! 詳細はオフィシャルサイト〈http://tamtam.mao-jp.com/〉へGO!!