今回は、最近気になって仕方がないあるアーティストのことを書きたいと思います。
その人物は、先日にこちらの記事でも紹介したバンド・プロジェクト、WOZNIAK名義でもニュー・アルバム『Solution』のリリースを5月3日に控える超多忙なマルチ・ミュージシャン、Yuta Hoshi。
超多忙、と書きましたが、まず彼はダビーなポスト・ロック寄りのサウンドを鳴らすバンド、HABITのギタリストとして活動するかたわら、2012年には元DACOTA SPEAKERのa.t.p.、BENCHと共にダブステップやジューク/フットワークといったベース・ミュージックを生演奏する新バンド、DALLJUB STEP CLUBを結成。こちらではサンプラーやエフェクトを駆使したヴォイス・パフォーマンスをメインにしつつ、ライヴではアジテーター的な役割もこなすなど八面六臂の活躍を見せています。
さらに、自身は東京を活動拠点とするにもかかわらず、レディオヘッドが引き合いに出されることも多い京都のバンド、OUTATBEROにドラマーとして今年1月に正式加入(練習どうしてるんだろ)。そのほかにも単発で多数のバンドやプロジェクトに参加しています。そのすべてを同時進行でこなしながら、きっちりと自分のプロジェクトでのクリエイションも進めているわけで……ぜひスケジュール管理術を教えてもらいたいほど、傍から見ていても感心するくらい多忙なミュージシャンです。
そんな彼を初めて知ったのは2009年頃のこと。たまたまYouTubeで発見したWOZNIAKのライヴ動画がきっかけでした(この頃は、昨年脱退した荒井優来との2人編成)。個人的には当時、ポスト・ロックやインスト・バンドのシーンにあるような音楽に対してはお腹いっぱいな状態ではあったのですが、ベタなエモーションに頼らず、ループを駆使しながらマスロックとも違った構築美を2人だけで築き上げるアレンジ力、シンプルなビートを叩いていても突出したリズム感が隠しきれないHoshiくんのドラマーとしての才能に「お!」っと思い、彼らの動向をチェックするようになりました。
その後、彼のTwitterを見ていると〈マルセル・デッドマン〉やら〈ベルクハイン〉やら〈オストグット・トン〉といったベルリンのアンダーグラウンドなミニマル・テクノ/ハウス界隈のキーワードが頻出するようになります。そんな流れを受けて2013年3月に自主レーベル=77ROMANCEからリリースされたWOZNIAKのファースト・アルバム『Effects And Nice』では、もはやいわゆるインスト・バンドとしての面影は残っておらず、生ドラムやシンセなどのアナログ楽器をあくまで音素材のひとつとして配したカッチカチなミニマル・テクノが鳴らされいて、びっくりすると同時に「ここに繋がったか~」と深く納得したのでした。
初めてライヴを観たのはその後のこと。彼らがユニークだったのは、テッキーなサウンドを指向しつつもシーケンサー(シンセやリズム・マシンなどの同期装置)を使わないがためにどうしてもグルーヴに人間っぽさが残り、その多くをHoshiくんの持つワイルドなというかアグレッシヴなリズム感が支配しているところ。この日のライヴもそんなWOZNIAKの繰り出すビートにやらっれぱなしだったのですが、さらにビビったのが、なんとジェフ・ミルズのクラシック“The Bells”のカヴァーが飛び出して。下掲の動画はそのときのもの?なのかよく分かりませんが、9分から10分あたりにかけて爆発する生ドラムが最高です。
ここまできて、ようやく冒頭で書いた〈最近気になる〉に辿り着けました。あれだけさまざまなバンドに参加しているにも関わらず、彼は最近前述の『Effects And Nice』のミニマル路線を推し進めるソロ・プロジェクト、TESTAVを始動。しかも、出音こそ異なるものの、アンダーグラウンドなダンス・ミュージック・シーンを席巻するロウハウス勢と同じ〈PC無し、シンセやリズム・マシンの実機だけでパフォーマンスを行う〉という手法を無意識に採り入れてて(ローランドの新たなリズム・マシン、TR-8も導入!)、「この嗅覚はタダモノではない!」とおののいていたところに、WOZNIAK新作の報が飛び込んできた……というわけです。さらにさらに、先週には一番上に貼ったWOZNIAK“Heptagon”のPVを制作したScott AllenにTESTAVが楽曲提供した最新映像も公開に。ワーカホリックにもほどがあるよ!
とりあえずこれから見逃せないのは、WOZNIAKのニュー・アルバム『Solution』の発売と、5月10日(土)に東京・下北沢ERAで開催される自主企画イヴェント〈MAGNE7〉。ライヴはサポート・メンバーを迎えて行われるとのことで、バンドの最新モードを確認してこようかと思います。