結成から24年、12作目にして初のセルフ・タイトル作が到着した。ポリリズミックな人力ドラムンベースで奏でるスピリチュアル・ジャズ、といった趣の冒頭曲から只事ではないカッコ良さ。プログレッシヴな組曲“ARCA”に、フォークやエキゾ要素などで新たな風も吹かせつつ、神がかった演奏力で生み出す陶酔や昂揚感、グルーヴはさらなる高みにある。圧倒的な個性がありながら常に進化し続ける、超然とした佇まいこそ彼らの本領だ。

 


山本精一(ギター)、勝井祐二(ヴァイオリン)、芳垣安洋(ドラムス/パーカション)、岡部洋一(ドラムス/パーカション)、原田仁(ベース)、益子樹(シンセサイザー)からなるバンド、ROVO。問答無用、説明不要、不世出、並び立つ者のいないスーパー(〈すごい〉という意味と、〈それを超えている〉という意味で)・ダンス・バンドから、『XI (eleven)』(2016年)以来4年ぶりのニュー・アルバムが届けられた。

12作目にして、ついにタイトルにバンド名を冠していること。それは、〈結成24年目にしてバンドの意思と楽曲と演奏が完全に一体化した最高傑作〉という彼らの自負、自信の表れにちがいない。その言葉のとおりに、どこまでも上昇していくようなライブ体験のあの感覚、塊と化した音が降ってきて身体に覆い被さってくるようなROVOのパフォーマンスをここでは聴くことができる。これこそが真骨頂でありROVOの音楽なのだ、と本作は力強く告げている。

“SINO”(2001年)の続編か〈地下茎〉を伸ばしたアップデート版とおぼしき“SINO RHIZOME”で幕を開け、ロック的なギター・リフと8ビートで突き進むダイナミックな“KAMARA”へ。続くのは、詩的でプロッグ・ロック風の“ARCA”と、ファンクやディスコ、アフロ・ビートのノリを強調した“AXETO”。抑えたテンポの“NOVOS”はどこまでもユーフォリックで、同名の傑作アルバムと同じ名前を持つ“SAI”のフィナーレは美しく、なんとも感動だ。総じてサウンド・プロダクションはこれまでにないほど生々しく、聴き手に近く、ライブ感にあふれており、〈円熟〉なんてものからはほど遠いみずみずしさをたたえている。

山本が先日リリースした新作『CAFÉ BRAIN』とはまた異なる音の桃源郷が、ここにある。いまのこの状況ではROVOのライブを生で浴びることなんて想像できないものの、そのかわりに自宅のスピーカーで、あるいはヘッドホンをつけて、爆音でこのアルバムを鳴らし、ひとり踊ろうじゃないか。『ROVO』はロックダウンされたあなたの部屋を、まるごと宇宙空間へとトランスファーしてくれるだろう。

※このレビューは2020年8月20日発行の「intoxicate vol.147」に掲載された記事の拡大版です