COLUMN

ロバート・グラスパーの新たな挑戦! 現代クラシック界を代表する指揮者・西本智実との共演コンサートを6月に開催

【billboard classics World Premium】Robert Glasper Experiment × Tomomi Nishimoto 〈Symphonic Concert〉

(C)塩澤秀樹

 

現代の音楽シーンの最先端を走るグラミー賞アーティスト、ロバート・グラスパーと、世界の舞台で活躍する指揮者、西本智実の初共演が実現!

 YouTubeにロバート・グラスパー・エクスペリメントが2014年にオランダのノース・シー・ジャズ・フェスティバルでメトロポール・オーケストラと共演した動画がまるまるアップされていて、僕らはそれをいつでも見ることができる。アレンジャーのヴィンス・メンドーサ率いる世界最高峰のオーケストラがグラスパーの楽曲を鮮やかに彩るこの音源は、時にエレクトロニックな表現をも大胆に投入するエクスペリメントのサウンドが、オーケストラのアンサンブルと完璧に溶け合う様が聴き手を圧倒する。超高速人力ドラムンベースの上をKCベンジャミンのヴォコーダーとエフェクティブなシンセ、そしてグラスパーのエレピがメロウに舞う《Let It Ride》では、楽曲が持っている高揚感を分厚いホーンアンサンブルと流麗なストリングスが更に押し上げながら、アコースティックとエレクトロニクスのテクスチャーが異次元の心地よさをもたらしてくれる。

  ヒップホップやR&B、テクノ、ビートミュージックを通過した今、オーケストラは新たなテクスチャーやグルーヴを生む刺激的な装置として、その魅力を再発見されつつある。前述のメトロポール・オーケストラで言えば、2014年にはUKが生んだ個性的なシンガー・ソングライター、ローラ・マヴーラが彼らを起用した作品を発表し、2015年にはアメリカの音楽シーンを席巻する新世代フュージョン/ファンク集団スナーキー・パピーがメジャーデビューに際し、彼らとの共演を選択している。そういえば、デヴィッド・ボウイが2014年に突如リリースした新曲“Sue (Or In A Season Of Crime) ”は、ジャズとクラシックを横断する世界最高のオーケストラ、マリア・シュナイダー・オーケストラとの共演だった。どの作品も、オーケストラのアンサンブルがただのゴージャスさでも、ノスタルジアでもなく、新たな響きを提供しているのが印象的だ。

 2015年6月、ロバート・グラスパーは新たな挑戦を日本で行う。日本を代表する指揮者として、2013年から3年連続ヴァチカン国際音楽祭に招聘される等、世界を舞台に活躍中の西本智実と、彼女が芸術監督を務めるイルミナートフィルハーモニーオーケストラとの共演だ。この現代のクラシック音楽界を代表する指揮者の西本智実との共演に際し、「アメリカやヨーロッパでもクラシックのアーティストやオーケストラと共演したことがある。日本のクラシックミュージシャンとも共演したいといつも思っていたので、光栄に思っているよ」と語るグラスパーが、日本屈指の国際的に進出するクラシックオーケストラと共にどんなサウンドを聴かせてくれるのか、興味は尽きない。

  ノース・シー・ジャズ・フェスティバルでのメトロポール・オーケストラとの共演では、オーケストラのアレンジを指揮者のヴィンス・メンドーサと一緒に行っていたが、今回は西本智実と共にどんなアレンジを生み出すのだろうか。「音楽をペインティングに例えるなら、そこには数えきれないくらいたくさんの色が存在する。オーケストラでは、それぞれのプレーヤーがキャンバスに個々の空間が与えられる。その結果、美しい絵が完成するんだ」との発言と併せてグラスパー自身の演奏も普段のトリオやエクスペリメントの時とは違うものになるはずだと答えているだけに、どんなキャンバスを思い描いているのか非常に興味深い。

 

 

 そして、選曲にも注目が集まる。〈ブラック・レディオ〉の収録曲を始め、ピアノトリオの楽曲を含め、自身の楽曲を数多く演奏することに加え、「ぜひともJ-Dillaの曲を演奏したいと思っているよ」と語っているが、クラシックのオーケストラがJ-Dillaの楽曲をどう生まれ変わらせるのか、どんな魅力を炙り出すのかには、期待せずにはいられない。

 更に今回は目玉としてモーツァルト:ピアノ協奏曲第21番〈第二楽章〉を演奏することが決定した。作曲家ではヒンデミットラヴェル、モーツァルトを、ピアニストでは、モーツァルト、バッハラン・ランが好きだというグラスパーだが、これまでにコンサートの場ではクラシックの曲を演奏したことは一度もない。今回のコンサートを“挑戦”と位置付けているだけに、貴重な一夜となりそうだ。

 グラスパーは最近もケンドリック・ラマー『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』の多数の曲に参加し、大きな話題になっている。そんなジャズやヒップホップ、R&Bを自由に行き来し、世界の音楽シーンのエッジに立つグラスパーがクラシックの領域にまで踏み込んでいく今回のコンサートはかなり特別なものになるはずだ。これまでにない“多くの色彩”が加わる未知のグラスパーのサウンドを肌で体感できるこのコンサートを見逃すわけにはいかない。

【参考音源】ロバート・グラスパーが参加したケンドリック・ラマー
『To Pimp A Butterfly』収録曲“The Blacker The Berry”

 

LIVE INFORMATION

【日時】6/8(月)18:00開場 19:00開演
【会場】東京芸術劇場コンサートホール
【出演】西本智実(指揮)イルミナートフィルハーモニーオーケストラ ロバート・グラスパー・エクスペリメント
【演奏曲】モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番 第2楽章/“Smells Like Teen Spirit”“I Stand Alone”他
http://billboard-cc.com/classics/2015/03/world_premium_rt/

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