本特集と地続きの作品を見渡したとき、頻繁に目にする名前がある。それは、クラシック・ソウル×ネオ・ソウルなトリオ・バンド=Ovallのドラマーであり、シンガー/ビートメイカーとしてソロでも活躍するmabanua。2012年作『only the facts』も柔らかなヴァイブを備えたトラックと本人のとろけるようなスウィート・ヴォイスに溺れずにはいられない、シンガー・ソングライター然とした傑作だったが、彼のそうしたマナーはポップ・フィールドにおける外部プロデュース作品でも貫かれている。
彼の名が広い範囲に伝播するきっかけとなったのは、恐らく2011年の『Dark Candy』を発端に、最新作『Secret Garden』まで継続して関与しているCharaとの仕事。2013年には彼女と同じくコケティッシュな歌唱が魅力の川本真琴のミニ・アルバム『願いがかわるまでに』にも携わり、90年代デビューのミューズたちがそもそも内包している甘いソウルを改めて提示すると、2014年にはアニメ「スペース☆ダンディ」のサントラで菅野よう子×泉まくらとのメロウなコラボも。
さらに今年はいなたさとアーバンなムードが同居する思い出野郎Aチームや、チルウェイヴ/ディスコ・ファンク経由のシティー・ポップを鳴らすAwesome City Clubなどの注目新人も手掛けており、彼の手腕が世代を超えて求められる状況はまだまだ続きそうだ。