Love City 2015
[ 特集 ]都市インディーの源流
音楽の聴かれ方、表現の仕方が大きく変化した90年代。その幸福な時代を起点に、多様化する〈街の音楽〉など現在の日本のインディー界隈の源流を紐解いてみよう
オリジナル・ラブ
田島貴男のソウル・フィーリングと雑食性をフレッシュに更新した新作が登場!
30年近いキャリアを通じて、アルバムごとと言っていいレヴェルで音楽性を大胆に変容させ続け、毎度リスナーを驚かせてきたオリジナル・ラブ=田島貴男。その一方で、どの時代も変わらず、彼の紡ぐ音からはソウル・ミュージックのフィーリングが感じられるとも言えるだろう。そして、そんな彼のソウル趣味がもっとも色濃く、ストレートに打ち出された作品として挙げられるのが94年の『風の歌を聴け』と翌年の『RAINBOW RACE』だ。大きなブレイクを遂げた時期ということもあり、オリジナル・ラブと聞いてこの2枚をまずイメージする向きも多いに違いない。
それから約20年を経て届けられた17枚目のオリジナル・アルバム『ラヴァーマン』には、先述した2作のボトムを担っていた佐野康夫(ドラムス)と小松秀行(ベース)が久々に参加。かつて彼らが練り上げたソウル・マナーのグルーヴとスウィートネスが、改めて吹き込まれた作品となった。“四季と歌”などで味わえるタイトなアンサンブルが、往時の感覚を紐解きながら心地良く心身を揺さぶってくれる。
とは言え本作は、90年代のスタイルに回帰した作品というわけでもない。表題曲のディスコティークな意匠は当時は見られなかったものだし、どちらかというとダフト・パンク“Get Lucky”以降のモードに対するアンサーという意味合いを感じる。またエレクトロニックなアプローチの“クレイジーアバウチュ”があれば、トロピカルでエキゾな風合いの“今夜はおやすみ”のようなナンバーも混ぜ込まれており、ソウルに留まらない田島の雑食性こそが明快に打ち出されているのだ。
一時代を築いたリズム隊の音を、いまならばどのように鳴らすべきか――『ラヴァーマン』からはそんなヴィジョンが感じ取れる。エネルギッシュに前進し続けるオリジナル・ラブらしい、2015年のフレッシュネスが詰まった新作だ。