インタビュー

「バードマン」サントラで注目のドラマー、アントニオ・サンチェスが語るジャズ作曲家として新たな次元に立った新作

Photo by Tsuneo Koga

 

映画『バードマン』のサウンドトラックでも注目を集めた、“世界一ラッキーな”ドラマー

 「それは、まさに今だね」。

 それ、転機は何ですかという問いに対する、彼の答えだ。過去の大きな出来事をあげずに、こういう“現在第一”な返事をする人は珍しい。

 「だって、新作『ザ・メリディアン・スイート』が出るし、映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のサントラも担当するなど、いろんなことが重なってビッグ・イヤーになっているからね。とくに『ザ・メリディアン・スイート』はとても野心的な内容で、ぼくにとってとても大切な作品だ」

ANTONIO SANCHEZ The Meridian Suite CAMJAZZ/キングインターナショナル(2015)

 その新作は、ジョン・エスクリート(ピアノ)他の俊英奏者を擁し、ストーリー性豊かなジャズ作曲家として新たな次元に立ったと思わせる内容を持つ。

 「新しい視点のもと、小説を書こうという感じだった。これまでアルバムのために作曲をする場合、まず1時間の時間があると事前に考え、各曲の長さを割り振ったり、ラジオでもかかる曲を入れなきゃとか、考えていた。でも、今回はそんな事は一切考慮に入れず、物語を追うようにじっくりと曲を書いたんだ」

 即興という“窓”をどこかにおいた、綿密に練られたサウンド絵巻。そんな新作の内容は、彼をして進歩的なジャズを作ろうとした成果なのか。それとも、ジャズに捕われずに自分らしい音楽を求めた結果なのか。

 「僕の書く曲は、普段好きで聴いているものに影響されている。ジャズ、ロック、即興音楽、フリー・ジャズ、エレクトロ・ミュージック、ネオ・ソウル、ダンス・ミュージック、ドラムン・ベース……。そういう意味では、ジャズという枠をきっちり抱えたくないという気持ちはある」

 新作には、タナ・アレクサという女性をフィーチャーした曲もある。クロアチア人両親のもとNYで生まれたアレクサは彼の婚約者で、その2014年作『Ode To Heroes』(Jazz Village)はサンチェスが制作している。すでに10年以上在籍するパット・メセニーのレコーディングや長丁場のツアーの傍ら、よくぞ様々な個人活動をする時間があるなと驚嘆してしまうが。

 「パットのツアーの合間にやっている。新作の曲も、小さなキーボードを用いて、ホテルで作ったようなものさ。結構、それで質の高いデモを作ってしまうよ」

 映画『バードマン』のサントラはドラム・ソロ曲で成り立つものであったが、次はドラム・ソロのリーダー作を作ろうかと考えている。

 「『ザ・メリディアン・スイート』がかなり大きなプロジェクトであったので、もう少し小さなものをやりたい。とにかく、いろんな事にあたれて、僕は世界で一番ラッキーなドラマーだと思っているよ」

【参考動画】アントニオ・サンチェスによる2014年のサントラ『Birdman』収録曲“Doors And Distance”
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