バトルスという名の伝説は、ドン・キャバレロやヘルメットなどで活躍した凄腕プレイヤーが集い、2002年にNYで動き出しました。彼らは2004年に3つのEPを別々のレーベルから発表し、2年後の2006年にその3枚をまとめた『EP C/B EP』でワープからインターナショナル・デビューを飾ります。そして翌年、祭り囃子のようなリズムと加工ヴォイスによって昂揚感を煽るシングル“Atlas”と、続くファースト・アルバム『Mirrored』がヒット(後者は日本でもオリコン初登場9位を記録しましたっけ!)。たちまちマス・ロック・シーンの頂点に駆け上がったバンドは、そのまま上昇気流に乗ってリミックスやライヴ音源を収めたEP『Tonto+』をリリース。ワールド・ツアーも成功させ、しばらく黄金期は続くかに思えました。
ところが2009年、2作目の完成間近というタイミングにタイヨンダイ・ブラクストンが脱退。残ったメンバーで最初からアルバムを作り直しながら、グループの方向性も見直さなければならないという、大きな課題を突き付けられたのです。こうして苦難の末に誕生した2011年作『Gloss Drop』は、タイの抜けた穴を埋めるように、ゲイリー・ニューマンやカズ・マキノ(ブロンド・レッドヘッド)ら多数のゲスト・ヴォーカリストを迎えた作りに。「いろいろ盛り込みすぎて情報過多になっちゃった」とは本人たちの弁ですが、ハドソン・モホークやコード9らが手を貸したそのリミックス盤『Dross Glop』も含め、ここでバンドはクラブ・ミュージックとの親和性の高さを改めて誇示したのです。このグループの最大の特徴と言えば、ジョンの強靭なドラム・ループを核としたビート・オリエンテッドなプロダクション。そんなバトルス・サウンドの魅力を、全曲インストで勝負した『La Di Da Di』がよりくっきりと浮き彫りにしてくれることでしょう。