コラム

〈21世紀の『上を向いて歩こう』〉 大友良英や福原美穂ら、世代を越えたアーティストによって奏される中村八大の世界

21世紀の『上を向いて歩こう』
大友良英から新世代へと繋がる、中村八大の名曲の数々

 

(C)佐藤類

 

 《上を向いて歩こう》は1961年の夏に生まれた。1960年安保闘争の翌年。7月の『第三回中村八大リサイタル』で坂本九が歌い、NHK音楽バラエティー番組『夢であいましょう』のために8月の生放送で録音してレコード発売へ。同番組の“今月のうた”として10月と11月にオンエアされヒット曲に。

 作曲の中村八大は、当時30歳のモダン・ジャズ・ピアニスト。作詞の永六輔は、28歳の放送作家。坂本九は、19歳のロカビリー・シンガー。若き才人たちは〈六八九トリオ〉と呼ばれた。

 やがて《上を向いて…》は、1963年「SUKIYAKI」ソングとして全米ヒットチャートの1位に。さらに世界の人々を魅了して約70カ国で発売。民族も国境も越えて琴線にふれるものとは…。

 中村八大の生い立ちをひもとくと、1931年満州事変の年に中国の青島で生まれ、幼少期から姉の習うピアノの音色に親しむ。小学4年生の時に単身で2年間の「東京留学」。太平洋戦争が勃発し表現の不自由な時代へ。青島に戻った後、亡命ユダヤ人の音楽家にクラシックを学ぶ。高校時代はジャズにめざめ、早稲田大学在学中にデビューして人気者に。恵まれた星の下に生まれたが、歴史の大波の中でその才能はいつも孤独と背中合わせだった。

 ご子息の中村力丸によると、『中村八大さんは、“ゴキゲンな人”。遺してくれた表情も、話してくれたことも、もちろん演奏や楽曲も、全部“ゴキゲン”なものばかり。それだけに、そのような音楽家の人生が、孤独や苦悩や、焦りに襲われていないはずはありません。音楽と仲間の方たちが救ってくださったのです』。

 11月3日にKAAT神奈川芸術劇場で催される「21世紀の『上を向いて歩こう』」の副題は”Young person's guide to 'Hachidai-san'”。

 出演は、大友良英スペシャルバンド、ゲストに3組の女性シンガー&グループ。全国から集った女子中高生ヴォーカルユニット・Little Glee Monster。北海道から世界に飛び出したソウルミュージック歌手・福原美穂。広島出身で七色の声と僧籍を持つシンガーソングライター・二階堂和美

 世代を越えたアーティストにより奏される中村八大の珠玉のナンバー。「音楽の実験室」は、未来にバトンが渡されていくセレモニーでもある。かつて斬新で革新的とされたものが、やがて国民的に愛される存在になり、温故知新で磨かれていく。心根の良いものは淘汰されて残る。本物の芸術とはかくあるべきだと信じたい。文化の日、KAAT神奈川芸術劇場に足を運ぶと、新たなる奇跡の瞬間に立ち合えるかもしれない。

 

LIVE INFORMATION
Young person’s guide to ‘Hachidai-san’
21世紀の『上を向いて歩こう』

○11/3(火・祝)15:00開演 
会場:KAAT神奈川芸術劇場《ホール》
出演:大友良英スペシャルバンド
Little Glee Monster
福原美穂
二階堂和美
www.kaat.jp/

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