OPUS OF THE YEAR 2022
[ 特集 ] bounceが選ぶ2022年の100枚+
そもそも私たちは何と戦っているのか……と立ち止まらなくもない。それでも、そんな日々を彩った音が、こんなアルバムたちと共にいい記憶として残っていきますように!
ONE HUNDRED PLUS ONE 2022
ライター陣の選ぶ2022年の〈+1枚〉
●赤瀧洋二
瞬発力のある音楽ももちろん魅力的だが、長く愛聴できる普遍性のある音楽が、歳を重ねるごとに好きになっていくここ数年。必然的にアメリカーナ系を聴くことが多くなるが、なかでもベストだったのがこの作品で、ソウル、フォーク、レゲエと前作に比べ、多様な音楽性が楽しめる一方、彼女のブルース・フィーリングがシンプルに聴き手の心の奥底に突き刺さる傑作と言っていい。個人的には忙しく過ごした2022年だが、自身に正気を取り戻したい時に大変お世話になりました。
●荒金良介
ドイツ最大級のメタルフェス〈Wacken Open Air 2019〉にて、堂々ヘッドライナーを務めた豪州発のパークウェイ・ドライヴ。彼らの7枚目のアルバムは、モダン・メタルの最頂点を刻む大傑作だった。大会場で映える勇壮かつ壮大な楽曲群は、貫禄の出来栄え。ターンスタイルやソウル・グロー同様、いまもっともライヴを観たいバンドだ。2022年の来日公演はコード・オレンジ、ゴジラのライヴが強烈すぎた。日本の新世代メタルコア、SABLE HILLSも要注目!
●池谷瑛子
軽い気持ちで始めたジム通いにドはまりし、いまや週5で肉体改善に励むなかでいちばん心に響いたのが本作。筋トレ時のマインドからジムあるあるまでトレーニーに響くパンチラインだらけで、始める前には〈どーせやるなら効かす〉と呟き、キツい時に思わず出る声は〈づ~〉、帰る前は〈最後マシンめっちゃ拭くよ〉と、アルバム中のリリックだけでジム内を過ごすほど影響を受けてます。健康のために〈ほんとやった方がいいよみんなも〉!
●一ノ木裕之
フェスも行きゃいいもんだなと改めて2022(ばってん少女隊 YEAH!!)。あとは毎度つまんない並びをどうにかしてくれれば(お前がフェスやれ)。円安まっしぐらでますます来日勢も遠のくと思えば歯ぎしりで骨格ゆがみそうだけど、本作は救いの一つ。モス・コックの長尺作やアシュリー・ポール、コール・ピュリスの諸作にマヤ・シェンフェルド、バランガンなどなどありつつ、サインホ・ナムチラクとスランバーランドの共作にぶっ飛ばされてそろそろ年の瀬。
●大原かおり
かつての〈売れてるものが好き/売れ線なんて聴かない〉という両極の嗜好がハッキリしていた時代を経験した身としては、リスナーもメディアも数の論理オンリーになってしまってる一辺倒な感じとか、その結果レポートが音楽の深い分析とイコールに捉えられてる状況とかを見るにつけ、大変だなと思ってしまいます。でも、本当は自分の本当に好きなものこそが本当に尊いというのはみんな思っているはずだと思いたい年末。いい作品はいくらでもあるので!
●小野田 雄
コロンビア出身ベルリン在住の実験音楽家が想像力と知性、モジュラー・シンセと生楽器、多様なリズムを元に織り上げた豊潤なSF的ラテン音楽。その他にもロザリアを手掛けるスペイン出身のエル・グインチョ、マヌ・チャオと共演を果たしたペルー出身のソフィア・クルテシス、凄腕ドラマーのウィリー・ロドリゲス・キニョネスを迎え、チカーノ・ロックの進化を現代に体現したマーズ・ヴォルタなど、現代のラテン音楽を担う才能に魅せられた一年でした。
●香椎 恵
こましゃくれた作品と気が合わず、ざっくりと広義のダンス・ミュージックをずっと聴いていた感じ。オマーSの傑作『Can’t Change』を取っかかりにワジードやセオ・パリッシュの良ミックスが続いてデトロイト気分になったので、アンドレスのミックステープも欲しいと思ったけど手に入らず……なれど入手できないことの価値を改めて感じたり。なかでもソフィ・タッカーは良かったし、オデッザやフレッド・アゲインも楽しく聴いた一年でした。
●金子厚武
2023年春に解散することを発表したbonobos。20年以上に及ぶ歴史のラストを飾るアルバム『.jp』は、研ぎ澄まされたバンド・アンサンブル、緻密なポスト・プロダクション、日英韓の3か国語を混ぜ、〈それぞれ光る〉社会を祈る歌詞によって、今この時代に鳴らされるべき、文句なしの最高傑作に仕上がった。だからこそ、解散は惜しいとも思ってしまうのだが、とにかく来年3月までの彼らをしっかり見届けたい。Thank You bonobos!