CASIOとKADOKAWAが固定観念に囚われない自由なスタイルの音楽を提供する新レーベル、Mono Creation。昨年設立され、GOONTRAX発の名シリーズ〈IN YA MELLOW TONE〉のカタログからの楽曲をリミックスしたコンピ『Colors of Life』のリリースに加え、ヴォーカリスト/ピアニスト/コンポーザーのEmily Styler、ピアニスト/コンポーザーのLee Ayulといった女性アーティストの麗しい作品を送り出してきた。

そんなMono Creationの第3弾アーティストとして、このたびピアニスト/コンポーザーのStella.J.Cがデビュー。先の『Colors of Life』にサウンド・プロデューサーとして参加していた彼女が、オランダのシンガーであるウーター・ヘメル、ギタリストの関口シンゴ、ピアニストの平戸祐介という錚々たる面々がサポートした初シングル“Stronger Every Day”をiTunes限定で発表した。そしてMikikiでは、先日Billboard Live TOKYOで行われたStella.J.C.“Stronger Every Day”のリリース・パーティーに潜入! 豪華な面々が顔を揃えた当日の模様をお届けしよう。

Stella.J.C Stronger Every Day Mono Creation(2015)

Billboard Live TOKYOでのパーティーらしい招待客への小粋なおもてなしがありつつ、今回Stella.J.Cをサポートするスペシャル・バンド――関口シンゴ(ギター)、Shingo Suzuki(ベース)、平戸祐介(ピアノ)、鈴木賢一郎(ドラムス)によるオープニング演奏に続いて、本日の主役・Stella.J.Cが登場。軽い挨拶の後に“Stronger Every Day”でヴォーカルを取ったウーター・ヘメルも招き入れ、メイン・アクトのステージがスタートした。タイトなリズムに自然と身体が揺れるウーターのオリジナル曲“Breezy”は、流石歌い慣れた自身のナンバーだけあって彼の真骨頂と言えるしなやかな歌唱で魅せ、続く今年リリースされた関口シンゴのソロ最新作『Brilliant』に収録のウーター参加曲“Who You Gonna Hold Tight”では清々しく疾走する爽やかなサウンドが心地良く、ついうっとりしてしまう瞬間も。

関口シンゴの2015年作『Brilliant』収録曲、ウーター・ヘメルが参加した“Who You Gonna Hold Tight”

 

そして、ついにStella.J.Cの新シングル“Stronger Every Day”、初お披露目の時が。クラシックの素養が窺えるStellaの凛々しいピアノ・プレイをフィーチャーしつつバンド・サウンドに仕上げられた同曲は、ウーターの歌声が伸びやかに響くメロディー・ラインも手伝った力強くスケール感のあるナンバーだ。ステージに上がった時はやや緊張の面持ちであったStellaだが、ひとたびピアノの前に座れば、集中して演奏に向かう姿はプロフェッショナルそのもの。初々しさと肝の据わった強さが同居した素敵なパフォーマンスを見せてくれた。

続いては、Mono Creationに加え、今回のリリース・パーティーをサポートするorigami PRODUCTIONSPOPGROUPGOONTRAXJazzy Sportといういまや信頼のブランドと言える音楽レーベルの代表が壇上に上がったトーク・セッションのコーナーに。レーベル同士の横の繋がりを強化することで日本の音楽シーンを活性化させたいといった思いや、リスナーのための学校〈RON’S ROOM〉というプロジェクトについてなど興味深い話が多く飛び出した。

 

その後登場したのはSWING-O。彼が近年取り組んでいる〈ピアノとラップ〉をテーマに、ビートボクサーのAFRAを相棒に招いたステージとなった。SWING-Oもピアノを弾きながらヴォイス・パーカッションも見せるなど、鍵盤以外の音はすべて人間が出すという見事な音遊びが繰り広げられ、客席はすこし圧倒され気味!? さらにGAGLEのラッパー・HUNGERも参戦して(なぜか全員メガネと帽子の)3人でのセッションに突入! HUNGERの〈もっとテンポ速くしよう……いや速すぎる!〉といったフリー・スタイルならではのやりとりも交えて組み上げられる掛け合いは圧巻だった。

またラストにはこの3人でGAGLEのナンバー“聞えるよ”を披露。AFRAがビートを、SWING-Oがピアノ&ヴォーカルを担当し、本ステージでしか観られないであろう美しい演奏とHUNGERのラップのコラボレーションは胸に迫るものがあった。 

GAGLEの2014年作『VG+』収録曲“聞えるよ”

 

 

続いてのアクトは、ステージをいっそう華やかに飾ったAi Ninomiyaだ。シックスペンス・ノン・ザ・リッチャー“Kiss Me”やジェイ・Z(というかアリシア・キーズ)“Empire State Of Mind”、スティーヴィー・ワンダー“Another Star”と、会場の客層を考慮した聴き馴染みのあるナンバーをチョイスして、キュートかつ声量を活かしたダイナミックな歌唱をじっくり堪能させてくれた。ヴォーカルのパワフルさもさることながら、華奢な身体で凄まじく力強いピアノを弾き倒した女性奏者のプレイに驚かされたりも。

そしてバンド・メンバーがステージを離れると、Stella.J.Cがふたたびステージに呼び込まれる。なんとも微笑ましい女の子同士のふんわりトークも挿んで、コンピ『Colors of Life』のリリース・パーティーでも共演したという“Don’t Cry”(Robert de Boron曲のリメイク)を再演。ここでは先のStellaのステージ以上に彼女の演奏をじっくり&たっぷりと味わえ、Ninomiyaいわく〈ヴァイブスが合う〉という両者らしい息の合ったパフォーマンスに、会場中がじっくり聴き入っていた。

ステージ後ろのカーテンも開けられ、Billboard Live TOKYO名物の六本木の夜景をバックに、本パーティーのトリを務めるGAGLEが登場。SWING-Oのステージでも披露したナイスな滑舌を改めて聴かせるべく、HUNGERの速射ラップを皮切りにJazzy Sportに所属して初めて作ったというナンバーへ雪崩れ込む。さっそくカッコ良すぎだ。さらにヒップホップ初心者に向けてDJ Mitsu the Beatsが操るMPCの紹介をしつつ、DJ Mu-Rも交えた3人のセッションで、ヒップホップのおもしろさを見せていくという普段のライヴでは見られない今回らしい試みがあったりも。

〈こんな夜景が綺麗なら、もっと綺麗な曲を用意してくれば良かったっすね。こういう状況になるとは思わなくて力強い曲ばっかり持ってきちゃったんですけど大丈夫ですか?〉とHUNGERは恐縮していたが、〈ヒップホップ界でも音としてはいちばんドギツイ曲〉とMitsu the Beatsが語っていたフューチャリスティックなビートを持つ“GRAND GAINERS”をカマし、タダでは済ませない流儀(!?)を見せつけるような展開も個人的には好きだった!

そしてラストは、平戸祐介を招いたスペシャル・ヴァージョンの“屍をこえて”。〈(オーディエンスが)何かを感じてくれるはずだから〉とMono Creationからリクエストがあったそうで、歳を取れば取るほど沁みるGAGLE屈指の名曲は、初めて聴いた人の心にもきっと何かを残したはずだ。

おそらくここでしか観ることのできない貴重なコラボレーションも満載だったStella.J.C“Stronger Every Day”リリース・パーティー。これを機にMonoCreationを中心とした新たな〈横の繋がり〉が生まれることに期待しつつ、Stellaの今後の活動にも注目していきたい。