パット・メセニーが近年になく“張り切った”と言えなくもない、ユニティ・グループの映像作品が出された。『KIN(←→)』発表とともに行った150公演を超える2014年長丁場のツアーの終盤に差し掛かる頃、この決定的単位による実演のマジックを残したいとメセニーが提案。それにメンバーも賛同し、撮られた作品であるという。

 ツアー終了後の12月にNYの5エンジェルズ・シアターという所で持たれた、スタジオ・ライヴの模様を収める。通常の公演を撮影しなかったのは、バンドの所作をあますことなく収録するために、思うままカメラ群を舞わせるためだった。メセニーはその設定で、このDVDを見る者がバンド員と同じ距離感や目線で自分たちの演奏に接することが可能になる事を求めた。

PAT METHENY The Unity Sessions ヤマハミュージックメディア(2015)

  なるほど、生理的に密接な、痒い所に手が届くような映像が面々の所作を映し取る。それらは深みもあり、格調高いという指摘もできるだろう。もし自分がメセニーのバンドの一員になれたなら、そういう願望に少し近づける映像でもあるかもしれない。いや、メンバー間にあるあまりに高い技巧と相互関係を目の当たりにし、うれしい絶望感を覚えてしまうか。そんな本作品を制作/編集したのは、休業中のパット・メセニー・グループのベーシストであるスティーヴ・ロドビーだ。

 本編、2時間強。『KIN(←→)』収録曲を中心に、前作『ユニティ・バンド』曲や旧メセニー作収録曲が各3つずつ、さらにはスタンダードも1曲披露。そして、最終曲はなんとメセニーの生ギターのソロによる本人自作曲メドレーだ。

 「(ユニティ・プロジェクトを始めた)この数年間は、私にとって夢のようだった」という一節ではじまる、当人のセルフ・ライナーノーツも収める。それを読むと、どうやらユニティ・グループはこれにて終了となる模様。すると、本当に貴重なドキュメントに思えてくるし、自発的な、見事な落とし前の付け方とうなってしまう。