もともとブロンズの片割れとして活動していたが、ロック・ネイション入りをきっかけにビヨンセ『Beyonce』(2013年)のプロダクションに大幅に関与し、以降もラン・ザ・ジュエルズなどに絡んできたブーツことジョーダン・アッシャー。FKAツイッグスの『M3LL155X』でも改めて脚光を浴びたばかりのタイミングで放ったこの初の公式アルバムは、今様グリッチ・トリップ・ホップ的なアトモスフィア(二重の意味で!)を作り出す重要人物への期待に十分応える仕上がりだろう。ジュエルズの縁からエル・Pらの援護も要所で受けつつ、基本は本人の呻くようなヴォーカルと破片サウンドが緻密に躍動し、終わりのない奈落のような音像を壮麗に広げてくる。ディープだけどドープじゃないクリーンな口当たりも絶妙に今風。