mature R&B cells
【特集】R&Bの品格
ブームやトレンドの趨勢はともかく、注目すべき作品はどんどんリリース中! この季節がよく似合う、成熟したアーバン・ミュージックの真髄を、あなたに
ということで……bounce2015年12月号の続きです。というか前号の時点で紹介予定だったものが延期してしまったため、ページごと今号に延期した格好になっています。ただ、そのおかげで、間に登場した大粒の作品たちも併載することができました。自他共に認めるキングからキャリア20年の歌姫、シーンの看板を張るエースたち、それぞれの傑作(ホントに!)が揃ったこの冬のシーンを楽しみましょう! *bounce編集部
★Pt.1 アヴァントのコラムとディスクガイド(1)はこちら
★Pt. 2 ブラクストンズのコラムとディスクガイド(2)はこちら
★Pt. 3 ベイビーフェイスのコラムとディスクガイド(3)はこちら
★Pt. 4 エリック・ベリンジャーのコラムはこちら
★Pt. 5 アンジー・ストーンのコラムはこちら
★Pt. 6 クリス・ブラウンのコラムはこちら
★Pt. 7 R・ケリーのコラムはこちら
★Pt. 8 モニカのコラムはこちら
★Pt. 9 ジェレマイ/ロイ・アンソニーのコラムとディスクガイド(4)はこちら
August Alsina
歌に救われた才能
まだデビュー数年ながら、ストリート色の濃さでは当代きっての存在と言えるのがオーガスト・アルシナである。ニューオーリンズに生まれた彼は、荒んだ環境から抜け出そうと音楽に逃避するも、一時はハスリング稼業へ。友人や実兄をストリートで失ったことで更正し……という凄まじいドラマを背負ってデビューしてきた人だ。そんな背景も手伝ってコミュニティーでも絶大な人気を誇るという彼は、すでに初作『Testimony』(2014年)がクロスオーヴァー・ヒット済み。そこからの“Kissin’ On My Tattoos”“No Love”も界隈で高い支持を獲得した。
このたび登場した新作『This Thing Called Life』は、彼自身の内面をさらに掘り下げた一枚となっている。バックグラウンドだけ見ると哀切まみれなイメージを受ける人もいそうだが、辛苦を経て生まれる希望への眼差しやブルージーなドラマ性、苦みを知る者ならではの甘いロマンティシズムは絶品で、ノーティ・バイ・ネイチャーをネタ使いしたスロウバック系の“Hip Hop”、B.A.M制作の切実なスロウ“Song Cry”、アンソニー・ハミルトンとのエモいバウンス“Job”など楽曲のタイプは前作以上に多彩。クリス・ブラウンとの“Been Around The World”(パフィ&ビギーを引用)もいい。傑作揃いの2015年末だけど、これも本当にマストだ。 *轟ひろみ