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ディスクガイド:現行R&Bのスタイリッシュなスタンダード(5)

AUGUST RIGO 『The Fall Out』 Summerchild/Manhattan/LEXINGTON(2015)

オーガストといえば……奇しくもデフ・ジャムにいた経験もある彼。作家としては1Dやビーバーとの仕事で成功を収めた売れっ子だが、今回クリス・ブラウンの『Royalty』では冒頭の名曲“Back To Sleep”を共作してもいる(コーラスも担当)。この自身のセカンド・アルバムでは持ち前の美麗なメロディック・チューンを惜しみなく投入し、新機軸のレゲエ・フュージョンなども披露。クリスとの仕事で知られたステレオタイプスのサポートも光る。 *出嶌

 

TEEFLII 『Starr』 Excuse My Liquor/Epic(2014)

モダンなR&Bのヴォーカリゼーションという意味では彼も重要な名前だろう。タイ・ダラー・サインをさらに歌寄りにした感じのティーフライは、DJマスタードの援護で頭角を表したLAの新進。2チェインズと組んだ“24 Hours”のヒットを受けて登場したこの初作でもベイエリア的な反射神経で柔軟な語り口を自在に転がしていく。クリスを迎えた“Blue Lipstick”では2人で濃厚に歌い込むなど、ポテンシャルはまだ未知数かも。 *出嶌

 

FAITH EVANS 『Incomparable』 Prolific/BMG Rights(2014)

パフ・ダディが雨に例えたという逸話も有名な、表題通りに〈比類のない〉ヴォーカルこそ彼女の何よりの魅力。本作でもチャッキー・トンプソンやマイク・シティら名匠が手がけたオーセンティックなミディアム~スロウにおいて、濡れた歌声が景色を滲ませる。チャーチな“He Is”やB・スレイドとカレン・クラーク・シアードを迎えた“Paradise”で覗かせる、力強く情熱的なゴスペル・ルーツも聴きどころだ。 *池谷

 

CONYA DOSS 『Seven』 ConyaDossSongs(2015)

デビュー13年でアルバム7枚と、安定した活動を続けるクリーヴランドのネオ・ソウル歌姫。この最新作も馴染みのマイロンらによるジャジーな美麗ソウルで満たされており、スティーヴィー・ワンダー風味も香しい“Spend My Life”をはじめ、流石の高品質ぶりだ。シャープな歌声を重ねて醸す色気も相変わらず魅力的だが、フランク・マッコムとのデュエット“For Us”では親密な温かみでも魅せてくれる。 *池谷

 

VIVIAN GREEN 『Vivid』 Make Noise/Caroline(2015)

フィリー出身シンガーの5作目は音の科学者クワメが全面制作し、モータウンありサザン・ソウルありファンクありのカラフルな内容に。先行曲“Get Right Back To My Baby”はメイズ“Before Let You Go”使いの最高なアップで、ビシッと芯が通ったハスキー・ヴォイスがどこまでも伸び上がる! その声が濃密スロウ“All I Want Is You”ではラヒーム・デヴォーンの官能ファルセットと絡み合う様も聴きもの。 *池谷

 

SOULFINGER 『Life, Love & Passion』 SWEET SOUL(2015)

ヨーロッパのプロジェクト・チームが敏腕ミュージシャンを従えた趣味の良いモータウン・オマージュ企画盤。〈レトロ〉という形容の安直さには与しない偏執的なこだわりで60年代後半~70年代半ばまでのサウンドを再現し、シリーナ・ジョンソンやリーラ・ジェイムズ、アンジェラ・ジョンソン、ティードラ・モーゼス、トゥルース・ハーツらが品格ある歌心を注ぎ込む。こういう趣向で90年代マナーの作品とか作ってほしい。 *出嶌