Vampilliaと繋がっていたり繋がっていそうだったりするディスクガイド(後編)

BURZUM 『Daudi Baldrs』 Misanthropy(1997)

 「刑務所の中で、シンセだけで作ったアルバムがいちばん好き」と、リーダーがブラック・メタル勢からフェイヴァリットとして挙げたのが、ヴァルグ・ヴィーケネスのソロ・プロジェクト。本作と次作は彼が殺人などの罪で投獄中に制作されたインスト集で、内容は中世ヨーロッパが舞台の暗鬱な宗教音楽といった趣。同じフレーズの反復で構成されるミニマルな作りが特徴的だ。「Vampilliaもああいう単音で成立するようなメロディーにしていきたい」。

 

CURRENT 93 『I Am The Last Of All The Field That Fell』 Coptic Cat(2014)

 「メロディーでは〈絶対敵わへんな〉って思ってる」とリーダーが語った存在は、元サイキックTVのデヴィッド・チベットによるソロ・ユニット。悪魔が召喚されそうな暗黒インダストリアル・ノイズを撒き散らした初期から、近年はピアノの静謐な響きとフリーキーなヴォーカルを中心としたフォーク・サウンドへ移行。そのリリカルな旋律は、Vampilliaにも通じる点が。

 

坂本龍一 『1996』 フォーライフ(1996)

 〈良いメロディー〉というお題に対してカレント93といっしょに挙がったのは、教授の代表曲“Merry Christmas Mr.Lawrence”。本作に収録されているのは、ピアノとヴァイオリンのみであのワンフレーズを交互に繋いでいくヴァージョンだ。「外国人と話してると、〈坂本龍一のメロディーは日本人にしか書けない〉って言うんですよね。それは良いなと思って。『1996』の〈戦メリ〉が特に好きですね」。

 

久石譲 『「風の谷のナウシカ」サウンドトラック はるかな地へ…』 スタジオジブリ(1986)

 「『風の谷のナウシカ』の曲がすごい好きやった」というリーダー。メタル・マナーを踏襲したサウンドながら、ピアノとストリングスがなぞる荘厳な美しさを湛えたVampilliaのメロディーを耳にすれば、そんな言葉に納得するリスナーも多いはず。

 

BO NINGEN 『Line The Wall』 Stolen/ソニー(2012)

 ロンドン在住のこの4人組とVampilliaは、〈ノイズに対する並々ならぬこだわり〉と〈童謡のようなメロディー〉を両立させているという点において通底。下山然り、関西地下シーンを経由したミッシング・リンクは何かしらありそう。

 

フィッシュマンズ 『LONG SEASON』 ユニバーサル(1996)

 リーダーが詞の面でリスペクトを公言しているのが、フィッシュマンズの佐藤伸治。彼らがダブの揺らぎのなかに浮かべた詩情と同様のものは、Vampilliaのアトモスフェリックな静寂の底にもある。

 

CLARK 『Feast / Beast』 Warp(2013)

 Pitchforkで高評価を得た『Alchemic Heart』に収録の“Sea”を鬼才トラックメイカーがリミックス。細かく砕かれた音の断片に奥行きのある残響処理を施し、冷ややかな質感と不気味さを増した仕上がりに。

 

μ-Ziq 『Chewed Corners』 Planet Mu(2013)

 Vampilliaとマイク・パラディナスは〈Vampillia meets μ-Ziq〉としてコラボ曲を発表した間柄。クラシカルな壮麗さを纏った音の奔流とトラップ調も交えた異形のビートが拮抗する深遠な音世界を構築した。

 

APHEX TWIN 『Drukqs』 Warp(2001)

 そのマイク・パラディナスを音楽制作へと向かわせた、異才すぎるクリエイター。寂寥感のあるピアノ曲と仄暗いアンビエンスを纏ったドリルンベースが交互に並ぶ本作は、Vampilliaに近い色合いの闇を孕んでいる。

 

Cold Name 『Eat Your Hand』 Desire(2014)

 海外リリースが先行するJesse Ruinsのメンバー、Nobuyuki Sakumaによるソロ・プロジェクト。インダストリアルとアンビエントの要素を注入したハウス・トラックで、ブラック・メタル的な空気感を創出する邦人アクトのひとり。