Vampilliaと繋がっていたり繋がっていそうだったりするディスクガイド(前編)
これまでの代表作と言える、全2曲、約50分の荘厳なノンビート作品。ピアノとストリングスによるセンシティヴなアンビエントに重厚なディストーション・ギターが加わり、やがてはドゥームに沈むドローンへ。その陰影に富んだ音像が切ないほどに美しい“Sea”と、同曲の録音素材にMerzbowが金属質なノイズを散らした“Land”を収録。元スワンズのジャーボウが歌とポエトリーで参加。
想定外の展開が待ち受ける、という点ではVampilliaと共通するフリーキーなパンク/ハードコア・バンドのヴォーカル・長谷川裕倫は“tasogare”に参加。リリカルなピアノが演出する静寂を華やかに弾むポリリズムとデス声&オペラ歌唱が切り裂く同曲の冒頭で、独り言のようなポエトリー・リーディングを披露している。
引く手数多の電子音楽界のミューズが竹村延和とコラボした本作は、さながら〈童謡 meets ミニマル・ミュージック〉といった雰囲気。その包容力ある声と言葉は、Vampilliaの今回の2作品にもピュアネスとリリシズムを与えている。
Vampilliaの初フル作をプロデュースしたエクスペリメンタル界の才人。その最新作は、冷気による靄を音像化したかの如きアブストラクトなシンセと硬質なノイズが溶解したエレクトロニック・シューゲイズ作品。「僕、ベッドルーム・コミュニティの作品が全部好きやったんで、〈絶対ないやろ〉って思いながら『Alchemic Heart』を送ったんですよ。そしたら〈録音しに来い〉って言われて。で、オーナーのヴァルゲルに〈プロデュースしてくれるの?〉って訊いたら〈もっとお前らに合うやつがいる〉って紹介されたのがベンだったんですよね」。
『the divine move』のマスタリング・エンジニアはコンヴァージやデリンジャー・エスケイプ・プラン仕事で知られるアラン・ドーチェスで、現時点で唯一手掛けた邦人アーティストがDIR。禍々しい音を浴びることによる浄化の感覚は、両者で共通かも。
world’s end girlfriend 『SEVEN IDIOTS』 Virgin Babylon(2010)
Vampilliaが今回2作品をリリースしたVirgin Babylonの主宰者であり、異常なまでの緻密さでエキセントリックなコラージュ・ポップを構築するクリエイター。オリジナル作のなかでは本作がもっともメタル色が強い。
ポスト・ロック界のトップランナーとして君臨するこのバンドが轟音と静寂の狭間に描く荒涼としたサウンドスケープは、Vampilliaと通じるものが。日本勢なら、wegとコラボ作を発表したMONOあたりも同様か。
活動初期は〈スカム〉と形容されることが多かったというVampillia。オリジナル・メンバーの吉川豊人がかつて在籍した関西アングラの雄とは共通項もあるようで……。「Vampilliaは最初、〈メロディーのあるボアダムス〉っていうイメージがあったんですよ。曲の作り方も、吉川が言うにはボアといっしょやったらしくて。山塚(アイ)さんがメンバーにヤーヤー言って、それを形にしていく。〈それどやねん?〉ってことを真剣にやってくっていう」。
「結成当初はフリー・フォークがキテて、そこに乗っかろうと思ってたんですね。向こうはサイケとか電子音楽のハイブリッドでしたけど、僕らはこういうのでイケるんじゃないかって。その頃に僕らのライヴを観たラスティ・サントスっていうアニコレのプロデューサーから声をかけられてファーストを作りはじめたんですけど、結局完成しなかった」と振り返るリーダー。アヴァンすれすれの混沌のなかにわかりやすいポップネスを埋め込むVampilliaの手法は、確かに当時のフリー・フォーク勢との近似性が。
Vampilliaと同じく、〈そのときやりたいこと〉に合わせてメンバーが変動している模様の音楽集団。アニコレと比較される突飛なポップセンスにも近いものがあるのでは?