[第3回]カオスで無敵な春ソング“STAR☆ットしちゃうぜ春だしね”

 今年に入ってから、3か月連続で配信シングルをリリースしているでんぱ組.inc。1月の“破!to the Future”、2月の“ファンファーレは僕らのために”ときて、ラストを飾る第3弾がこの“STAR☆ットしちゃうぜ春だしね”だ。作詞が畑亜貴、作曲・編曲が玉屋2060%Wienners)で、この2人といえば代表曲“でんぱれーどJAPAN”“でんでんぱっしょん”を手掛けた黄金コンビである。それが“でんでんぱっしょん”以来、実に約2年10か月ぶりという久々の顔合わせになるのだから、まさに満を持しての楽曲と言えるだろう。

でんぱ組.inc STAR☆ットしちゃうぜ春だしね MEME TOKYO/トイズファクトリー(2016)

※“STAR☆ットしちゃうぜ春だしね”の歌詞はこちら

 玉屋の曲はキャッチーで泣けるメロディーが持ち味なのだが、今回も明るく華やかな春っぽい旋律を軸としつつ、最後にはちょっと切なくさせるパートもあり、玉屋節としか言いようのないメロディーが全編で炸裂している。超高速ビートのハードコア的サウンドで展開が激変していき、メンバーが超早口で畳み掛けるように歌い、まるで巨大な乗り物が猛スピードで通り過ぎていくような、ブッ飛んだ感覚がたまらなく快感だ。そのなかに、ジプシー音楽風やジャズ・テイストといった遊び心を盛り込んでいるのもおもしろい。

 歌詞のほうは、〈ヒメ・ジョシ・ワンダフル〉〈生まれかわって春瞬の旬だよ〉などの畑らしい独特すぎる言語感覚をはじめとして、〈春〉や〈新学期〉をテーマにしたポジティヴな言葉が次々に出てくる。特に〈待ってるだけじゃ咲けないよ〉〈もう考えること棚上げちゃえば〉といった、〈考えるより動け〉的な言葉に強烈なインパクトがあり、それをメンバーがエネルギッシュに歌うと、途轍もない無敵感が溢れてくるのだ。理屈じゃなくて強引にねじ伏せるようなこの感じこそ、でんぱ組.incの魅力である。だからこの曲を端的に言うなら、カオスで無敵な春ソングなのだ。

 思えば2015年のでんぱ組.incは、リリカルなミディアムの“あした地球がこなごなになっても”やビッグバンド・ジャズ風の“Dem Dem X'mas”などそれまでにない新機軸の曲が多く、音楽性がどんどん広がっていた。しかし今年の連続リリースは本領と言える攻撃的な曲ばかりだ。その決定打となるのが“STAR☆ットしちゃうぜ春だしね”で、それも以前より断然パワーアップしていて、比類なきオリジナリティーがいっそう増している。4月のニュー・アルバム『GOGO DEMPA』がますます楽しみになってきた。

 


でんぱ組.inc

 

古川未鈴相沢梨紗夢眠ねむ成瀬瑛美最上もが藤咲彩音から成る6人組。ライヴ映像作品「WORLD TOUR 2015 in FUJIYAMA」(MEME TOKYO/トイズファクトリー)の発表やツアー〈GOGO DEMPA TOUR 2016 ~まだまだ夢で終わらんよっ!~〉の開催に加え、4月27日にはアルバム『GOGO DEMPA』のリリースも決定! 直前の4月13日からはタワレコ渋谷店で展覧会も! bounce4/25発行号でインタヴューを掲載予定です。詳細は〈dempagumi.dearstage.com/〉へ!

★【でんぱ組.inc GOGO DEMPA SONG REVIEW】第1回 “破!to the Future”はこちら
★【でんぱ組.inc GOGO DEMPA SONG REVIEW】第2回“ファンファーレは僕らのために”はこちら